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『七人の侍』 DVD

2009-03-31 17:28:22 | movie
製作国:日本  1954年公開
監督:黒澤明
出演:志村喬、三船敏郎

【ストーリー】
戦国時代の貧しい農村を舞台に、野盗と化した野武士に立ち向かうべく農民に雇われた侍たちの闘いを描いた作品。言わずと知れた黒澤明監督による日本映画を代表する傑作のひとつ。麦の刈入れが終わる頃。とある農村では野武士たちの襲来を前に恐怖におののいていた。百姓だけで闘っても勝ち目はないが、麦を盗られれば飢え死にしてしまう。百姓たちは野盗から村を守るため侍を雇うことを決断する。やがて、百姓たちは食べるのもままならない浪人たち7人を見つけ出し、彼らとともに野武士に対抗すべく立ち上がる……。


【感想】
面白い!

極上のエンタメ。200分と長い映画だけど、引き込まれる。ユーモアもあって、大笑いした。7人の侍それぞれが人間的魅力に溢れてるだけじゃなく、百姓たちも、前半にちょっと出てきた人足も、魅力的に描かれていた。

勉強になるわ、この映画。人間としての魅力って何か。リーダーって何か。人をまとめる術って何か。物事をなしとげるときに必要なバランス。

言わずもがな、三船敏郎演じる菊千代がめちゃめちゃカッコイイ!!
アツくてバカで強くて破天荒で根は優しい。
自分ではそんなつもりはなくても皆を笑わせ、百姓達と侍達を結びつける重要なポジションを担ってる。



私が一番笑ったのは、志乃が思い切って勝四郎の前で寝そべるシーン。めちゃ笑った。大笑いよ。いやー、女の子って大胆ね(笑)
勝四郎を誘う眼とか、「THE今私誘ってます」って感じなんだもん(笑)

ほんの少ししか出演場面はないのに、野武士らに連れ去られた利吉の奥さんが幽霊みたいな表情を浮かべるシーンはとても強く印象に残る。


黒澤映画、小津映画等々、昔の素晴らしいとされている映画に対して苦手感を持ってたけど、これから少しずつ観ていこうと思う。

私のように、映画は好きだけど黒澤映画って何かね・・・いつか観るつもりではいるけどなんとなく気が向かない、って思ってる若い人は早いうちに観た方がお得だと思う。
「さすが」としかいいようのない映画。


『タクシードライバー』 DVD

2009-03-31 02:02:47 | movie
製作国:アメリカ。1976年公開。

監督:マーティン・スコセッシ
出演:ロバート・デ・ニーロ、ジョディ・フォスター、ハーヴェイ・カイテル、シビル・シェパード

【ストーリー】
大都会ニューヨークを舞台に夜の街をただ当てもなく走り続ける元海兵隊のタクシー運転手が、腐敗しきった現代社会に対する怒りや虚しさ、逃れられない孤独感から徐々に精神を病み、ついには自分の存在を世間に知らしめるため過激な行動に走る姿を描く。

都会の空虚を、徹底したリアリズム映像の中に幻想を交えて描いた。1960年代後半から1970年代中頃にかけて隆盛を極めたアメリカン・ニューシネマの最後期にして代表的な作品とされている。

ロバート・デ・ニーロは撮影に際し数週間実際にタクシーの運転手を務め、役の研究を行った。彼の演じる主人公トラヴィス・ビックルは映画史上最高のアンチヒーローとなり、デ・ニーロ自身も70年代半ばから若者にとってのカリスマ的存在となった。また、売春で生計を立てる少女アイリスを演じたジョディ・フォスターは公開当時わずか13歳であったことが大きな話題を呼んだ。フォスターは本作で第49回アカデミー助演女優賞にノミネートされ本格的に女優としての第一歩を歩み始めた。


【感想】
私、この映画って全然違う内容の映画だと勝手に思い込んでた。
孤独な男のダンディズムを描いた作品だ、と。なぜそう思い込んでいたのかは分からないけど。

これは狂気にとりつかれた男の物語。
その狂気は、決してかっこいいとは思えない。

狂気って、半分の人はそれを羨望のまなざしで見て、カリスマ化する。
もう半分の人は、それを決して正当化しない。

私は後者。
この映画のレビューも、「傑作」と評する人、「単なる自慰者、自己本位で自己正当化しか出来ない人を描いているだけ」と評する人に分かれているみたい。

まさに、映画を観ながら「感想半々に分かれるだろうな」と思っていたので、やっぱりなって感じ。


前提として、映画としてはよかった。
ムダなところはないし、映像の色と音楽もあっていたし、キャストの演技は上手いし、ストーリーもうまくオチがついてる。

だけど私はこの主人公を全然かっこいいと思わないし、全く正当化できない。
単なるヒーローになりたがりで小心者な思い込みの激しい面倒くさい人だと思った。
憧れの女性と仲良くなるときの口説き文句にしても一方的な決めつけのセリフだらけ。彼女のような人をポルノ映画館に連れて行って、バカじゃないの?
孤独とか寂しさがつきまとうとか、よく言うよ。自分で招いてるだけじゃん。
売春をしていたアイリス(ジョディ・フォスター)を説得するときだって、独善的。
正しくないヒーローを作るのが監督の狙いなら、まさに私はドンピシャはまってるわけだけど、作品中のトラビス(デニーロ)をかっこいい男だと思うのって絶対的に男が多いと思う。彼に憧れるのはやっぱ男でしょ。
なんていうか、男の理想を描いてるな、って。
最後結局うまく収まってるし。

大統領候補の暗殺が出来ず、ていうか銃で狙うことすらできずにスタコラ逃げて、ギャングスタたちと撃ち合って、死んだかと思いきやヒーロー扱いされてました。

主人公に対して否定的に観てて、思わず映画についても否定的な感想を持ちそうだったけど、ラストで救われた。落としどころはそこだったかーー。


本編からちょっと離れて、ジョディ・フォスター・・・若いね・・・。
13歳かー。ずっと第一線で活躍し続けてるってすごい。

アイリス役の女性。どっかで観たことあるって思ったら、the L wordのフィリスじゃん!!シビル・シェパードってすごい人だったのね!!
やー。娘のクレメンタイン・フォードよりキレイ。そんな人が現代ではthe L wordでちょっと笑える学長を演じてるなんて・・・。なんか歴史を感じてしみじみ。

スポーツ役の人もどっかで観たと思ったら、私の大好きな映画「smoke」の主人公だった。てか他にも色んな映画で観てるはずだよなー。

タクシー客の役でスコセッシ監督自身が出演してたりして、きっとファンにはたまらないはず。



繰り返しになるけど、映画としては(イライラすることも含めて)面白いし、出演者は今も活躍してる人が多いし、観てよかった。

『紳士は金髪がお好き』 DVD

2009-03-29 11:51:50 | movie
製作国:アメリカ。1953年公開。ミュージカル・コメディ。

監督:ハワード・ホークス
主演:マリリン・モンロー、ジェーン・ラッセル

【ストーリー】
ローレライ(マリリン・モンロー)とドロシイ(ジェーン・ラッセル)はニューヨークのナイトクラブに出ている仲の良い芸人同士だった。ローレライはなかなかのチャッカリ娘で、金持ち息子ガス(トミー・ヌーナン)の心をとらえ、パリへ渡って結婚することになったが、出発間際ガスの父が病気でとりやめになった。余った切符でドロシイがローレライと一緒にパリへ行くことになった。船にはローレライの素行を調べるためガスの父が私立探偵のアーニイを乗り込ませた。ローレライは船客名簿からヘンリイ・スポウォード三世という金持ちらしい名前を選び、会ってみると6歳の少年だった。次いで彼女はダイヤモンド鉱山主フランシス・ビークマン卿(チャールズ・コバーン)を狙った。彼の夫人が持っているダイヤの髪飾りが欲しかったのだ。その間、アーニイはドロシイに言い寄った。ある日、ビークマン卿とローレライが会っている現場をアーニイがこっそり撮影した。それを見つけたドロシイは、ローレライと協力してフィルムを奪い、ビークマン卿の目の前で焼き捨てた。これを喜んだ卿は、ローレライに夫人の髪飾りを秘かに贈った。パリに着いて髪飾りがなくなったことに気づいた卿夫人は、ローレライに嫌疑をかけた。ローレライとドロシイはある料理店に出演したが、そこへ突然、ニューヨークからガスがやって来て、髪飾りの一件でローレライを責めた。ローレライは髪飾りを返そうと思ったが、いつの間にか紛失していた。ドロシイは自ら髪飾り紛失の罪を着て、ローレライになりすまし、法廷に立ってあれこれ急場を切り抜けた。そのうち、ビークマン卿が髪飾りを取り返していたことが分かり、ドロシイは無事釈放。ドロシイをローレライだと思い込んだガスの父親は結婚はまかりならぬといきり立ったが、本物のローレライを見てたちまち気に入ってしまった。こうしてローレライとガス、ドロシイとアーニイの2組がめでたく結ばれた。


【感想】
誰もが知ってるアメリカのセックスシンボル、マリリン・モンロー。
知った気でいるけど実は映画観たことない。

ということで、私にとって初のモンロー出演映画。

誰もが眼を向けずにはいられない容姿を持つローレライ(モンロー)と、対照的に堅実で知的なセクシーさを持つドロシー(ジェーン・ラッセル)のコンビがいい。
この二人の友情があるから、単なる男女間の映画ではなくなってる。
ドロシーが「彼女(ローレライ)のことを悪く言ったら承知しないわ。彼女のよさをしらないよの。」と言うシーンが好き。

女の友情において、「どうして二人が親友なの?」というようなことがよくある。
見かけではなく中身において。
二人は、お互いに相手の趣味嗜好主義に影響されることはなく、各々確立した自己を持っている。
その上で、相手を受け入れなおかつ親友なんだから見ていて気持がいい。

映画の中でドロシーはどう頑張っても「頭悪いんじゃないのかしら」と見えてしまう。セックスシンボルといわれたマリリン・モンロー自身もそう思われてたのかな。

終盤で、「私が頭のよいところを見せると男性がいやがるから」みたいなセリフがあったけど、それは風刺なのか否か。


ドロシーはお金が一番という考えの持ち主。その徹底ぶりは見ていて清々しく、そのような考え方もまた真であろうな、と思わされる。
お金の心配をしているようでは愛する余裕はない、とか、確かにそうかもな、と思う。
後半で歌った「Diamonds Are a Girl’s Best Friend」は、偶然にも先日観た『ムーラン・ルージュ』でニコール・キッドマンが歌っていた。

私は、玉の輿に乗るというのも才能だと思うよ。
女の魅力を最大限に生かした、才能。成功するために、自分の力で成し遂げてもいいし、他者の成功に乗っかるでもいいし、どっちにしろ全然内容は違うけど才能が必要ね。
映画の中に出てくる女はとても女らしく、男はとても男らしかった。
男はキレイな女が好きで、女はお金持ちの男が好き。なんともシンプルでいいじゃないか。底が浅いようでいて深いのかもしれないけどやっぱり浅いかも。

ジェーン・ラッセルがマッチョな男に囲まれて「誰か私を幸せにして」「寄りかかる腕が欲しいのよ」と、100%相手に幸せをお願いする歌を歌うんだけど、あそこまで突き抜けてたら潔くてアリ。



サイト等でマリリン・モンローの生い立ちとか調べてみた。
彼女について書かれた本も読んでみたい。

マリリン・モンローって、あの有名な絵とか静止画とかだったらセクシーの香りがプンプン漂う美しい人って感じだけど、観れば観るほど「き・・れいなのかな?」と思うようになってしまう。多分正統派な優等生的美女ではないのね。
化粧落とした素顔が読めない。
セクシーというにはあまりにも明るい。生い立ちうんぬんではなく、スクリーン上の彼女からはセクシー感は漂ってこない。
てことは、実生活でそうではない一面を垣間見たら、たちまち恋に落ちそう。


彼女の再来はないなと思う。稀有な人だったんだろうと。


超越した人

2009-03-27 12:04:38 | movie
存在が既に普通のものさしじゃ測りきれなくて、好きか嫌いかというレベルを超えてしまった人たち。それが叶姉妹。特に姉。

出始めの頃はご他聞にもれず、何なんだ彼女達は、と胡散臭い眼で見ていましたが、今では彼女のいうことは全て言葉のまま受け入れております。


稀有な人よね。


恭子さん主演の映画が5月に公開される。
イロモノでB級なんだろうと決め付けておりましたが、そういう偏見をやめにして観に行ってみようかなと思うようになりました。

『IL VENTO E LE ROSE 愛するということ ...』



映画のことを調べるついでに叶姉妹のブログをちょっと読みましたが、めっちゃ面白い!・・・うーん、「面白い」って表現でいいのかなぁ。
当人はいたって真面目で普通のことを書いてるのよ、ってつもりなんでしょうが、超越してて面白いんだもの。



しかもいいこと言ってたし。


傷つくことを恐れると、後悔というリスクが生じる。


こんなことを言ってた。


それは愛についての言葉だったんだけど、愛に限らず一般化しても当てはまるよねこの論理。


怖いからやめたら確かに後悔するし。
後悔って癒えないけど傷って癒えるよな。だから傷ついてもやった方が後々いいよな。

fall in love with her at first sight

2009-03-25 00:01:39 | attractive girls
たーくさん素敵な人はいるけど、その中でもひとめ見た瞬間から釘付けになってしまう人もいるわけで。

改めて考えてみると、なんてはっきりした傾向なんでしょう!


私はロング、ダークカラー、ダークアイ、(多分)情熱的、に弱い!!



まずは、誰もが認めるスペインの宝。ペネロペ・クルス。アカデミー賞おめでとう!まもなく公開される『恋するバルセロナ』絶対観に行きますから!
なんでも、ペネロペとS・ヨハンソンが。もう本当、ありがとうございます!



the L word、カルメン役のサラ・シャヒ。誰もが認める美尻クイーン。



初めて映画館のスクリーンで彼女を見たとき、私は一発でハートを奪われました。
「世界一可愛い人を発見したーーー!!」と内心フィーバー状態でした。
映画『踊れ!トスカーナ』のカテリーナ役、ロレーナ・フォルテーザ。彼女のフラメンコに酔いしれましょう。映画としても明るくてハッピーでユーモア満載で素晴らしい!マジかわいいですから。
ただ、残念なことに彼女の姿を見れるのはこれ一本。えーん。




最後に、本当に最近魅力に気付いた人。長谷川潤。viviモデルを始めた頃ちょうどviviを買ってて、そのときは何とも思わなかったんですけどねー。
TVにゲスト出演してるのを見て、明るさと笑顔にKO。




とまぁ、一見してすぐ分かるタイプを書きましたが、実際のところはLの世界の中ではベットが一番好きだし、蒼井優にはまったときがあったり小西真奈美にぞっこんになったときもあったり今宿命になったときもあったり浜崎共和国に移住したこともあって、つまるところかわいい人って超いっぱいいて困るよね、って話。

『凍』 ノンフィクション

2009-03-24 16:09:56 | book
著者:沢木耕太郎

【内容】
最強のクライマーとの呼び声も高い山野井泰史。世界的名声を得ながら、ストイックなほど厳しい登山を続けている彼が選んだのは、ヒマラヤの難峰ギャチュンカンだった。だが彼は、妻とともにその美しい氷壁に挑み始めたとき、二人を待ち受ける壮絶な闘いの結末を知るはずもなかった—。絶望的状況下、究極の選択。鮮かに浮かび上がる奇跡の登山行と人間の絆、ノンフィクションの極北。講談社ノンフィクション賞受賞。


【感想】
すごい。強い。

極みを目指す人に共通することに「美しさの追究」があると思う。
クライマーなら、「美しいライン」。どのラインで登るのか。
ガリレオでは素晴らしい公式や解き方を「美しい」と表現していた。
そこでいう美しさは、無駄なものがまったくない、過不足のないものなのだと思う。
それってニアイコールで効率性なのか、と感じた。
おそれ多くも、私の目指しているのも「美しい答案」だ。



思わずDog earを作ってしまった箇所を抜粋。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「二人に凍傷はあるものの、命に別状はないということです」
すると、電話の向こうで耳を澄ませていたらしい母親が、不意に大声で泣き出すのが聞こえた。それを聞いて大津は思った。死んだかもしれないという報にはぐっと耐えていた母親が、無事と知らされたとたん泣き出す。これはもしかしたら、日本の女性に独特のことかもしれないな、と。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そうした中で、ここ数年の行き詰まりがあったのかもしれないのだ。K2の南南東稜からのソロを称賛してくれる人も少なくないが、自分でそれが大したものではないことがわかっていた。ここ数年、能力も気持も少しも高まらないで、平行線をたどっていた。このままズルズル行ったら「やばい」ことになるかもしれないというかすかな不安があった。だから、もしかしたら、ギャチュンカンの事故は起こるべくして起きたと言えるのかも知れない。たとえ、そこをうまく擦り抜けても、次に起きていたかもしれない。

『人の砂漠』 ルポルタージュ

2009-03-24 16:07:54 | book
著者:沢木耕太郎

【内容】
一体のミイラと英語まじりの奇妙なノートを残して、ひとりの老女が餓死した―老女の隠された過去を追って、人の生き方を見つめた「おばあさんが死んだ」、元売春婦たちの養護施設に取材した「棄てられた女たちのユートピア」をはじめ、ルポルタージュ全8編。陽の当たらない場所で人知れず生きる人々や人生の敗残者たちを、ニュージャーナリズムの若き担い手が暖かく描き出す。


【感想】
すごーーーーく興味深かったし面白かった。ずっしり面白い。
この本が出た後に書かれたエッセイを以前読んでいて、そこにもこの本の中に収められてるルポのことが引用されてたりして、あぁこのことか、と思った。
後に沢木は「ノンフィクションとは」「ジャーナリズムとは」「ニュージャーナリズムとは」「取材とは」といった彼自身の考えをしつこく文章にしていて、ルポを書く者にとってトコトン取材するというのは当たり前で何も自分だけが『地を這うような取材』をしているわけではない、などと言っているが、やっぱり取材というか、取材を通じての当事者との関わりがすごいんだろうなと思わされる。
私はジャーナリズムもニュージャーナリズムも正しくは理解してないししようとも思ってないけど、前に読んだ沢木のエッセイに書かれてる両者の特徴からすると、特に冒頭のルポ『おばあさんが死んだ』は、おばあさんの日記やおばあさんの生きてきた軌跡を追って描かれていてまるで小説を読んでいるかのようで、これはニュージャーナリズムになるんだろうな、と思った。
でも虚飾はないから小説ではない。ニュージャーナリズムが陥りやすい誘惑には落ちていない。

・・・と思う。

『チェーン・スモーキング』 エッセイ

2009-03-24 16:04:36 | book
著者:沢木耕太郎

【内容】
古書店で手にした一冊の本に書き込まれていた言葉。公衆電話で演じられた人生の一場。深夜にタクシー・ドライバーと交わした奇妙な会話。…エピソードの断片はさらなるエピソードを呼び寄せ、あたかもチェーン・スモークのように連鎖しながらひとつの世界を形づくる―。同時代人への濃やかな共感とともに都会の息遣いを伝え、極上の短篇小説を思わせる味わいのエッセイ15篇。


【感想】
一番驚いたのは、沢木耕太郎はノン・スモーキングの人であったということ。
ずいぶん昔に本屋でこの本のタイトルを見た印象からか、沢木氏はタバコも酒も嗜む人だと思っていた。
バーでお酒を飲みながら葉巻、みたいな。

沢木氏のエッセイは好きだ。これまで読まなかったのが惜しいくらいだが、きっと今だからそのよさも分かるのだ、と思う。
恐れ多いことだけど、人間を大雑把に分類するとしたら、私は彼と同じところに分けられるのではないかと思う。

どんな人生を送っているかといった意味ではもちろん全然違うのだけど、なんというか、使う言葉に親近感を持つ。頭の中で浮かび、頭の中だけで消化されていく考えにおいて使う言葉たち、それをよく彼の本の中で見かける。

「シナイの国からの亡命者」というタイトルでのエッセイの中で出てくる、「『自制の王国』の住人」という言葉を見、氏自身は『放恣の王国』の住人ではなく『自制の王国』の住人であり、且つ、いつの頃からか『自制の王国』からの亡命を望みはじめているに違いない、と書かれているのを読んで、思いを強めた。

沢木氏の本を読んでいると、ひっかかる文章が多々あって面白い。その都度読むのを一時停止して考えを巡らす。贅沢な読書である。

『ぐるりのこと。』 DVD

2009-03-24 15:18:17 | movie
監督:橋口亮輔
主演:木村多江、リリー・フランキー

【ストーリー】
1993年7月。ふたりの部屋のカレンダーには「×」の書き込み。妻・翔子(木村多江)が決めた週に3回の夫婦の「する日」の印だ。しかし、その日に限って、靴修理屋で働く夫・カナオ(リリー・フランキー)の帰宅は遅い。女にだらしないカナオが遊び歩いているのでは? 彼の手の甲をぺろりと舐め、浮気かどうかチェックする翔子。カナオは先輩の紹介で、新しく法廷画家の仕事を引き受けてきたところだった。「はあ!? 靴屋は? とにかく……決めたことやってから話そうか」苛立った様子で寝室へ消える翔子。カナオはぼやきながら、渋々寝室へ入っていく。

ふたりはどこにでもいるような夫婦。翔子は女性編集者として小さな出版社でバリバリ働いている。一方、カナオは法廷画家の仕事に戸惑いつつ、クセのある記者・安田(柄本明)や先輩画家らに囲まれ、次第に要領を掴んでいく。職を転々とするカナオを、翔子の母・波子(倍賞美津子)、兄・勝利(寺島進)とその妻・雅子(安藤玉恵)は好ましく思っていない。しかし、そんなカナオとの先行きに不安を感じながらも、小さな命を宿した翔子には喜びのほうが大きい。「お、動いた!」カナオと並んで歩く夜道で、翔子は小さくふくらんだお腹に手を触れる。カナオのシャツの背中をぎゅっと掴んで歩くその後姿には、幸せがあふれていた──。

1994年2月。ふたりの部屋に掛けられたカレンダーからは「×」の印が消えている。寝室の隅には子どもの位牌と飴玉が置かれていた。初めての子どもを亡くした悲しみから、翔子は少しずつ心を病んでいく。

法廷でカナオはさまざまな事件を目撃していた。1995年7月、テレビは地下鉄毒ガス事件の初公判を報じている。産婦人科で中絶手術を受ける翔子。すべてはひとりで決めたこと、カナオにも秘密である。しかし、その罪悪感が翔子をさらに追い詰めていく。

1997年10月、法廷画家の仕事もすっかり堂に入ってきたカナオ。翔子は仕事を辞め、心療内科に通院している。台風のある日、カナオが家へ急ぐと風雨が吹きこむ真っ暗な部屋で、翔子はびしょ濡れになってたたずんでいた。「わたし、子どもダメにした……」翔子は取り乱し、カナオを泣きながら何度も強く殴りつける。「どうして……どうして私と一緒にいるの?」そんな彼女をカナオはやさしく抱きとめる。「好きだから……一緒にいたいと思ってるよ」ふたりの間に固まっていた空気が溶け出していく──。


【感想】
愛と再生の物語。
前半は、まだ何の問題も起こっておらず、生まれてくる子供も含めて希望に満ちたストーリー。

場面転換し、部屋に静かに置かれた位牌。
静かで脆く、いつ壊れてもおかしくないような空気。
凪のように穏やかに、そっといつも翔子に寄り添うカナオの優しさにグッとくる。

翔子が泣きながらカナオにぶつける「ちゃんとしたかった」という言葉がすごく印象的だった。
うつ状態になる翔子の描かれ方、木村多江さんの演技がリアルで、監督自身がうつを経験したからこその描写だなぁと思わざるをえなかった。
翔子自身が一番、理想と現実の落差に耐えられないんだろう。理想というか、「ちゃんとした」状態というか。
ちゃんとしてない自分をどうにかしたい、こんな自分なんか、、と思うからこその
「どうして私と一緒にいるの?」

木村多江さんとリリー・フランキー。とりたてて目立つわけでもない二人。
カナオの人柄が、演じるリリーのまるで緊張感のない身体にぴったりでした。褒め言葉です。


翔子演じる木村多江さんがカナオに泣きながら想いをぶつけるシーンが、ほんっと上手かった。木村さん過去にそういう状況に陥ったことあるんですか!?と言いたくなるほど。役者ってすごいなぁ。


結構チョイ役に「おっ」と思わせる人が多く出てくる。加瀬亮、田辺誠一、新井浩文、菊池亜希子etc。


橋口監督は前作「ハッシュ!」の評価がよくて、次を期待してましたが今回の作品に至るまでに6年もかかりました。
「ハッシュ!」の前は「渚のシンドバッド」。これは浜崎あゆみ目的で観ました。どちらも主人公はゲイでした。監督自身すでにカムアウトしてます。
でも「渚のシンドバッド」は高校生が主人公で、決してゲイを普通の日常とした上でのストーリーではないので、やっぱり作品として面白いのは「ハッシュ!」だと思う。


今年の日本アカデミー賞は、とにかく「おくりびと」が独占みたいな感じだったけど、主要部門で唯一主演女優賞だけは、本作の木村多江だった。
もし主演が広末さんだったら完全に日本アカデミー賞を信用しなくなるところだった。


後にリリーさんが、翔子を演じた木村多江さんが最優秀主演女優賞に選ばれたことについて、「まさか受賞するとは思っていなかった。吉永小百合さんらと並んで、翔子が貧乏臭く立っているだけで涙が出そうだった」と冗談まじりにコメントしていて、笑ってしまった。

ダマスカスでの平穏な日々

2009-03-24 10:22:46 | journey
(旅期間:08.5.26~08.6.16)

早いもので、明日の夕方の便で日本に帰ります。
到着は月曜の夜。
早いものでとは言ったものの、いつものことながら何度も"帰りてー"って思いました。

今はまたダマスカスにいます。
リベンジパルミラ?ノン。
GO TO アレッポ?ノン。
私は中東一の癒し都市と言われてるらしいハマよりもダマスカスの方が好きです。
毎日特に何をするでもなく、スークをぶらぶら歩いていつもの雑貨屋で水買ってここらへんで一番安い店でシュワルマを食べてたまにモスクに入って休み、宿の人とチャイを飲んだりお菓子屋のおじさんに手を触られるかわりにつまみぐいをさせてもらったり、そんなゆるい日々です。

今回、本を2冊持ってきました。読んだら捨てればいいと思ったので直前にブックオフで。
伊坂幸太郎がよかったんだけど彼は今人気らしく、いくつかのお店をまわっても在庫がありませんでした。
そこで手にしたのがリリーフランキーの"ぼろぼろになった人へ"と沢木耕太郎の"地図を燃やす -路上の視野3"。

"ぼろぼろになった人へ"は、正直こんな内容の本だとは思わなかった。ぼろぼろになった人を癒すような内容だと思ってたけど、実際はシュール。そして少しエロい。短編がいくつか入ってるんだけど、その中の一つは少し前に深夜に"週刊 真木ようこ"という番組で映像化されたものの原作でした。あー、リリーさんが原作だったんだ、となんともストレートな感想を抱きました。
この本は1度読んでさよならしました。物語ゆえ、読み終わってすぐに読み返そうという気にならないから。

もう一冊の"地図を燃やす"。面白い!イエメン滞在中に1度読んでしまったのですが、昨日もう1度読み返してしまいました。ドーハでのトランジットで5時間待ちしなきゃならないのでまた読むつもりです。
沢木氏といえば"深夜特急"。中学生ぐらいの頃私も読み、それ以来大好きな本です。あの本を"紀行文"に分類していいとしたら、彼の旅は結構硬派だよなーと思う。他の旅本と比較すると結構。彼の旅が、というより彼の人間性と表現の仕方の問題かも。
で、"地図を燃やす"の中身ですが、旅後に彼がまたルポライターとして仕事を再開したときに書かれたものです。短い文章がいくつも。
前半では要所要所でかつての旅を振り返ったりそこで得た感覚が描かれていたりして、"深夜特急その後"もしくは"深夜特急こぼれ話"みたい。
後半は主に、沢木氏がいかにしてルポライターになったのか、ルポルタージュとは、について書かれている。
こっちも面白い。
"路上の視野"シリーズがあるみたいだから、帰国したら1と2も是非読んでみたいと思った。

私は3週間という短いようで長いようでやっぱり短い旅だったのでこんなことを言っていいものか分からないけど、本に書かれている沢木氏と同じ感覚を持ったことが度々ありました。


今回は、去年砂漠で感じたような圧倒的な影響力と自分が変化した感覚、というのは味わってないと思う。
ここにも人がいて、生活があって、ただ文化とか生活スタイルとか価値感が違うだけ。
名所旧跡を巡るような旅より限りある日数の中で少しだけでも街や人と馴染んでいく方が私は好きです。
でもそれよりも、人の力が無力だと思えるような圧倒的な自然の中に立ってみるほうが好きです。
てことでやはりいつかウユニ塩湖に行きたい。
そしてまた砂漠に行きたいと思いました。こだわりや物欲をあそこにだいぶ置いてきました。
今もし10日あったら、カサブランカ空港到着後に最短ルートでサハラまで行って、動くことができない暑い日中は持参した本を読み、日差しが弱くなってきたら砂漠に遊びに行き、星が出てきたら屋上に寝転がって眠くなるまで流星を探し続ける、観光なしの砂漠オンリーの日程がいいです。

時間はあるけど金はねぇ。帰国したら一文なしです私。おほほ。本当に。日銭を稼いで友達に会いに行かなきゃ。ビールが美味しい季節になりますね。

こっちでも頭の中に余裕が出来たときにちょこっと考えたけど、将来のことも考えないと。色々含めて。
22歳の時とは違うし、去年の私とも違う。やりたいことも違えば自分に適してると思うことも違う。生きて行くのが最低、最高、最小、最大の目標だな。


日本に戻るのが楽しみです。こっち、乾燥し過ぎてて肌が死にました(笑)
カップラーメンが食べたいです。"地図を燃やす"で出てきたのです。あと美味しいコーヒー。関空着いたら本屋で本を買って、とりあえずスタバに直行です。


(ダマスカスの街と人)



(ダマスカスのモスク。モスクはイスラム教徒以外立ち入り禁止のところが多い。中まで入れたのは初めてだったのでいい経験をした。)