ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【IED?】難波先生より

2015-11-23 15:35:43 | 難波紘二先生
【IED?】

(Fig.1:11/19ロイター記事掲載のIED爆弾)
 11/18日本語Google NewsがISの広報誌に掲載された「シナイ半島上空でロシア旅客機爆墜に使用した爆弾」と称するものの写真を転載している。(Fig.1はロイター日本語版の写真だが、英語説明にもIEDという略号が使われている。)
 日本語の報道では<「簡易爆弾(IED)」>となっていて、これが何のことかわからない。空港などの壁に取り付けてある「AED」(自動体外式除細動器)のことかと思った。
 司馬遼太郎はつねづね「日本の知識人は軍事に関する知識が乏しい」と嘆いていたが、それもむべなるかな、日本のメディアはこの爆弾について具体的な説明を全くしていない。仕方がないので、NYTの英語報道を読みに行った。
http://www.nytimes.com/live/paris-attacks-live-updates/a/
 それでやっと「IED」は、スペルアウトするとImprovised Explosive Deviceだとわかった。Improvedだと「改良され、進歩した」の意だが、Improvisedだと「間に合わせの、即興的な」という意味になる。
 本文が日本語でも横組みであれば、読者はスペルアウトがあれば、略号の意味がすぐわかり「簡易爆弾」という訳が正しいかどうかの検証も可能なのに、有料の日本語新聞にそれができなくて、無料の英字紙を読まなければならないとはおかしなことだ。
 NYTは複数の「経験ある爆弾処理技術者」に写真を見せて意見を聞いたそうだ。それによると彼らは異口同音に<爆弾には何も新しいところはなく、熟練した爆弾製造者なら作るのは易い。右に見える黒いテープで被われた塊とそこから伸びたワイヤーとその端にある棒は、写真中央の「起爆装置」をコントロールするスイッチとバッテリーと小型送信機だろうという。タイマーが仕組まれている可能性もあるそうだ。
 左の缶は底に穴が開けられており、白いものが見えているので、たぶん液体性の爆薬ではなく、固体のパウダーの爆薬だろうという。この缶の容量からみて、軍用の標準的手榴弾よりも多くの爆薬を詰めこむことができ、爆発すれば旅客機を撃墜するに十分な能力がある。>と報じている。
 要するに缶の底に穴を開け、そこから爆薬を詰めて、その中に写真中央にある棒状の起爆装置を差し込み、付着したひも状部分を外に出し、右端の装置の電源や発信機で起爆装置を作動したのであろう。タイマー式だったか、地上からの電波式だったかは現時点では不明だ。
 11/19「産経」のモスクワ支局からの報道によると、墜落した旅客機の残骸の機体後部客室に径1mの床の穴があり、爆発物は座席下に仕掛けられていた可能性があるという。

 もうひとつ11/16「産経」がパリの同時多発テロ事件で自爆した犯人が使用した爆薬を「ベストに仕込んだTATP爆薬」と報じていたが、これもTATPについての解説報道がない。スペルアウトもない。ネットで「TATP」を検索すると、「過酸化アセトン(Acetone Peroxide)」の一種でTri-Acetone Tri-Peroxideだとある。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%8E%E9%85%B8%E5%8C%96%E3%82%A2%E3%82%BB%E3%83%88%E3%83%B3

 これはアセトンと過酸化水素があれば容易に合成できるそうだ。反応液の底に白色結晶として析出してくるそうだ。く単量体(モノマー)は溶液だが、二量体(ダイマー)、三量体(トリマー)になるにつれ融点が上がり融点は91℃(モノマーの場合)だという。威力はTNT火薬の70〜80%だとある。(TNTはトリニトロトルエンの略で、有機溶媒のトルエンと硝酸を反応させて作る。)
 アセトンも過酸化水素も薬局で簡単に入手できる。事実私の家にも置いてある。低温下に混合して、反応が十分に進み底に白色結晶が析出してくるのを待ち、それを回収すれば三量体か四量体が得られるので、製造は容易だろう。私はこれまで爆薬には窒素化合物が必要とばかり思いこんでいたが、TATPという爆薬があるとは知らなかった。こういうこともきちんと「解説報道」してほしいと思った。
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