ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【腎がん追加】難波先生より

2013-06-06 12:09:26 | 修復腎移植
【腎がん追加】この件について、大阪の中峯先生、宇和島の近藤先生から情報をいただき、自分でもPubMed論文を少し読んだので追加したい。
 1)<「HCV感染と腎細胞癌発生とには正の相関があり,その相対リスクはHCV感染vsリンパ腫発生の場合と同様」との記載がありました. http://cebp.aacrjournals.org/content/19/4/1066.full.pdf+html  >
 この論文:SC Gordon et all.(2010): Risk for renal cell carcinoma in chronic hepatitis C infection. Cancer Epidemiol Biomark & Prev

19: 1066- を私も読みました。
 デトロイトのヘンリー・フォード病院からのもので、18歳以上の労働者で健康診断の際にHCVの検査を受けた67,063人を追跡調査したら、A)3,057人の陽性者では17人(0.6%)、B)64,006人の陰性者では177人(0.3%)腎細胞がんが発生したというものです。
 A群の平均年齢は52歳、B群は48歳ですが、それぞれの群の性比が記載してありません。白人と黒人などの民族差も記載がありません。腎細胞がんは黒人に多く、高齢者に多いのは常識ですから、これらが記載してない論文はジャンク論文だと思います。
 もしHCVで腎細胞がんが発生するのであれば、インターフェロン注射で予防できるはずです。この「介入疫学」のデータがありません。


 2)もう一方のコメント:
 <この一年、私の知人が二人突如ヘパトーマ(注:肝がん)で死亡しました。
一人は、軽いNIDDMで、かつてはお酒は好きでしたが、ウイルス・タバコなしの元高校教師の模範老人でした。
  もう一人は、多発性硬化症でステロイドは使ってましたが、ウイルス・タバコ・お酒なしのおばあさん。
 あっという間に大きなヘパトーマ。ショックでした。-- >


 NIDDMは「インシュリン非依存性(NID)糖尿病(DM)」つまり2型糖尿病のことですね。
 タバコはリスク要因だと教科書に書いてあります。さあ、50年以上喫煙を続けている私が腎細胞がんになるかどうか、楽しみですね。ブリンクマン指数(BI)だと20本X54年=1,080は確実に超えていますから。(BI=日の喫煙本数X喫煙年数のこと)


 昭和天皇の十二指腸がんを病理診断した東大病理の浦野順文教授は肝がんで亡くなりました。当時、東大の停年は60歳で在職中の死亡だった。お酒はよく飲まれたが、タバコは嗜まなかった。骨髄病理が専門で、血液病理という「業界」がらいろいろ親しくしてもらいました。奥さんが小児科医で「新潮45」に手記を書いています。


 3)日本の泌尿器科医による腎がんの疫学的論文を3本ほど読みました。
 全国統計はいずれもアンケート調査によっており、確実な地域がん登録データを元にした推計でなく、実数が過小評価されていると思います。「広島県腫瘍登録データ」を元にした難波=堤推計の方が信頼がおけると思います。
 *難波、堤(2008):再考レストア腎移植3.世界的ドナー不足とその対処法:各国の動向. 医学のあゆみ, 224(12): 963-7970


 *慶応大の丸茂ら(2007)は47都道府県の1288の病院を調査し、腎細胞がん患者は1997年の6,358人から、2002年には7,405人に増加したとしている。5年間に16.5%、年率3.3%の増加である。ただ厚労省の死因統計の上で、「腎臓がん特異死亡率」は過去10年間増加していないことを付け加えている。
 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11442657


 *秋田大学の佐藤ら(2005)は、関連38透析施設の1998~2003年の患者6,201人を調査。腎細胞がん(RCC)が38例(0.61%)、移行上皮がん(TCC)が16例(0.265)に発生したと報告している。この0.61%という値は、ゴードンらがHBV陽性患者に腎細胞がんが発生するとしている率と変わらない。腎細胞がん発生までの平均透析期間は143ヶ月(約12年)。
 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16217276


 オーストラリア・ニュージーランド(両国はがん登録データ、移植登録データなどを共有している)のデータと比較すると、日本の透析患者ではRCCがより高率に発生している、と述べている。
 この論文も、大学医局出身あるいは派遣先病院について調査したものであり、秋田県の人口を対象としたものでない。従って「年齢調整発生率」や地区特異性など重要な疫学的データが漏れている。日本の泌尿器科の研究レベルはこの程度だと云うことを病理学者は知っておく必要があろう。


 なお透析腎がんについては金沢医大内科の石川勲が、やはりアンケート調査法で、透析歴10年以上の患者の場合発生率が10万人あたり340人と、きわめて高率になることを報告している。25~45歳の若年者では腎がん発生リスクは一般人の200~500倍となる。(このリスクは腎移植を行い透析を離脱すると、嚢胞化していた腎臓が退縮し瘢痕化するので消滅する。) 
 *http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=Ishikawa+I%2C+2002%2C


 いま、気がついたのだが、日本には透析患者が約30.5万人いる。およそ15万人は10年以上生存している。このHCV陽性率は一般人口に比べ、どの程度高いのであろうか?またがん疫学データに、「透析患者に腎細胞がんが多発する」という背景はどの程度反映されているのであろうか? 腎がんの年次統計には透析腎がんが含まれているから、透析患者が増えれば、他の要因が寄与しなくても腎がんが増える。ことに若年性腎がんが増えるのは当然だと思われる。


 広島県の人口は現在約285万人、日本の人口は約1億2,500万人で、およそ1/44が広島県に住んでいる。2006年に広島県で発生した腎がんは283人であり、44倍すると全国で12,452件の腎がんが発生していることになる。(この値は慶応大の丸茂らのアンケート調査による2002年の推計値7,405件の1.68倍である。)


 広島県のがん登録でも「透析腎がん」という集計項目がない。しかし透析患者の0.61%に腎細胞がんが発生するという佐藤らのデータを適用すると、広島県の7,202人の慢性透析患者から43.9件の腎がんが発生することになる。広島県の透析患者数は日本全体の42.3分の1だから、全国に換算すると1857.0人の腎がんが発生する。これが10年間に分布すると仮定すると年に、広島県で4.4人、全国で186人となる。広島県で腎がんの1.5%、全国でも1.5%を占めることになる。


 日本の透析患者数が多い自治体は、東京都、大阪府、神奈川県、愛知県、埼玉県、北海道、福岡県、千葉県、兵庫県、静岡県の順であり、東京都では約3万人が透析を受けている。


 こう見てくると、「世界的腎がんの増加」という統計数値には「透析腎がんの増加」という項目が抜けているために、普通の腎がんが増加していると誤解されているのではないか、と思えてくる。つまり透析患者は毎年1万人ずつ増えているのだから、その分だけ腎がんも毎年増えるのであろう。


 透析腎がんを減らすには、腎移植を増やすしかない。
 堤=難波推計では、全国で毎年2,664個の「小径腎がんをもつ腎臓」が全摘されており、これをドナー供給源とすれば非常に多くの透析患者を救うことができる。医療費の節約だけでなく、患者のQOLを向上させ、同時に腎移植に対する理解も深まる。頑迷な移植学会指導者はどうせ裁判で負けるだろう。
 裁判の当事者でない泌尿器科医や移植医には着実に支持者が拡がりつつある。
 しかし、問題は万波誠が元気で腕をふるっているうちに、この技術を全国に普及させることだ。はやく先進医療から保険医療へと道筋をつけることだ。
 メデイアの方々にもぜひ頑張ってもらいたい。私もがんばります。
 元香川労災病院の西先生もがんばっている。
 http://sankei.jp.msn.com/region/news/130604/ehm13060402020000-n1.htm

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