トーキング・マイノリティ

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新聞の魅力を再発見

2022-03-19 21:45:09 | マスコミ、ネット

 他紙も似たようなものかもしれないが、数年ほど前から河北新報の読者コーナーでは新聞絶賛投稿が増えている。以前は高齢者が多かったが、最近では大学生や3~40代の働き盛り世代の投稿も載っている。さらに「小中高生の意見」というコラムも時々掲載されているが、昨今は成人向けの「声の交差点」にも未成年者の投稿が載っている。
 そして宮城県の地方紙にも関わらず、他県在住者からの投稿が増えている。特に友好紙・東京新聞掲載の読書投稿を随時紹介しているが、2月27日付で載った「新聞の魅力を再発見」は、気持ちの悪いほどの新聞絶賛だった。投稿者は東京都大田区の会社員・田中瞳氏(42歳)、以下はその全文。

「一週間無料ためしよみ」で新聞を再講読し始めた。新型コロナウイルスまん延前には定期購読していたが、出張が多くて、記事を読みきれずやめてしまっていたのだ。
 在宅時間も増え改めてじっくり読んでみて、自分の無知さ加減に本当に驚いた。ネットとテレビしか見ない、偏りのある知識がどれだけ危険かと感じると同時に、新聞記事の多彩な内容に感服した。

 ネットニュースでは、自分の興味がある分野しか目にしない。それに対して新聞は、自分が全く興味がないニュースでも一覧できて、プロフェッショナルから教えてもらえるのが魅力と感じた。
 人が道を誤らないように新聞は今後も必要だ。情報の速さは求めない。デマなどに振り回されないために正確な情報を活字にしていただきたい。

 42にもなって「新聞の魅力を再発見」するようでは、救いがたい活字欠乏症に思える。出張が多くて記事を読みきれないなど言い訳にもならない。ネットユーザーなら、ネットも自分が全く興味がないニュースが一覧できることを知っているはずだ。
 用は使い方次第で、田中氏はネットニュースで自分の興味がある分野しか目にしなかっただけのこと。つまり知的好奇心の欠如の表れ。元から活字と無縁で、ネット記事も満足に読んでなかったとしか感じられない。
 むしろ本好きの方が新聞記事に物足りなさを感じているだろう。新聞に寄稿するプロフェッショナルとやらは専門分野も怪しい者がいるし、記者に至っては満足に本を読まず、図書館にも殆ど足を運んでいない者までいた。

 玉石混合がネットの特徴だが、ツイッターやブログで情報発信するプロフェッショナルも多く、内容も濃い。このようなプロに比べると、紙面の限られている新聞解説は皮相的で底が薄く感じられる。つまり、読めたものではない記事が多すぎるのだ。現代トップニュースとなっているウクライナ情勢も、新聞ではなくネットでホモドロールを初めて知ったし、前者では解説もなかった。
 新聞各紙は新聞離れ現象を情報の遅さと結論付けているが、真因はそうではない。最大の要因は記事自体の質の劣化にあるのだが、業界人には認めがたいだろう。正論であっても実現不可能な建前論ばかりぶつのでは、有識者面をしたいインテリたちの御託宣はもうたくさんと一般庶民は見ているのだ。読者は情報の速さよりも良質な記事を求めており、このような提灯投稿ばかり載せるのでは、ますます敬遠されていく。

 田中氏の投稿に限らず、読者コーナーでは新聞絶賛の話ばかり。新聞を読んで大変勉強になったと言う高校生、道徳を振りかざし、イデオロギーゴリ押しの説教くさい意見を述べる小学生の投稿など、カネを払ってまで見たい人は極めて少数だろう。
 滑稽なのは著名学者に新聞の重要性を代弁させていること。「新聞で身に付けた知識を読書によって組織化して、教養になるまで高める。この段階を踏むことで、初めて大局観が生まれてくる。」と説いていたのは、数学者・藤原正彦氏だった。
 一見正論に見えるが、本嫌いならば新聞で知識を身に付けても、読書までには至らず教養に達しない可能性が大。田中氏のようにせいせい新聞で身に付けた知識だけでありがたがる程度。

 提灯投稿で埋め尽くされる読者コーナーから、新聞の凋落ぶりを再発見した想いになる。読者の声というかたちを取った自画自賛は、戦時の大本営発表さながらで末期症状のようだ。
 新聞擁護派の常套句は「デマなどに振り回されないために正確な情報を」。そのために新聞を読むことを奨励するが、新聞自体が必ずしも正確な情報を発信するとは限らず、虚報やデマ、意図的な歪曲を行うことがある。そのためメディアの報道しない自由や情報操作を暴きたて、非難や嘲弄を浴びせるのはネット民の娯楽となっている。

 新聞復活のカギは結局のところ良質な記事を書くことに尽きると思う。そして電子版にも力を入れること。しかし業界にそのような意欲は全く感じられず、「Newspaper in Education(略称NIE)教育に新聞を」と教育現場に新聞を使う手段で生き残りを図っているようだ。

◆関連記事:「学者の品格
イイ子主義と一般人」 
【新聞離れ】に思うこと
勉強のやる気 新聞が呼び水に

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ジャーナリズムの作法 (IT)
2022-03-20 03:10:12
まったく同感です。

日本の新聞記事の問題は、右とか左とか分析が深いとか浅いとかの内容以前に、事実の扱いに対するジャーナリズムの世界標準を守ることができていないということだと思います。2点だけ挙げます。

1.引用のルールを守らない。発言を切り取り改変した上でカッコ囲みにして、あたかもそのままの発言があったかのように見せる記事が非常に多いです(ちょっと例が古いですが「女性は産む機械」とかです)。標準的なジャーナリズムの作法では、「」の中に入れるのは本当に発話された言葉だけです。他の先進国のジャーナリズムでも偏向批判はありますが、さすがに、quote-unquote の中に適当に改変した台詞を入れるというのは、大手メディアではほぼありえないと思います。

2.自らの記事に史料的価値を認めていない。たとえば NY Timesの記事が何10年もさかのぼってインターネット上で検索可能なのと対照的に、日本の新聞記事はすぐ消されてしまい、なおかつ、履歴を残さず改変されることもしばしばです。縮刷版が世に出回った版と異なることも頻繁にあると聞きます。ジャーナリストの信念に基づき本当に価値がある記事を書いていると信じるならば、記事が永遠に残ることも、良心に従い修正した履歴が残ることも、何ら恐れる必要がないと思うのですが。

したがって、日本の主要紙は定義上ジャーナリズムではなく、ゴシップ紙程度の価値しかないということです。かつては文科系の最優秀の学生が目指す就職先であったであろう新聞社がこういう水準ということは、日本の文科系教育の水準自体も疑われかねず、日本の恥です。彼らに自己改革は難しそうなので、日本が先進国として生き残るためにも、メディア業界の一刻も早い世代交代を祈るばかりです。
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Re:ジャーナリズムの作法 (mugi)
2022-03-20 22:29:10
>ITさん、

「女性は産む機械」、懐かしいですね。発言を切り取り改変した上でカッコ囲みにし、女性蔑視発言としてやり玉に挙げるのは十八番です。
 但し野党の政治家が「女性蔑視発言」をしても、殆ど取り上げない。例えば静岡県知事が昨年6月、女子学生の容姿に言及し、「めちゃくちゃ顔のきれいな子はあまり賢いことを言わないと、きれいになる。きれいに見られないでしょう」などと話しました。
https://www.chunichi.co.jp/article/374330

 しかも報道したのが12月1日になってですよ。明らかに選挙に不利になるから「報道しない自由」扱い。河北新報でも岡崎トミ子の韓国デモ参加を報じたのは選挙日の翌日でした。

 日本の電子版新聞記事はひと月もしないうちに消されています。 対照的にNY TimesやBBC、AFPの記事は何年前でも閲覧可能。日本の記事が早々と消されるのは、端から履歴を残さず改変する目的があるからだと思います。
 朝日新聞の慰安婦報道が典型で、メディアは決して己の非を認めない。詭弁を弄してまで自己正当化を図るし、ジャーナリストに信念や良心があるとは思えません。

 メディア業界がこの体たらくなので、日本の文科系は信用されなくなり、文系などいらないと言われるようになりました。メディア業界は既に他国の代弁機関だし、世代交代をしても変わりそうにありません。
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Unknown (岡本舜)
2022-07-28 10:36:40
以下このブログサイトの禁止事項です。
第11条(禁止事項)
第1項 会員は、本サービスを利用するにあたり、以下に該当し又はその恐れがある行為を行ってはなりません。
(4)他の会員又は第三者の財産、信用、名誉、プライバシー、肖像権、パブリシティ権を侵害する行為
(7)他の会員又は第三者に対する誹謗中傷、脅迫、嫌がらせを行う行為

あなたの記事は以上の事項に当てはまっています。
せめてイニシャルにするとかしなよ
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岡本舜 (ID:bchcvas)=8日から投稿している人=アンケートへ (mugi)
2022-07-28 21:37:38
 ついにgooID を取ったか。いくらHNを変えてもお前の自作自演はバレバレなんだよ。小賢しくブログの禁止事項を挙げたところで、記事のどこが第三者の財産、信用、名誉、プライバシー、肖像権、パブリシティ権を侵害する行為や誹謗中傷、脅迫、嫌がらせを行う行為に当てはまる?全く当てはまらない。河北新報にも記事の転載は確認済みだし、ひょっとしてF爺の入れ知恵か?

 2022-01-22には“岡元舜”のHNで、「新聞はネットに記事をアップしていません」とほざいていたな。ネット浸りのくせにネットニュースも読めない準文盲。刑法二百二十二条(脅迫)、同二百二十三条(強要)常習犯。
https://blog.goo.ne.jp/mugi411/e/b3cc8a12bb33a2f5984c1295dbf755de#comment-list

 散々誹謗中傷、脅迫、嫌がらせ行為をしてきたのはお前自身。昨日は“8日から投稿している人”のHNでロボトミー婆ァ!と書き込んでいた。ロボトミーなど殆ど死語で、正体はやはりオッサンだった。ロボトミーを受けていたら私はブロガーなどできない。

 憶えておけ。記事の禁止を決めるのはgoo事務局であってお前ではない。お前風情にせめてイニシャルにしろと命令される筋合いはない。それでも不服ならgoo事務局に通報するがいい。私の方も事務局通報を検討中。
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