数学の用語が、日常に使われるのは、喜ばしいのだが、正確でない使われ方や中途半端な使われ方をすると、今度は、逆に、数学を学ぶ時に誤解が出てしまい困る。
例えば、「期待値が上がる」である。アナウンサーやコメンテーターが使っているのを聞いたことがある。おそらく、「期待が大きくなる」「期待が膨らむ」の意味で使っていると思われる。
「期待値」とは、例えば、ふつうのサイコロの場合、出る目が1,2,3,4,5,6でそれぞれの確率が1/6なので、1*(1/6)+2*(1/6)+3*(1/6)+4*(1/6)+5*(1/6)+
6*(1/6)=7/2つまり3.5が期待値となる。出る目と確率をかけて足したものである。
したがって、サイコロを何回振ろうが(投げるではなく、振る)、期待値は変わらない。「期待値」は基本的に上がり下がりするものでない。
期待値は新指導要領で数学Aから消えてしまい、ますます誤解されていくのであろうな。
あと、「ベクトルを揃える」も謎である。社長が
「社員のベクトル揃えて」などというのを聞くが、「向きを揃えて」ということであろう。
「ベクトル」は、高校では「向き」と「大きさ」をもつ量と定義するので(他にも定義がある)、ここからの言葉だと思うが、「ベクトルを揃える」ということは、向きだけでなく、大きさも等しくすることになる。それでいいのか、社長?
数学ではないけど「A級戦犯」ていうのも、誤解されているのも嫌だな。
わざわざ難しい言葉を使って、間違えて使うこともあるまいに。