ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【魚に水は見えない】難波先生より

2014-03-31 18:46:55 | 難波紘二先生
【魚に水は見えない】
 昨3/28は9時前に自宅を出て、広島市の病院に行った。前からお世話になっているかかりつけ医が医局人事で呉から広島の病院に転勤になったためだ。
 いつもは山陽自動車道を利用するのだが、久しぶりに国道2号線を走り、海田のあたりから広島市を見て驚いた。山陽自動車道が広島市を見下ろす位置に来たとき、市の上空がすっぽりとスモッグに覆われているのはおなじみだが、昨日はもっとひどかった。西の己斐の山々は見えないし、南の黄金山や比治山も霞んでいる。市内に入ると、ひどい車の渋滞だ。
 黄砂の影響もあると思うが、それなら東広島市もわが福富町も同じように霞まないといけない。広島市を包む汚染した空気の原因は、黄砂、工場排煙の順に除外して行くと、自動車の排ガスがまず残るだろう。
 1987年に北京を初めて訪れたとき、街を走っている車はまばらで、ほとんどが公用車かタクシーだった。人は歩くか自転車に乗っていた。あの頃、大気汚染の気配もなかった。今テレビで見ると、道路が車だらけになった点が大きく違う。

 ともかく混雑する市街地を抜けて、市の北側にある病院に行った。睡眠薬とリーマスをもらって、帰路、コンビニに雑誌や弁当などを買いに寄った。店員の女の子ふたりが大きなマスクをしていた。
 「接客業の人があんな大きなマスクで顔を隠すとは…」とつぶやいたら家内に、
 「いま花粉症で大変なのでしょう」といわれた。
 花粉症の場合、眼にも症状が出る。結膜の充血、涙、目脂などだ。二人とも眼にその症状はなかった。ひょっとしてPM2.5の除去に有効とされるマスクではないかなと思う。
 帰宅して「おかずだけの弁当」を食べながら地元紙を読んだら、広島県の「がん対策推進条例案」に受動喫煙を防ぐため、「通学路に禁煙エリア」を設けるという記事が載っていて、大笑いした。あれだけ汚れた空気を吸っていて、「通学路のタバコの煙を意図せず吸い込む受動喫煙」を防ぐだと。
 1960年代に私が初めて「アレルギー」について医書を読んだとき、「花粉症」という名前がなく「枯草熱」として、外来植物であるブタクサ花粉のアレルギーが載っているだけだった。それが今では杉、松、ブナ、稲、蕎麦の花粉までが原因にされている。
 自宅のバルコニーのテーブルにはこれらの花粉が季節時には色が変わるほど溜まるが、家族に花粉症のものはいないし、住民に患者がいるとは聞いたことがない。
 「ひょっとすると、空中を浮遊する花粉が都市の空気中の化学物質に触れて、変化したものが花粉症を引き起こすのではないか?」という考え方もよぎる。
 それはともかく人間の感覚はすぐ麻痺するから、空気が汚れた広島市に入ってしまうと、すぐそれを意識しなくなる。魚が水を意識しないのと同じである。ことに室内にいると、その空気が汚れた大気の延長だなどとは信じられない。そこでつい目につくタバコの煙に意識が向かう。これは錯覚の一種だろう。
 水の中にいて水が見えるにはどうするか。己斐の山から黄金山の通信塔に向かって青いレーザーの探照灯を向ければよいのである。
 すべての微粒子は空気中でブラウン運動をしているが、小さすぎてその運動は眼には見えない。これを可視化するのが「ティンダル(チンダル)Tyndall」現象で、昔の映画館で投影光が光の柱として見えたのは、汚れた空気が光を散乱させるためだ。
 空気がまったく汚染されていなければ、光は途中で散乱されず、「光の柱」が見えない。
 サーチライトは毎晩つける必要はない。週に一度曜日を定めて、くっきりとした光の柱が夜空を貫くのを見れば、毎日吸っている空気がいかに汚染されているか、誰でも実感できるだろう。その上で「本当に有効ながん対策」を考えてほしいものだ。
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