トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

動物農園

2022-11-04 21:10:08 | 読書/小説
 やっと『動物農園』(ジョージ・オーウェル著、中央公論新社)を読了した。ジョージ・オーウェルといえば、全体主義国家による支配を描いたディストピア小説『1984年』が有名だが、この作品を私は未だに読んでいない。本作もオーウェルの代表作として知られるが、タイトルだけは知っていても未読だった。 マスコミで結構『1984年』のストーリーは解説されていたが、1984年時点でこのような社会は実現しそうもないよ . . . 本文を読む

永遠の0、その雑感

2022-09-01 21:10:08 | 読書/小説
 大変遅ればせながら、小説『永遠の0』(百田尚樹 著)を先月読了した。生来の天邪鬼もあり、どうも私は作品が話題沸騰の時は敬遠し、ブームが去った後に鑑賞することが多い。この作品が発表されたのは2006年で、映画永遠の0が公開されたのが2013年6月。 映画化されたのは知っていたし、私行き付けのミニシアターでもロングラン上映となっていた。それでも私がこれまで見なかったのは、タイトルだけで零戦礼賛作品の . . . 本文を読む

夏の騎士

2022-06-30 21:00:08 | 読書/小説
『夏の騎士』(百田尚樹 著、新潮社)を読了した。何かと問題発言を繰り返し、保守からも“煽動的ウヨク”視される百田氏だが、さすがにストーリーテラーと謳われるに相応しい作品だった。図書館にあった本だがタイトルが気に入り、時期柄にピッタリと思い借りてきたが、思った以上に面白く、一気に読んでしまった。新潮社HPではこう紹介している。 ―人生で最も大切なもの。それは、勇気だ。ぼくが . . . 本文を読む

悪魔の選択 その三

2022-03-27 21:15:20 | 読書/小説
その一、その二の続き 特殊部隊による武力行使を警戒するスボボダは、スーパータンカー船長を通じて3つの要求をする。1.本船の周囲からの全ての船舶の退去、2.海上海面下のいかなる船舶の本船周囲5マイル(約8.04㎞)以内の接近禁止、3.いかなる航空機も本船を中心とした半径5マイルの空域に、1万フィート(3048m)以下の高度で侵入しないこと。 テロリストが以上の要求をしても、英米両国は禁止区域間近に軍 . . . 本文を読む

悪魔の選択 その二

2022-03-25 22:10:08 | 読書/小説
その一の続き ソ連当局に弾圧されたのは非ロシア系民族主義者ばかりではない。ロシア人すらお上に逆らうデモを行えば、情け容赦なく鎮圧された出来事が本書に載っていた。 1962年6月2日、ウクライナに近い南ロシアきっての工業都市ノボチェルカースクで、労働者が暴動を起こした。行政機関が肉とバターの値段を上げ、同時に機関車工場の労働者の賃金を30%も切り下げたため、怒り狂った労働者が3日間にわたり市を占拠す . . . 本文を読む

悪魔の選択 その一

2022-03-24 22:10:11 | 読書/小説
 1979年に発表された小説『悪魔の選択』(F.フォーサイス著、角川書店)を久しぶりに再読した。この作品を読んだのが何時だったか正確には憶えていないが、'80年代前半だったと思う。発表から40以上経ても内容は全く色褪せず、ロシアとウクライナの複雑な関係が作品から浮かび上がっている。 この作品を再読した理由は、何といってもウクライナ情勢にある。ウクライナ民族主義者がテロリストグルーブと化し、100万 . . . 本文を読む

佐藤賢一氏のナポレオン その二

2022-01-10 22:20:05 | 読書/小説
その一の続き 私的に本書で一番面白かったのは、②野望篇でのエジプト遠征。“エジプト遠征”で誤解されているが、正式にはこの遠征の名称はエジプト・シリア戦役であり、文字通りシリアにも侵攻していた。“エジプト遠征”で圧巻なのは、ピラミッドの戦い。対するマムルーク軍はオスマン帝国のみならず中東最強の騎兵集団でもあった。単に武力だけに秀でていたのではなく、マム . . . 本文を読む

佐藤賢一氏のナポレオン その一

2022-01-09 21:50:45 | 読書/小説
 佐藤賢一氏の歴史小説『ナポレオン』(集英社)を先日読了した。全3巻あり、しかも各巻は500頁という大長編。本書は河北新報で紹介されていたので知ったが、図書館で本を手に取った際、その長さと登場人物の多さに圧倒された。 果たして全巻読めるのか不安だったし、軍事に関して未だに私は疎い。尤も今はコロナ禍で家籠りすることが多く、読んでみても悪くないと思い直して借りてきた。実際に読み始めたら、借りる前の不安 . . . 本文を読む

鬼平をめぐる女性たち

2021-12-05 22:01:17 | 読書/小説
 11月28日、中村吉右衛門が心不全により死去した。享年77歳と早すぎる死に驚いた方も多かったろう。中村吉右衛門といえばテレビ時代劇鬼平犯科帳が有名だったし、私の大好きな時代劇でもあった。池波正太郎原作の鬼平犯科帳シリーズ全作も読んでおり、原作ファンから見ても中村の鬼平は本当に良かった。あれだけ質の高い時代劇は現代では制作も難しいだろう。  鬼平には男女ともに魅力的な人物が大勢登場しており、鬼平 . . . 本文を読む

ザ・フォックス

2021-11-18 22:25:08 | 読書/小説
 フレデリック・フォーサイスの最新作『ザ・フォックス』(角川書店)を読了した。昨年3月に既に出版されていたとは知らなかった。自伝『アウトサイダー 陰謀の中の人生』以降に新作が出るとは想像していなかったし、wikiの主な著作(日本語訳)リストにもこの作品は載っていない。以下は角川書店HPでの紹介。 ―ミッションはシステム侵入。標的は、イラン、北朝鮮、ロシアの最高機密! イギリスで天才的なハッキング . . . 本文を読む