トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

女記者たちへ

2020-04-12 22:40:14 | 読書/ノンフィクション

 新型コロナウイルスによるパンデミックと、それに伴う不要の外出自粛要請のため、週末や休日でも自宅で過ごす生活が当たり前になっている。自宅での過ごし方は人それぞれだろうが、私は以前に比べて読書時間が増えた。ナナミスト(塩野七生ファン)の私としては、欧州諸国で最もコロナ被害の多いイタリアに在住している塩野さんのことが気になり、エッセイ集『逆襲される文明 日本人へⅣ』(文春新書1140)を読み返した。
 改めて塩野さんの英邁さに感心させられたが、今回は「女たちへ」という章が面白いと感じた。例によって塩野さんは同性、特にフェミニズムに冷ややかであり、大新聞に入社した女記者には辛辣な批評をしている。以下は本書からの引用。

男女間の格差は存在しない組織の一つとされてきた大新聞では、入社時に女の記者は、男と同等の仕事をするよう言われるのだという。こう言われて女記者たちはふるい立つらしいけど、私ならばバカねえあんたたちも、と言うだろう。入社時の幹部の言は、無意識にしろ男たちの仕掛けた「」なのだ。
 無意識とするのは意識するほど男たちは頭が良くないからだが、大新聞となれば男社会だろう。男社会であるからには先行しているのは男たちであり、その男と同等の仕事をするということは、常に男の後を追っていくことになる。入社から定年退職までの間ずっと、後を追うことだけにエネルギーを費やすわけだ。

 実際これまでに、男を越えた仕事をした女記者はいたであろうか。男を越える仕事をして始めて、自分の才能を十全に発揮できると同時に、機会を与えてくれた組織へのお返しができるのに。(64-5頁)

 さすが長年第一線で活躍してきた歴史作家の見解は鋭い。特に「実際これまでに、男を越えた仕事をした女記者はいたであろうか」は納得。記者というよりも社会活動家、しかも反日国の代弁者しか思い浮かばない。
 卑しくも記者ならば自ら足を使って綿密に取材するのが大原則なのに、それさえ怠り、根拠が定かでない情報や私見を織り交ぜた質問を連発する有名女記者までいる。新聞社でも本当は女記者の能力を認めているのではなく、便利な広告塔として使っているのやら。塩野さんは女記者に言及する前、こうも述べていた。

女の活用は大臣などの要職以外にも広まっていかないとほんとうの意味での活用にはならないのでそちらの方面に話を進めるが、それに際してわれわれ女たちはある一事をまじめに考えてみる必要がある。これまで長く女たちが活用されてこなかったのは、男たちが妨害したからか、それともわれわれ女の側に、戦略が欠けていたからか。
 つまり「男社会」と叫ぶだけで、われわれ女の無策による責任を転嫁してきはしなかったか。なにしろ男女同等を叫ぶこと七十年である。企業でも七十年も成果を出せなければ経営陣はクビだが、フェミニズムの世界ではこの原理は通用しないらしい。これって、普通に考えてもオカシクないですか。(64頁)

 反論の余地もない正論と思った同性の読者もいただろうし、先の意見も塩野さんのようにデキる女がいうのは説得力がある。そうでない女がいくら男女同等や「男社会」を叫んだところで、負け犬の遠吠えにしかならない。やはり彼女の言うように、「男女の完全な均等とは、実のところは厳しく過酷な制度なのである

 他に気になったのは「ヨーロッパ人のホンネ」にある個所。どおりでイタリアでコロナが爆発感染したはずだが、日本も他人事ではない。
大声で騒いだり平然と不潔であったりして居住環境を悪化させ、値が下がったときに不動産を次々と取得していくのが、イタリアでの中国系移民の常套手段になっている。また、人権尊重を旗印にしてきた以上、労働力になる前に生活保障を与える義務を負うことになりかねない。(56頁)

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
福島香織さん (motton)
2020-04-14 14:40:36
女記者で思い出すのは元産経記者の福島香織さんですね。中国専門。ブログも面白く非常にためになりました。
https://twitter.com/kaori0516kaori

安田純平さんについて以下のツイートに彼女のスタンスが良く現れています。
https://togetter.com/li/1281728
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Re:福島香織さん (mugi)
2020-04-15 21:42:52
>motton さん、

 中国専門の福島香織氏が元産経記者だったとは知りませんでした。彼女のようなジャーナリストは日本のメディアでは無視されがちだし、東京新聞の女スター記者に比べれば一般に知られていませんよね。

 安田へのツイートには彼女のスタンスが伺え、記者魂を感じさせられました。しかし同業者への身内意識が強く、歯切れの悪さは否めません。
 ジャーナリズムもまた国力に影響され、どうりで米国人ジャーナリストが常に上から目線で訓辞を垂れている背景が判りました。尤も最近はその尊大なスタンスが本国でも不評を買っているようで。
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