口内炎日和~秋の競馬場編

2005-10-23 21:51:24 | Weblog
 昨日は口内炎にもかかわらず競馬場。競馬場でのわたしと
いえば、ゴール前で騎手の名前を絶叫していることが多いわ
けだが(「淳一ぃぃぃっっ、差せぇぇぇっっっっっ!!!」のたぐ
い)、口内炎で口を開くこともままならぬ状態、今日くらいは静
かにレースを見るかと思ったものの、なにせ長年の習慣、ここ
ろの底からこみあげる衝動を押さえるのは誠に難しく、結局は
いつも通り騎手の名前を叫んでしまった。といっても口内の激
痛を耐えるのもまた困難で、口から出た言葉は「かうはうぅ、あ
えぇぇぇぇっっっ!!」。ちなみに翻訳すると「勝春ぅっっっっ、差
せぇぇっっっっ!!」であり、周囲の人間が見たなら、「言語障
害のひとがその障害にもかかわらず競馬観戦の夢を実現した」
と思えたシーンだと思う。TBSあたりがドラマ化してくれるかも
であります。

 しかし競馬場って所は、普段ならなかなか見られない人間の
「業」がかいま見られる空間であります。

 素人が小説やシナリオ書くと、「あまりにも説明的な台詞」とい
うのが頻出して鼻白むことがあります。いや、素人ばかりとは限
らず、プロでも橋田寿賀子とかこの手の台詞を思い切り活用しま
すな。自らの置かれた状況、あるいは人物紹介、感じたことなど
を事細かに台詞としてしゃべる。「えー、あなたがあの年商百億、
業界でも5本の指に入る××産業の社長の息子さんだったんで
すか!?」なんていうのが具体例。現実に、こんな事細かな説明つ
けくわえる人間がいるわけはない。そんな訳で、こういう台詞は
シナリオにおいて評価が低くなる理由となるわけですが。

 競馬場においては、この手の説明的な台詞がとびかっていて、
しかも猛烈なリアリティをもっている。「いやー、3連複1万円買っ
てたけど、人気二頭のからみだから、たいしてつかないな」 こう
いう台詞を、ひとりごととして言っているジジイが、それこそ佃煮
にできるほどいるのが競馬場なのだ。

 高額配当の出たレースのあとなど、「惜しかった」オヤジが大
発生する。「最後の最後で迷ってこの馬切っちゃった」とか、「5
は買ってたんだよ5番は。でも2がくるとはなぁ」とか。どこが「惜
しい」のかよくわからず、話だけ聞いてると真っ向からはずしてる
んじゃねぇか、とも思えるのだが、本人にとっては「惜しかった。
もうちょっとでとれてた」というのが実感なのであろう。

 その日の最終レース、3連単で公営ギャンブル史上最高配当
という、1800万馬券が出た。帰りの電車の中、ジジイどもの話を
聞いてると、「惜しかった」「あともうちょっとでとれてた」の大合唱
であった。なんとなく、「年金で夢見るのもたいがいにしろよ」と思
ったわたしであった。