名古屋駅のロッカーに不要な荷物を預け、地下鉄に一駅揺られて伏見にやってきました。本活動の真打「大甚本店」が満を持しての登場です。過去土曜に三回訪ねたとき、賑わい、活気の域を逸脱した争奪戦のごとき状況を経験して、本来の姿を知るには平日しかないと思い至ったのが、今回旅に出た直接の動機に他なりません。結論から申しますと、その狙いは見事に的中しました。
まず、お客の入りが適度です。詰めてもらってようやく入れたこれまでに対し、今回はところどころに空席があります。常時ほぼ満席の盛況ながらも、一人や二人飛び込んでもすぐに収容でき、その席が埋まる頃には先客が店を出るため、店が滞りなく回転しているという状況は、多くの名大衆酒場に共通しています。空席の数にすればわずかなものとはいえ、この違いが数字以上に大きいのです。加えて、案内された席が好位置でした。一番奥にあるテーブルの短い辺、いわゆる「お誕生日席」で、右側に厨房が、対角線上に玄関があり、店内の全貌を見渡すことができる場所です。奥の壁に向いた照明が少々眩しく感じられたり、教祖が絶賛している玄関脇の燗付け場が厨房の死角になったりと、細かな難点はあるものの、禁煙の区画であることを含め、少なくとも特等席の一つなのは間違いないでしょう。
こうなると、店内の様子を観察する余裕が出てきます。まず違うのが客層です。場所柄一見客、出張客も少なくない中、やはり大半は常連客で、慣れた様子で酒を酌む所作が様になっています。大店の割に厨房は意外なほど狭く、その厨房で何人もの料理人とおばちゃんが仕事をこなす様子はまさに職人芸です。五時過ぎには品切れになりかけていた惣菜も、この日は目移りするほど豊富に用意され、既出の品と初見の品を適宜組み合わせつつ選んで行くのも楽しいものがあります。六時を過ぎると客足が一旦落ち着くのは土曜と同様ながら、ほぼ品切れ閉店に近かった土曜に対し、惣菜は依然として潤沢だったため、その頃を狙って訪ねるのも一案かもしれません。
このように、酒、肴、居心地のどれをとっても土曜とは大きく違い、四度目にして初めて聖地本来の姿を体感できたような気がします。やはり、巡礼するなら平日に限るという仮説に誤りはありませんでした。これでこそ一日休んだ価値があったというものでしょう。
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大甚本店
名古屋市中区栄1-5-6
052-231-1909
1600PM-2100PM(売切御免)
日祝日定休
大徳利二本
惣菜八品