ベルばら再読雑感 その三

その一、その二の続き
　ネットでは、オスカル非処女説を空想する読者まで見かける。2003年頃の2ちゃんねるで、「ルイ15世が手を付けていた」「近衛隊兵士に輪姦（まわ）されていた」という書込みを見た時は、驚くと共に噴き出してしまった。掲示板の匿名カキコなので、コメンターの性別は判明出来ないが、書込み内容から男性の確率が高いと見ている。
　実はベルばらのエロ・パロディサイトがあったことを、最近になって私は知った。記事を書くにあたり検索したら、「ベルサイユのばらでエロパロ10」なるサイトがヒットした。この種のスレッドだけで10回もアップされていたのだから、いかにエロ創作を好むファンがいるのか知れよう。

　エロパロ10では、オスカルが13歳でルイ15世の娘を産み、修道院に引き取られた娘は母の美貌と父の好色を受け継ぎ…という設定の空想（妄想）をしているカキコもある。これまた笑えたが、ルイ15世は1715年生まれ、オスカルより40歳年上である。ならば、関係したのは遅くとも1768年となる。ちなみにデュ・バリー夫人がルイ15世の公妾となったのはその翌年。
　ルイ16世と対照的にルイ15世の性生活は実に派手で、数多くの愛人と庶子を儲けたのは知られている。殊に「鹿の園」と呼ばれる娼館で、多くの若い娘たちに“慰安婦”をさせていた。16歳頃から“慰安婦”になった娘もいたから、女たらしの王は少女趣味もあった。

　書込み主はこの故事を知っていたと思われるが、「鹿の園」の娘たちは庶民階級の出だった。中には弁護士の娘のようなブルジョア階級もいたが、貴族の娘はいない。ベルばらの悪役ポリニャック伯爵夫人が典型だが貴族女性は物欲が強く、一族の利益を露骨に主張するため、王は次第に平民女性に目を向けるようになる。ルイ15世の公妾として最も有名なポンパドゥール夫人こそ、初の平民出の公妾なのだ。
　だから、いかに13歳のオスカルの美貌に目を止めたとしても、ルイ15世が手を出すはずがないのだ。但し2ちゃんの“エロパロ”で、杓子定規的な史実を挙げても通じない。国王に手折られる金髪の美少女という設定は、エロネタとしても面白いだろう。

“エロパロ”にはオスカルとアンドレの性行為も延々と描かれており、貴族の令嬢が平民の男によって性意識を開花されられるといったもの。AVやレディースコミックは苦手で見ていないが、“調教モノ”のようなジャンルがあることは聞いている。私としては濡れ場を長々と書いている書込み主の性別がいささか気になる。しつこい性描写をする者が必ずしも男とは限らないが、次の書込みから“エロパロ”には男性読者も確実にいるはず。
「嫁にするにはロザリー、恋人にするにはオスカルだな」
「12才のロザリーと20才のオスカル囲いたい」
「オスカルを患者に軍医さんごっこがしたい」

　大笑いさせられたのが、「千の精子　万の精子が欲しいか」の箇所。アンドレの「千の誓いがいるか　万の誓いがほしいか」のもじりなのはベルばらファンなら分るはず。久しぶりに大笑いさせられるサイトを見た。エロアニメやエロ動画が氾濫するネットだが、刺激的な表現が満載のエロ小説もある。好奇心とスケベ心を持ち合わせない者はいないのだから。
 
　ベルばらの男性キャラで、最も人気があるのはアンドレだろう。子供時代はオスカルの最愛の人というだけで贔屓していた私だが、改めて見直してみると、好感よりも暗さを感じてしまう。片目を失うまでは三枚目的な処もあったが、それ以降は陽気さが失われていく。「アンドレ○○○論争」管理人「ままか」さんの書込みには鋭いものがある。
「アンドレって、オスカル様に対する執着は異常なほど強い！！ほとんど無償の愛をささげていながら、反面「他の男」には死んでも渡したくない！！物凄い独占欲！……こんな風に狂ったように想われてみたいものです……」　

　この執着心と独占欲が私には重いのだ。これほど男性から狂ったように想われたことはなく、この先も想われることがない私だが、この件ではままかさんと感想は異なる。アンドレの無償の愛を捧げる姿に理想の恋人、と憧れる女性ファンが少なくないのは理解できるけど。
その四に続く

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