先立つものが必要だったのは、駐車場の手配を済ませるためでした。即日入居できたことにより、今日からは物件の至近に車を止められます。
実際に生活してみて、この物件との出会いは奇跡だったと改めて思います。犀川の畔の眺めは最高です。部屋には既に家具が揃い、それでいながら家賃は格安。橋を渡った先には繁華街があり、雨の日も香林坊まで濡れずに行け、その範囲であらゆるものが揃います。同時に検討していた浅野川沿いの物件との比較でも、利便性の高さは歴然としています。ただし、それらの全ては元々期待していなかったことでした。屋根付駐車場があるという条件で情報サイトを調べたところ、候補に挙がった物件の一つがこちらだったのです。ところが下見をしたところ、接道の角度と見通しが悪く、自分の車で出入りするには厳しかろうと判断しました。その結果、駐車場を改めて探す必要に迫られていたわけなのですが、ここでさらなる奇跡が起きます。最寄りの月極駐車場に大きな屋根があったのです。
感じ方は人それぞれかもしれません。しかし自分の場合、屋根があるのとないのとでは全く違うと感じます。冬の気候も考えると、賃料が多少高くとも、駐車場は屋根付以外に考えられませんでした。しかし、多くの人々にとっては安心感より安さの方が重要なのか、月極駐車場の中で屋根付のところは一割にもなりません。物件の最寄りにその一つがあって、なおかつ空いた区画があるなら、即決しようと思いました。それだけに、一旦帰京した後で不動産屋へ問い合わせ、空いているとの回答を受けた時点では、諸手を挙げたい気分でした。しかし、逸るこちらを諌めるかのように、先方からは忠告が。屋根が老朽化しており、それによる一悶着も起きたため、今一度下見をしてから決めてはどうかというものです。屋根付かどうかだけにとらわれ、屋根の状態までは見ていなかった自分にとって、ありがたい助言でもありました。それに従い入居後に再度現地を検分し、お盆が明けるのを待って契約に至ったという次第です。
手続の際、新たな事実が判明しました。融雪用の配管が用をなしていないということです。それでようやく飲み込めたのは、屋根のみならず全体が老朽化しているという事実でした。このようなことになったのは、大家の高齢化によって、末長く維持するための修繕をしづらくなったからでしょうか。さりとて売却しようにも、寺町の保存地区では使い道にも制約があり、なかなか買い手がつかないことから、現状のまま貸しているのが実態なのかもしれません。屋根の下の電灯すらつかないということからしても、割り切りが必要なのはよく分かりました。
それでもここに決めたのは、坂の側から出入りできるという、もう一つの利点を享受できるからです。寺町の高台の縁に張り付く形で物件がある関係上、川の畔を行く道と、坂の途中に玄関があることについては
昨日も述べました。その結果、どちらから入るかによって自室へ登る階段の数が変わってきます。階数でいうと、川の方から登ったときは六階相当なのが、坂の方から登ると四階相当です。実際のところ、坂の方からは難なく登り切れるのに対して、川の方から登ったときは若干息切れしていました。毎日上り下りをすることを考えると、どちらから出入りするかは大違いなのです。坂の上に駐車場を借りれば、自転車もそちらに止めておけるため、一石二鳥でもあります。エレベータがないという、この物件の唯一にして最大の難点を、合理的な限度まで緩和できるという点において、この駐車場の存在価値は絶大です。何分設備が古いだけに、予期せざる問題が生じる可能性はあるものの、当面こちらの世話になります。