日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

最後のランチ - ソレイユ

2021-05-17 20:57:07 | B級グルメ
NORD KUDANの閉店は返す返すも残念でしたが、別れがあれば出会いもあります。最近世話になっているのが欧風カレーの「ソレイユ」です。
カレーといえばラーメンと並ぶ大衆食ですが、似て非なるものに欧風カレーが挙げられます。近隣にある有名店のほとんどは、千円を大きく超える価格帯です。昼時にそれだけ払う覚悟があるなら、カレーより豪勢なものは多々あります。インドカレーの専門店との比較でも、割高感は明らかです。それ故に食わず嫌いをしてきた業態だったわけなのですが、この店に出会って見方が変わりました。
こちらのカレーは1200円からです。並で900円、大盛でも1000円だったNORD KUDANに比べると、たしかに割高ではあります。しかし、高いと思わせないだけの価値をここのカレーは持っています。この歳にしてようやく得心できたのは、値段の違いが手間賃に依存するという事実です。材料を焦がすことなく長時間炒め続けたり、様々な食材から出汁を取ったりする行程に並々ならぬ労力が注がれており、それが値段に反映されるともいえます。その一端が現れるのは辛さです。乳製品を豊富に使い、辛さを抑えてまろやかに仕上げるというのが、自身勝手に想像していた欧風カレーの典型的な姿でした。しかし、こちらのカレーは意外なほどに辛口です。中辛でも十分辛く感じるものの、唐辛子に頼った辛さとは全く違う奥の深さを感じるのは、香辛料の使い方にも工夫が凝らされているからでしょう。見た目こそ変わったところはないものの、研究の跡をありあり感じる逸品です。
しかし、欧風カレーの専門店で、一様にそう感じることもありません。当店に限って感心させられるのは、最後の一手間によるところもありそうです。近隣にもう一軒ある有名店では、注文してから一分も経たないうちにカレーが出てきます。大鍋で煮込んだものをそのまま出しているということです。しかしここでは意外に時間を要します。具材をその都度調理して、ソースに合わせているからです。予め仕込んだソースに具材をその都度乗せるといえば、全国チェーンのカレーハウスでおなじみの手法ですが、あちらと大きく違うのは、その都度調理することで味わいを高めているということです。鶏肉のローストされた香ばしさは、カレーと別に調理するからこそ引き出せるものでしょう。そのための手間も含めて考えると、千円を超える値段もあながち高くはありません。
もう一つの美点は「人」にあります。厨房で黙々と仕事をこなす店主に対し、客席を仕切る女将は「ラ・タベルナ」の女将と並ぶ快活な御仁です。どちらが欠けても商売としては成り立たなかったかもしれません。二人で仕切る小さな店さえ、問答無用で「要請」に服従させられるご時世ではありますが、この難局を乗り越えて、末永く続いてくれることを願います。

ソレイユ
東京都千代田区二番町11-20 グンショウ二番町ビル1F
03-6261-0184
1130PM-1430PM(LO)/1730PM-2130PM(LO)
第一・第三土曜及び日祝日定休
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