スキージャンプ&スポーツ竹内元康発言

スキージャンプ選手、全日本コーチ、解説者、トレーナーを経て・・・今だから語れること。

トリノ五輪アルペンSL

2006-02-28 00:53:19 | スポーツ
今回のオリンピックで一番ドキドキして観たかも。そして鳥肌が立った!!
この日には自分も所属する札幌SSプロダクツ・ジュニアレーシングチームのコーチを一緒にやっている人の会社の会議室で、現在のスタッフ、選手、OB、元コーチ、父母、そして湯浅直樹のお母さんらで大画面TVで応援した。
頭には死攻のハチマキ、頬には日の丸のペイント、そしてテレビ局のカメラも入っていた。
なんと今回の代表メンバーで佐々木明、皆川賢太郎は自分の出身高校の後輩、湯浅直樹はチームのOB、3人とも繋がりのある選手なんて・・・

さあ1回目のスタート。
ビブナンバー一番は今シーズンのスラロームでは圧倒的な強さを誇るゴールドメダルの大本命イタリアのジョルジョ・ロッカ。
そしていきなりのコースアウト。いつもはこいつの滑りは凄いぞと思ってじっと見入ってしまうのだが、ここでは嘆きとともに大拍手。
この意味わかる?!
日本人選手の順位が1つ上がるぞって意味さ。
今回のオリンピックでは共通して言えることがある、大本命がことごとく勝てない。
こういうことがおこるのがやっぱりオリンピックなんだぁ・・・
参加してるのは各国を代表する最高位にランクされる人間、皆にチャンスがあるということ。
ビブナンバー10、明の登場。
あれっ、攻めてない。丁寧に滑っている・・・
しかし、それには訳があった。曇り空で雪面が見ずらい、視力の良くない明には非常に不利な状況。おまけにバーンが引っかかりやすい状態のようで・・・
新聞にはやる気ゼロというコメントがのっていたが、やる気がないということじゃなくて、俺が目指してるNO.1のためには状況が悪すぎるといった意味だと思う。
佐々木明らしい表現だ。それでもトップから1秒のビハインド、射程距離じゃん。

さあ、つづいて皆川賢太郎、すばらしい表情だ。
スムーズだ、速そうに見えないけど速い。凄い凄い、無駄がないから速い。
ジョルジョ・ロッカがダブって見えるような滑りだ。53秒44!
ガッツポーズ、すばらしいタイムだ!っていうか本当にメダル取れるって思わせられるようなタイム。
おそらく賢太郎のような滑りをしたいと思ったレーサーは世界中に沢山いたのではないか。

そして第3の男といわれてる直樹。
こいつもいい表情だ。
あれっ、直樹も随分とおちついた滑りだ、やはりトップ選手があれだけ途中棄権、片足反則が続出してるとコーチ陣から少し抑えていけと指示が入ったか。
あぶなっかしい滑りが真情の直樹とは少し違ったような・・・大人の滑りが出来るようになったっとすれば、これからの直樹は本当に結果を残していくかもしれない。
しかし、身体はよく動いている、いい感じだ。
ミスはしても、つねにリカバリー体勢ができている。間違いなく完走はできるな。
54秒76は17位、トップから1秒39のビハインド。
トップとは少し差があるが、2回目はおそらく死んでもでも攻める死攻魂で狙ってくるだろう。

日本選手ラストは生田。
滑り的には少し見劣りするもののコースアウトして途中棄権しても不思議じゃないとこをスイッチバックして最後まで滑りぬくんだという姿勢には別な意味で感動した。
あの姿勢には涙が出そうになった。

2回目
日本は先陣を切って直樹。
1回目よりも細かくトリッキーなセット、素早い動きが要求される。
直樹の滑りはとにかく反射動作が素晴らしい。膝に爆弾を抱えてるとは思えないような動きだ。今シーズンはオリンピックのために膝の手術をしないで、ずっと痛み止めを服用してのシーズン。痛みをこらえてよくここまで来た。
鬼神のようなアタックをみせている、そしてフィニッシュ。
でたー、凄いタイム。この時点でダントツのトップに踊り出る、今シーズンで最高のランができた、それも夢にまで見たオリンピックという舞台で。
カッコよすぎるぞ、次のオリンピックでは間違いなく日本のエースとしていけるぞ。

そして佐々木明、明の最高のパフォーマンスが出来れば十分逆転の可能性があるタイム差からのスタート。これもフルアタックできてる・・・と思った瞬間・・・やった・・・
片足反則だ・・・でも、これはアルペン競技にはつきもの、リスクの高いポール際を狙ってこなければタイムはでない、本当に出会い頭の事故である。
狙った結果だからしょうがない、だれもこのことを責めることはできない、責める奴がいるとすれば、それはアルペン競技を知らない奴だろう。

さあ、賢太郎だ、頼むぞという思いで手を合わせながら見てしまう。
表情はいい、スタートだ、少し動きが硬いようにも見えるがリズムに乗ってきた。
いいぞ、いいぞ、慌てることなく自分の滑りに集中してる。
フィニッシュ、なんと右ブーツのバックルが外れてる・・・スラロームはポールに向かって足首から入っていかなくてはポールの際には迫れない、だからブーツのバックルが壊れたり外れたりするのは日常茶飯事的なところはあるが、よりによってこの場面でかぁ・・・
どの地点で外れたかは分からないが、滑りずらかっただろう。
終わってからのタイム差をみるとメダルまで100/3秒、このアクシデントがなければと思ってしまうのは自分だけではないはず。

しかし半世紀ぶりの入賞は凄いこと、それもダブル入賞だ。
メダルじゃなければ日本のマスコミは取り上げないだろうが、この事実は世界では脅威だと思われている。賢太郎の1回目のタイム、直樹の2回目のタイム、これは世界でのトップスラローマーを意味する。
それにしてもオーストリアの1,2,3フィニッシュ、これも素晴らしい出来事。
スキー王国オーストリアここにありといったオリンピックだ。
なんだかジャンプにしてもアルペンにしても、そしてコンバインドにしてもオーストリーのためにあったような感じさえしてしまう。

皆川賢太郎の4位とうのは十分メダルに値する4位だった。
そして直樹の7位、これもメダルの見える7位だ。
これからは、このアルペンスキーのスラロームは絶対に目が離せないぞ。
心から感動をありがとうと言いたい。
本当に、本当に鳥肌がたった。
それから、直樹をスキーヤーとしてそのベースを子供の時につくってくれた我がSSプロダクツの監督、凄いです、心から尊敬します。子供の育て方がこんなに上手い人は見たことがないです。まさに監督マジックです。
第2、第3の直樹を育てていきましょう、一緒に!!!

金 ベンジャミン ライヒ (オーストリア 53秒37(1) 49秒77(1) 1分43秒14
銀 ラインフリート ヘルプスト (オーストリア 53秒55(4)50秒42(7) 1分43秒97
銅 ライナー シェーンフェルダー (オーストリア 54秒03(7)50秒12(5)1分44秒15
4 皆川 賢太郎 (日本 53秒44 (3) 50秒74 (9) 1分44秒18
4 アンドレ ミレル (スウェーデン 53秒95 (6) 50秒23 (6) 1分44秒18
6 イビツァ コステリッツ クロアチア 54秒43 (11) 50秒02 (4) 1分44秒45
7 湯浅 直樹 (日本 54秒76 (17) 49秒81 (3) 1分44秒57