ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【献本お礼】難波先生より

2018-01-15 14:56:30 | 難波紘二先生
【献本お礼】「医薬経済」1/1号(医薬経済社)の贈呈を受けた。お礼申し上げます。
本号ではトップ記事「OBSERVER」に元九大理学部助教・広津崇亮氏が「線虫でがん診断」というトピックで登場していてびっくりした。
 彼の研究については「ヘルス・プレス」というネット紙に、2015/3/23付で疑問を投げかけておいた。http://healthpress.jp/2015/03/post-1662.html
 疑問点は主に二つある。
 第一は線虫が「がんを臭いで判別できる」とすれば、すべてのがんに共通した化学物質がなくてはならない。「臭いの素」とは要するに単純な化学物質のことだ。がんかどうかは、細胞が浸潤・転移能力をもつかどうかで決まる。発生源と直接の関係はない。
 「がん」というのは、人間が腫瘍のふるまいを見て、頭の中で形成した概念にすぎない。それなのに広津氏は、「がん」という客観的実体があるかのように錯覚しているようだ。
 第二は、線虫はたった1000個の体細胞からなり、うち臭いを感じる嗅細胞は3個にすぎない。それがなぜ、どうして、線虫にはない「がん細胞」を特異的に識別できるのか?AWA、AWB、
AWCという3種の嗅細胞を遺伝子工学により特異的に抑圧したら、がんの識別性が失われるという対照実験があれば信頼性が高まるだろう。しかし、今のところそういうデータもないし、線虫が「識別する」と主張されている分子が、クロマトグラフィー上、どういう分画に属しているかの報道もない。
 「Hirotsuバイオサイエンス」と日立が共同で「線虫による尿のがん自動診断装置」の開発を始めたそうだ。まあ、これも続報を期待したい。

<1/12追記1> 1/12「毎日」科学欄の記事が、「犬の嗅覚でがんを発見する」という記事を載せていて、たまげた。同紙の「科学欄」は、2014年の「STAP細胞報道」からオカルトめいて来たなと思っていたが、まさか「犬で線虫の後追い」をするとは思わなかった。
 「すべてのがんに共通し、がんだけにある化学物質があり、それが特異的に犬の嗅覚を刺激する」という証拠があれば、信じもしようが、研究者と自称する人物の出してきたデータを追試もしないで「99.9%の的中率」と報道するとは…
 サーカスの芸に「馬が数を数える」というのがある。調教師があらかじめ観客に向かって、「5まで数えさせます」という。彼が合図すると馬は右前足でゆっくりと床を叩く。5まで行くと叩くのを止める。こうして10でも18でも馬は数えるから、観客はすっかり信じてしまう。(新聞記者と同じだ。)あれはこっそりと調教師が「叩くのを止める時」の合図を送っているのだ。
 犬は馬より利口だから、飼い主(実験者)の表情を読むことができる。そのあたりから疑って報道してもらいたいものだ。

http://www.sankei.com/world/news/180111/wor1801110025-n1.html
「読売」http://www.yomiuri.co.jp/world/20180111-OYT1T50094.html
「朝日」https://www.asahi.com/articles/DA3S13309285.html
と「日経」https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25569860R10C18A1FF2000/
のみが報じている。自宅で購読している「中国」には3面の小さな二段記事で載っていた。「毎日」には載っていなかった。本来なら1面で扱うべきだと思うが、記事の不掲載紙は何に忖度したのだろうか…
 総合月刊誌などの報道によると、2014/8の「朝日」記事撤回(慰安婦報道と福島第一原発事故)で吉田のウソだらけの人生が明るみに出た。以後、長男は父の所業が相当に心の負担になっていて、元自衛官に謝罪碑の撤去を依頼したようだ。
 元もとこの謝罪碑の撤去は、相続人である本人が韓国のしかるべき弁護士に依頼し、法的な手続きをちゃんとしていれば、事件にはならなかっただろうと私は思う。

 「医薬経済」の記事に戻る。
 「鳥集徹の口に苦い話」、<厚労省から飲食業界に、万病の元『糖尿病』予防を促せ>は面白かった。「文藝春秋」12月号の同氏の論文「東大医学部の落日」はインパクトがあり、医師専用サイト「M3」でも大いに反響を呼んだ。受験秀才ばかり集まった結果、東大には臨床の腕が立つ医者がいなくなり、東京圏の医大には東大医学部出身の教授がほとんどいなくなったという事実が書いてある。
 今回の「口に苦い話」は昼食用の飲食店やファミレス、夜の居酒屋には炭水化物過剰のメニューがいっぱいで、糖尿病の温床になっている。厚労省が本気で「がんの予防」をねらうなら、「万病の元」である糖尿病を予防し、「がんの一次予防」のため、レストランのメニューをヘルシーに誘導することが大事だと主張している。実に正論で、これを「文藝春秋」で読みたいものだと思った。


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