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パルミラの小さなバスターミナル

2009-03-23 22:37:34 | journey
(旅期間:08.5.26~08.6.16)

日帰りでパルミラに行ってきた。ダマスカスからバスで3時間ほどの距離の砂漠の中にある遺跡。世界遺産。
世界遺産がなんぼのもんじゃい。私は遺跡に無関心女よ。
そうはいってもせっかくシリアに来てるのに"シリアといえばパルミラだよね"的なところに行かないのももったいない気がしてダマスカスから日帰りで行くことにしました。

バスに乗車してる時間は3時間だけど、バスターミナルが歩いていける距離にはないから、まずはセルビス(乗り合いワゴン)をつかまえてターミナルへ。ちなみにこのセルビスは、車によって走る路線が違う。
このセルビスはこの路線を行ったりきたりする、みたいな感じです。
ですが、はっきりいって私の行き先にいくのがどのセルビスなのかは見分けがつきません。
なんてったってアラビア語でしか表記されてないから。
だからとりあえず来たセルビスを止めて、いちいち"ガラージュハラスター?"とか聞かなきゃならない。
周りに人がいたら親切にも乗るセルビスを止めてくれたりするんだけど、私が出かけたのは早朝だったので人おらず。でもすぐ目的のセルビスをつかまえることができました。

朝6時30分に出発し、なんだかんだで行きは4時間。帰りも4時間。夕方4時30分に帰ってきました。
なんだよ、せっかく行ったのに滞在時間2時間かよ、と思いますか?いくら私が遺跡嫌いだとしても、さすがに2時間はないかな。


(シリアは銃を持ってる人がいーっぱい。軍関係かな。とにかくそこらじゅうに銃持ってる人がいる。普通に旅するって意味ではとても治安がいい。バスの乗客も銃持ち。)


正解は、"パルミラには行ったがパルミラ遺跡は見ていない"です。
つまり、トンボ帰りしてきただけです。

パルミラの小さなバスターミナルに着いたときには外は既に砂嵐で目も開けていられないほどでした。
ちょっと待ってみたけどどうも今日はだめっぽい。あぁ、私が昨晩"遺跡って、特にパルミラ遺跡なんかは結局のところ残骸だよね"などとバチあたりなことを考えてしまったからかしら。来なくていいよって思われたのね、きっと。

ダマスカスに戻るバスは2時間後。音楽は持ってたものの何もすることがなく、一人つまらない時間をこの砂漠にポツンと存在する小さなパスターミナル兼食堂兼売店で過ごさなきゃならないのか。はぁ。

バスターミナルに着いてすぐにトイレに行った時、トイレ番の小さな男の子にむかついてね。
モロッコでもどこでもそうだったんだけど、こういった場所のトイレは有料です。コイン1枚ぐらいだからシリアでは30円から50円ぐらいってところかな。
それがこの少年、私の財布をのぞきこんで札を指さしてくる。は!?ありえないから!高すぎるから!
札っていっても120円ぐらいなんだけどさ、さすがにそれはない。
もめてる私たちの間に助け舟を出してくれたのが、行きのバスで隣に座っていたおばあさんでした。
私からコインを受け取って少年に渡し、その場はおさまりました。
このおばあさん、すごく気持ちのいい人でね。バスの窓側に座っていたおばあさんは多分外の景色を見たかったんだと思うんだけど、方向によって朝日が入ってくるからカーテンを開けたり閉めたり何度もして、私とか通路を隔てた人に直射日光が当たらないように配慮してた。
アラブの人って"我先に"って人が多くて、このおばあさんみたいに人に気を使ってる人って初めて会ったんじゃないかな。
途中でガムもくれた。言葉は通じないから無言で笑顔だけで会話。でもそれで十分でした。


さて、バスターミナルに一人残された私。乗ってきたバスが去ると私とそこで働く人たちだけになりました。
誰も英語は通じず。ここでいう"通じる"は、たとえば"バスターミナル"って単語を知っていたり、"HOW OLD ARE YOU?"が通じたり、そういうレベルの話です。

パルミラみたいな観光地のこういったターミナルが一番人がすれている。都会の人のほうが優しい。
そう思っていたし、実際これまでそうだったことが多かった。

最初のトイレの一件もあるから、とにかく早く時間よ過ぎろとだけ思ってた。


あまりに暇だったから働いてる人たちを観察してると、一定の行動ルールがあることに気付く。
外にバスがとまるとそれぞれが定位置について客を迎える。客がいなくなるとボス的な人のところに集まってそれぞれが手にしたお金を提出する。その後床を掃いたりテーブルを拭いたり。何もすることがなくなるとだらだらし始める。

最初はお互い"なんだこいつ"みたいな感じで警戒してたものの、すこーーーーーーーーしだけ英語が通じる男の子が"TEA?"って聞いてきてくれてね、私はきっと正規の値段より高いんだろうなって思ったから"いくら?"って聞いたら"ノープロブレム"って言ってチャイを出してくれた。
そのことに私の心もほぐれて、4、5人いた働いてる男の子たちの写真を撮ったり、通じないながらもほんの少しの英語とニュアンスと表情でコミュニケーションを取り始めました。
気付いたら全員が一箇所に集まって私の持ってたアラビア語会話帳で通じてるんだか通じてないんだか不明のやりとりを笑いながら2時間やってた。
どう見ても35歳以上にしか見えないボスが私と同じ25歳だってことにびっくりして"まじで!?ないわー。絶対25には見えないわー"って日本語でリアクションする。通じるもんだよねー、雰囲気で。

そこにトイレでのやりとりをした男の子が指にケガをして現れた。どうも、料理に使うチキンをさばいてて切っちゃったらしく血が出てた。痛そうにしてたから"ちょっと待ってね"って言って持ってた絆創膏を指に巻いてあげた。余分に持ってたからそれもあげた。
バスが来るまで同じやり取りを何度も繰り返してその度に笑ったり、グラスが空になるとすぐ"TEA?"って聞いてくれておかわりを入れてくれたり、バスが来たら"これがダマスカス行きだよ。でもまだ座ってていいからね。"なんて最後まで世話焼いてくれたり、2時間前には考えられなかった展開になってた。



出発前にトイレに行っておこうと思って行くと、絆創膏をあげたトイレ番の少年が定位置にいた。
出てお金を渡そうとしたら、その子ははにかんで"NO MONEY"って言った。
その言葉に思わず頬がゆるんだ。

たった2時間という短い時間だったけど、人と人の関係が出来ててね、すごく小さなことだけど嬉しかった。

ある人からお金を出させようとするのはある意味当たり前で、彼らは仕事としてそれをやってて、交渉してそこに妥協点が見つけられたならそれがその場合の適正価格で。当たり前のことなのよね。

パルミラ遺跡は見れなかったけど、パルミラのバスターミナルにいる人たちとの出会いはあったわけだし、結局ここでも"みんな優しいー"って思えたから満足です。

ここでは私が外国人で珍しい人。日本人の女の子。ある時やってきたある日本人の女の子は結構いい子だったな。"そう思われたらすごく嬉しい。

"いい人っていわれたって どうでもいい人みたい"
なんてことはありません。誰もがすべての人と深い付き合いをするわけじゃない。ならば一期一会の関係においては"いい人でありたい"。常々思ってることです。


昨日宿のおじさんと話してる時、シリア人も半分はいい人。半分は悪い人。それは日本人も同じ。この前きた2人の日本人も一人はいい人で一人は悪い人だった。って言われた。

それは当たり前のことで、国によって雰囲気の違いはあるもののその中にはいい人も悪い人もいる。
だけど、私は自分が出会った人でしかその国の印象を持つことはできない。
それを運とかタイミングとか相性っていうんだと思う。
相性がいいから、タイミングがあったからいい人たちに出会えた。逆もまたしかり。


心細かったり不安だったり、いつも以上に心が敏感になってるときにされる小さな優しさは、感動に値するぐらい大きい。

残念ながら私の思春期は去年で終わってしまったので、この旅で自分について考えた時間はゼロに等しい。
探す自分はもうないよ。

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