【書評など】
1)エフロブ「買いたい新書」の書評No. 326に見延典子「汚名」(本分社)を取り上げました。
古い話だからご記憶にないかもしれないが、著者は早稲田大学文学部の卒論として書いた小説「もう頬づえはつかない」(講談社、1978)が出版されると、いきなり50万部の大ベストセラーになったという経歴を持つ。その後、結婚して広島市に移住し、ときおり地元紙「中国」の紙面でエッセイなどを読む機会があったが、本格的な作品は読まなかった。
明治維新とその後の31年は、森永卓郎(監)「物価の文化史事典:明治・大正・昭和」(展望社、2008)を開けば、政治的大動乱期であっただけでなく、通貨制度の変更や制度や税金制の導入など社会経済的にも大変動が起こったことがわかるが、当時の庶民にどういう生活体験があったのかは見えてこない。小説だがノンフィクションに近く、人物は仮名になっているが、モデルはすべて実在の人物らしい。
広島藩士の平野真太郎は長州戦争で財政難に陥った広島藩の勘定奉行半田に命じられて、偽金作りの監督をしたことがある。当時は、幕府が発行する正式の硬貨以外に藩札があったが、外国から武器を調達するのに、金貨・銀貨を偽造するほかなかった。石見銀山が北にある広島藩では川から砂金がとれた。その後、真太郎は洋学に志し、福山藩の医師寺久保の元で医学修業をする。寺久保は「人が生きるには、衛生と資産と品行」の三つが最も大切だ、「医師ではなく医者になれ」と教える。やがて明治維新となり、広島藩と福山藩は統合され「広島県」となった。真太郎は広島市の宇品港の近くで開業する。
医師としては順調だったが、妻子をコレラで失った真太郎は、失意の中、最新の医学を研修しなおそうと医院を閉め老母を残して、東京の順天堂病院に留学する。主に外科を学んだ。元勘定奉行の半田は偽金作りの刑罰に服した後、東京にいた。半田と真太郎の交流が復活する。
やがて真太郎は内科だけなく外科の必要性を痛感し、上京して順天堂病院の関連病院で外科医としての修業をする。二代目の広島市長には「偽金作り」という汚名をもつ半田が就任し、真太郎は主治医としてのアドバイスも行う。広島市の上水道完備に半田が尽力し、医療に最も重要な、師寺久保医師が教えてくれた「衛生」が実現する通水式の光景はまことに感動的です。
以下はこちらに、
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1466147602
★来週の「解体新書」はNo.327:吉見俊哉「<文系学部廃止>の衝撃」(集英社新書、2016/2)を取り上げます。詳細はこちらをご覧下さい。
https://www.google.co.jp/search?hl=ja&source=hp&q=%E8%B2%B7%E3%81%84%E3%81%9F%E3%81%84%E6%96%B0%E6%9B%B8&aq=f&aqi=g-s1&aql=&oq=&gs_rfai=&gws_rd=ssl
2)献本など
★「医薬経済」6/15号のご恵送を受けた。お礼申し上げます。
今号でも、鳥集徹の「口に苦い話:媚びないジャーナリストの劇薬処方箋、No.16<誰のため>の臨床研究か、法案を議論の契機に」が抜群に面白かった。ディオバン事件のデータ改ざんを受けて、「臨床研究法案」が、次期国会への上程を目指して厚労省で審議中だという。
鳥集氏は<患者の利益のために臨床試験をするという意識がこれに関与する医師にあれば、いい加減な研究デザインはできないし、データの改ざんや結果のねじ曲げという非良心的なことはできないはず。そういう哲学が日本の医療界に根付いていない。>(大意)という。
同感だ。
★★京都府向日市(むこうし)にお住まいの豊田紘一先生から、
「医歯系学生のための物理学入門」(永末書店、2016/6) をご恵送頂いた。厚くお礼申し上げます。同書の内容説明はアマゾンのここに、
https://www.amazon.co.jp/%E5%8C%BB%E6%AD%AF%E7%B3%BB%E5%AD%A6%E7%94%9F%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E7%89%A9%E7%90%86%E5%AD%A6%E5%85%A5%E9%96%80-%E8%B1%8A%E7%94%B0%E7%B4%98%E4%B8%80/dp/4816013067/ref=sr_1_1_twi_tan_1?s=books&ie=UTF8&qid=1466600693&sr=1-1&keywords=%E8%B1%8A%E7%94%B0%E7%B4%98%E4%B8%80
ざっと目次に眼を通したところですが、生体あるいは人体を支配している物理法則が非常に分かりやすく説明されている好著だと思いました。豊田先生、ありがとう存じます。
1)エフロブ「買いたい新書」の書評No. 326に見延典子「汚名」(本分社)を取り上げました。
古い話だからご記憶にないかもしれないが、著者は早稲田大学文学部の卒論として書いた小説「もう頬づえはつかない」(講談社、1978)が出版されると、いきなり50万部の大ベストセラーになったという経歴を持つ。その後、結婚して広島市に移住し、ときおり地元紙「中国」の紙面でエッセイなどを読む機会があったが、本格的な作品は読まなかった。
明治維新とその後の31年は、森永卓郎(監)「物価の文化史事典:明治・大正・昭和」(展望社、2008)を開けば、政治的大動乱期であっただけでなく、通貨制度の変更や制度や税金制の導入など社会経済的にも大変動が起こったことがわかるが、当時の庶民にどういう生活体験があったのかは見えてこない。小説だがノンフィクションに近く、人物は仮名になっているが、モデルはすべて実在の人物らしい。
広島藩士の平野真太郎は長州戦争で財政難に陥った広島藩の勘定奉行半田に命じられて、偽金作りの監督をしたことがある。当時は、幕府が発行する正式の硬貨以外に藩札があったが、外国から武器を調達するのに、金貨・銀貨を偽造するほかなかった。石見銀山が北にある広島藩では川から砂金がとれた。その後、真太郎は洋学に志し、福山藩の医師寺久保の元で医学修業をする。寺久保は「人が生きるには、衛生と資産と品行」の三つが最も大切だ、「医師ではなく医者になれ」と教える。やがて明治維新となり、広島藩と福山藩は統合され「広島県」となった。真太郎は広島市の宇品港の近くで開業する。
医師としては順調だったが、妻子をコレラで失った真太郎は、失意の中、最新の医学を研修しなおそうと医院を閉め老母を残して、東京の順天堂病院に留学する。主に外科を学んだ。元勘定奉行の半田は偽金作りの刑罰に服した後、東京にいた。半田と真太郎の交流が復活する。
やがて真太郎は内科だけなく外科の必要性を痛感し、上京して順天堂病院の関連病院で外科医としての修業をする。二代目の広島市長には「偽金作り」という汚名をもつ半田が就任し、真太郎は主治医としてのアドバイスも行う。広島市の上水道完備に半田が尽力し、医療に最も重要な、師寺久保医師が教えてくれた「衛生」が実現する通水式の光景はまことに感動的です。
以下はこちらに、
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1466147602
★来週の「解体新書」はNo.327:吉見俊哉「<文系学部廃止>の衝撃」(集英社新書、2016/2)を取り上げます。詳細はこちらをご覧下さい。
https://www.google.co.jp/search?hl=ja&source=hp&q=%E8%B2%B7%E3%81%84%E3%81%9F%E3%81%84%E6%96%B0%E6%9B%B8&aq=f&aqi=g-s1&aql=&oq=&gs_rfai=&gws_rd=ssl
2)献本など
★「医薬経済」6/15号のご恵送を受けた。お礼申し上げます。
今号でも、鳥集徹の「口に苦い話:媚びないジャーナリストの劇薬処方箋、No.16<誰のため>の臨床研究か、法案を議論の契機に」が抜群に面白かった。ディオバン事件のデータ改ざんを受けて、「臨床研究法案」が、次期国会への上程を目指して厚労省で審議中だという。
鳥集氏は<患者の利益のために臨床試験をするという意識がこれに関与する医師にあれば、いい加減な研究デザインはできないし、データの改ざんや結果のねじ曲げという非良心的なことはできないはず。そういう哲学が日本の医療界に根付いていない。>(大意)という。
同感だ。
★★京都府向日市(むこうし)にお住まいの豊田紘一先生から、
「医歯系学生のための物理学入門」(永末書店、2016/6) をご恵送頂いた。厚くお礼申し上げます。同書の内容説明はアマゾンのここに、
https://www.amazon.co.jp/%E5%8C%BB%E6%AD%AF%E7%B3%BB%E5%AD%A6%E7%94%9F%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E7%89%A9%E7%90%86%E5%AD%A6%E5%85%A5%E9%96%80-%E8%B1%8A%E7%94%B0%E7%B4%98%E4%B8%80/dp/4816013067/ref=sr_1_1_twi_tan_1?s=books&ie=UTF8&qid=1466600693&sr=1-1&keywords=%E8%B1%8A%E7%94%B0%E7%B4%98%E4%B8%80
ざっと目次に眼を通したところですが、生体あるいは人体を支配している物理法則が非常に分かりやすく説明されている好著だと思いました。豊田先生、ありがとう存じます。
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