日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

夜の六本木 - さかなのさけ

2015-10-27 21:54:41 | 居酒屋
平日に呑んで帰る習慣が途絶え、赤坂、新橋などの主戦場にも一年前後無沙汰するのが珍しくなくなりました。その他の場所についてはなおさらで、全く足が向かなくなった場所の一つに六本木があります。猥雑な印象とは裏腹に、探せば名酒場もいくつかある六本木ですが、最も愛用していた「酒友」は、改装によりまるで違った店に変わり果て、ついには姿を消しました。戻るにしても心当たりは一軒しかありません。その「さかなのさけ」を今夜は訪ねます。

なじみの店と称するのが憚られるほど、この店からは長らく遠ざかってしまいました。過去の記録を紐解くと、一人で入ったのは四年以上も前になります。それ以外の場合を入れても三年前が最後です。それが今になって再訪を思い立ったのは、軽妙洒脱な店主のことをふと思い出したからに他なりません。実はこの店主が鉄道好きで、旅のことから酒のことまで何かと意見が合うのです。北陸新幹線と北海道新幹線が立て続けに開業し、交通体系が際限なく歪んで行く現状につき、意見交換をしたかったとでも申しましょうか。
こちらを覚えているかという一抹の不安も杞憂に終わり、玄関をくぐるや否や「無茶苦茶久しぶり」との第一声で迎えられ、カウンターの手前側、店主の前に首尾よく着席。奥で調理をこなす女将も、店内も何一つ変わってはおらず、三年ぶりとは思えないような安堵感が押し寄せてきました。欧米人の勤め人が一人で飛び込んできたり、見るからに身なりのいい老夫婦が電話一本入れてから立ち寄ったりといったところが、六本木の路地裏にひっそり佇むこの店らしく、その様子を横目にしつつちびりちびりと酒を酌むのも悪くはありません。

ここまではよかったのですが、いただけなかったことが一つだけあります。すっかり出来上がった四人組が後から飛び込み、店の空気が一変してしまったのです。
実質カウンターのみの、10人少々入れば満席になる小さな店です。訪ねるならば二人、百歩譲って三人までが適正な範囲でしょう。それが酔客四人組では明らかに空気を乱してしまいます。必然的に騒がしくなりがちなところを、店主が適宜たしなめてはおり、おとなしくすべきことは彼等自身も認識してはいるようです。しかし、一定以上に酒が入れば、当然制御も効かなくなってくるわけで、そのような状態にあるのは傍目にも明らかでした。話ぶりからして一見客ではなさそうな様子ではあり、そうであればなおさらTPOをわきまえてもらいたかったというのが本音ではあります。
もっとも、酔って羽目を外すのは誰にでもあることで、隣客の巡り合わせの良し悪しも酒場においてはつきものです。自分自身、彼等の振る舞いに目くじらを立て、ことさらに糾弾するつもりはありません。むしろ、もう少し落ち着いた状況で再訪したいという考えが勝り、五勺のグラスを三杯干したところで席を立ちました。

結局、店主とは挨拶程度の会話で終わってしまい、意見交換は次回までお預けとなりました。近年の傾向からすれば、次回といっても相当間が開き、最低でも半年、場合によっては一年以上にはなるでしょうか。その頃には北海道新幹線も開業し、我が国の鉄道はますます救いようのない状況に陥っているでしょう。その現実を店主とともに嘆いてみたいものだと思います。

さかなのさけ
東京都港区六本木3-8-3 遠藤ビル1階
03-3408-6383
1800PM-2300PM(最終入店)
日祝日定休

山・小僧山水・王祿
突き出し(ささみの紫蘇巻)
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