トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

スマホ脳 その二

2021-12-20 22:15:07 | 読書/ノンフィクション

その一の続き
 自己評価が低く自信がない人は、SNSのせいで精神状態が悪くなるリスクを抱えているそうだ。自分と他人を比較しがちなので。特にSNSをよく使う子のほうが満足度が低いとか。
 ただ、その傾向は女子にだけ見られ、基本的に女子のほうがSNSを利用している。研究者たちはその原因をこう推測する。
SNSというのは常に繋がっていなければならないものだ……彼女たちは常に“完璧な容姿”や“完璧な人生”の写真を見せられ、自分と他人を比較するのを止められなくなる

 12~16歳の若者4,000人を対象にしたアンケート調査では、7人に1人(14%)が1日最低6時間をSNSに費やしており、起きている時間の実に3分の1以上である。この結果から著者はこう述べている。
SNSが、一部のティーンエイジャーや大人の気分を落ち込ませ、孤独を感じさせ、さらには自信まで失わせているという兆候が大いにある。特に女子がひどく影響を受ける。しかも、その影響はもっと広範囲に及ぶのかもしれない。」(149頁)

 スマホが社会を席巻する以前から、ネット依存症は存在していた。1日中ネットに張り付き、方々の掲示板やブログを荒らす暇人がネットを徘徊しており、拙ブログにもその類が複数現れている。
 荒らしといえば男の引きこもりのイメージがあるが、女にも同類はおり、しかも中高年世代までいるのだ。拙ブログに書きこんでいた女には、自慢話やデマ、経歴詐称を重ねる者が3人ほどいた。3人とも自信たっぷりな書込みをする一方、すぐバレる稚拙なウソを繰り返す。ネットのせいで精神状態が悪くなったというよりも、元から精神の病を抱えており、ネットがそれに拍車をかけたとしか思えない。

 第2章「ストレス・恐怖・うつには役目がある」は、精神科医の見識らしく興味深かった。不安を抱えている人は必ずしも精神的に弱いのではなく、不安は人間特有のものという。誰しもうつやストレスは不快だが、人間が機能するには適度なストレスも必要らしい。短期的なストレスならば、集中したり、思考機能を鋭くしたりすることができる。
 また、うつのリスクを高める遺伝子には免疫を活性化するものもあり、うつと免疫には遺伝的繋がりがあったとか。うつは感染症から身を守る手段かもしれない、と研究者は考え始めたそうだ。

 ストレスに強く、うつにならない人は強い人間とされるが、必ずしも「いちばん強いものが生き残る」わけではない。不安やうつが人間の生存率を左右し、身体のストレスシステムが、危険な世界で私たちを守るべく進化してきたそうだ。

 私の友人の旦那に長年ケータイを持たなかった人物がいる。電気技師で早くからパソコンを使っていて、一昔前までパソコンは30万円もしたという。そんな人物が何故かケータイを持たず、職場で唯一ケータイを持たぬ男と言われていたそうだ。
 そんな人物でも東日本大震災の後、公務員ゆえに職場から強制的にケータイを持たされたという。定年後の今は第二の職場で働いているが、持っているのはスマホではなくタブレット。

 私がスマホを持たないのは、あれば便利でも今のところ不自由しないこともあるが、それよりも電子機器に1日中接しているのがイヤなのだ。ブロガーがこのようなことを言うと、奇妙に思われるかもしれないが、元からブログはネット時間を減らすために始めている。それ以前はダラダラネットサーフィンをしていたが、ブログ開設後はそれが減り、読書時間も増えた。
 私もいつかスマホではなく、画面の大きいタブレットの購入を考えていたが、本書を読んで見方が変わった。タブレットで電子書籍を読むのも悪くないと思っていたが、寝る前に紙の普通の本と電子書籍を読むという実験の結果、後者の方が眠りに落ちるまで10分長くかかったという。電子書籍はスマホのように脳を興奮させやすいようだ。

 著者からのデジタル時代のアドバイスのひとつに、運動を挙げている。最もいいのは心拍数を上げる運動だが、脳から見れば、ただ散歩するだけで驚くほどの効果があるそうだ。どんな運動も体にいいとか。
「私が子供の頃にスマホがなくてよかった」と著者は言っており、「デジタルのメリーゴーランドにぐるぐる回されてしまうのは簡単だ」の言葉は印象的だった。ビジネスのため、デジタル軍拡競争は日々激しさを増しているのだから。

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ネットでデマをまき散らす者

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