世界保健機関では65歳以上の人を高齢者と定義しているそうだが、今や高齢者でもスマホを使いこなすのが当たり前になっている。今の時代にスマホを持たない人は殆ど超マイノリティなのだ。実は私もその1人だが、先日ベストセラー『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン著、新潮新書)を読み、スマホを持たなくて良かったと溜飲が下がる思いになった。以下は表紙裏の紹介。
―平均で一日四時間、若者の二割は七時間も使うスマホ。だがスティーブ・ジョブズを筆頭に、IT業界のトップはわが子にデジタル・デバイスを与えないという。
なぜか? 睡眠障害、うつ、記憶力や集中力、学力の低下、依存――最新研究が明らかにするのはスマホの便利さに溺れているうちにあなたの脳が確実に蝕まれていく現実だ。教育大国スウェーデンを震撼させ、社会現象となった世界的ベストセラーがついに日本上陸。
スティーブ・ジョブズがわが子にデジタル・デバイスを与えなかったエピソードは知っていたが、ビル・ゲイツも子供が14歳になるまでスマホを持たせなかったことが本書に載っていた(82頁)。
一方、現代スウェーデンの11歳児の98%が自分のスマホを持っているそうだ。何かと教育や福祉の面で称賛されるスウェーデンだが、11歳児の98%がスマホを持っていることには仰天させられた。日本の子供の所持率は不明だが、IT後進国ゆえに大幅に低いと思える。何年もブロガーでありながら、未だにITオンチの私だが、小学生にスマホを与えるのは早すぎるのでは?と感じていた。
「コロナに寄せて――新しいまえがき」にあった著者自身の言葉は興味深い。著者もまたスマホヘビーユーザーだったようだ。
「実はこの本を書いたのには個人的な理由がある。1年前、自分が毎日スマホに3時間近く費やしていたことに気付いてショックを受けたのだ。3時間もだなんて!
時間の無駄だとわかっていても、私たちはスマホを手放すことができない。ソファに座ってテレビのニュースを見ていても、手が勝手にスマホに向かう。本を読むのは昔から好きだったのに、集中することが難しくなった。集中力が必要なページにくると、本を脇にやってしまう。そういう経験があるのは私だけでないはず。」(13頁)
著者は名門医科大学で医学を学んだ精神科医であると同時に、ストックホルム商科大学でMBA(経営学修士)を取得した知識人であり、スマホ依存症の暇人ではない。
日本女性には好感度の高いスウェーデンだが、私はこの国にはあまり関心がないためスウェーデン事情には疎かった。何処の国にも様々悩みはあるが新しいまえがきの一文、「スウェーデンではなんと、大人の9人に1人以上が抗うつ剤を服用しているし、同様の統計が多くの国で見られる。」もまた驚く。
さらに驚いたのは、10~17歳で精神科医にかかったり、向精神薬をもらったりしたことのある若者の割合はここ10年で倍になった、という統計を著者が報告書で読んだという個所。最も増加したのは強い不安とうつで、一番の被害は若い女性という。ストックホルムでは、13~24歳の女性の10人に1人以上が公営の精神科にかかっている。なお、個人開業の精神科医はここに含まれていない。
何もスウェーデンだけが特別なのではなく、若者の精神的な不調は世界中に爆発的に広がっている。米国でも、うつの診断を受けたティーンエイジャーは7年で6割増えたという。
これを以って著者は、自分が今のティーンエイジャーでなくてよかったという考えが頭をよぎったそうだ。著者は1974年生まれだが、ひと回り年上の私も同じ思いだった。教育大国スウェーデンの実態は興味深い。
日本でのケースは知らないが、10~17歳で精神科医にかかったり、向精神薬をもらったりしたことのある若者がいること自体、想像もつかなかった。日本のメディアが盛んに垂れ流す、北欧式ライフスタイルの知られざる一面は、抗うつ剤や向精神薬の服用に支えられているらしい。但しメディアに登場する日本の北欧通はまず言わないが。
その二に続く
◆関連記事:「スウェーデン幻想を抱く日本人」
確かに便利には違いないですが、ヒトはスマホやガラケーのない時代もそれなりに暮らしていたし、無くても構わないのでは?と、ずっと思っています。
コンテンツはどんどん刹那的、痙攣的なものばかりになって、ヒトは文化的に衰退しているのではないかと思わずにはいられません。
ヒトの好みや嗜好まで、機械任せになり、ニンゲンは主体性まで奪われようとしているのではないだろうか❔そんな疑いを抱く今日この頃です。
映画評論にかこつけて、私もその危機について書いてみましたので、ご高覧いただければ幸いです(↓)。
https://blog.goo.ne.jp/mobilis-in-mobili/e/689cd3e808eb1612c309c7d01d3ffd60
本書にも人類はずっとスマホ無しで暮らしてきたことが書かれていました。第7章のタイトルはズバリ「バカになっていく子供たち」。スマホ依存症の子供たちの実態には驚きました。青少年の教育には悪影響なのは言うまでもなく、タブレット学習は幼児に向かないとか。
本書にはスマホは人類の脳をにハッキングし、何かを買わせようとしているという言葉もありましたが、こうして主体性を奪われ、洗脳されていくのは恐ろしい。
おお、『2001年宇宙の旅』ですか。私も以前記事にしています。モノリスに始まり、モノリスに終わる作品でした。
https://blog.goo.ne.jp/mugi411/e/5e4b817009bc103e1638b391a0c8c99c
確かにスマホは買い物をするときにも便利ですが、その分広告に煽られて余計に買いそうで怖いのです。今のところは電子マネーで間に合っていますが、スーパーなどはあの手この手でスマホ決済を勧めてくるでしょう。
確かに便利な反面ネット拘束時間が増えますねえ。
どんどん本を読む量が減ってますね。学生時代は週5冊ぐらいよんでました。社会人になっても月5冊ペースでしたが、今年は5冊ぐらいしか読んだ記憶がありません。ネット動画で関心のある分野の知識を集めてるようになってしまったなあと。浅く広くならこれも悪くはないんですがねえ。
主体性を失ったニンゲンはモノリスに排除されてしまうのです。
私も自宅にネットを開通後、どんどん本を読む量が減りました。読書時間よりもネットをしている時間が長い有様。先日紹介して頂いたネット動画のように参考になるものは多いし、じっくり紙の本を読む人はますます減るのやら。
尤もモノリスって、いったい誰が作ったんじゃい?と思ってしまいます。超越者か唯一神またはその象徴?アーサー・C・クラークの代表作『幼年期の終わり』は異星人が地球に文明を施すストーリーでした。
これでゲームとかやりだしたら、確かに依存していくのでしょうね。
スマホ写真は画質も向上しており、これではデジカメが押されるのは当然でしょう。電池の減りもそのうち改善されると思います。すごいのは海外にいる人と顔を見ながら「国際電話」が出来ること。一昔前なら考えられなかった。
本書にも未成年の子供たちがゲームなどに時間を費やし、睡眠不足がひどくなっていることが載っていました。親と海外旅行に行っても、見ているのはスマホばかり。あまりいい傾向とは言えませんよね。