駅から市街へ移動して、宿の駐車場に車を置き、チェックインは後回しにして呑み屋街に飛び出してきました。ここまで先を急いだのは、八戸の真打ち「ばんや」が看板になるかどうかの瀬戸際だったからです。
時刻は既に10時を回り、閉店までは一時間弱。大抵の居酒屋なら暖簾をしまっている頃です。それでも一縷の望みをかけて店へ向かうと、彼方には見慣れた行灯の明かりが。玄関にはまだ縄暖簾もかかっています。この明かりが消えるのを目の当たりにしてしまっては、あまりに痛すぎるというものでしょう。目の前の赤信号が異様に長く感じられてなりません。やっとのことで暖簾をくぐると、名物店主が何事もなかったように迎えてくれ、ここでようやく安堵感が押し寄せてきました。
星の数ほど呑み屋がある中、この店にそこまでこだわったのは、五月に初めて八戸の呑み屋街を訪ねたとき、八戸で呑むなら一も二もなくここだと確信していたからです。八戸で呑むとはこの店に行くことだといっても過言ではなく、万一振られればわざわざ足を運んだ意義も半減します。そのような意味では、旭川における「独酌三四郎」、名古屋における「大甚本店」のような孤高の存在感がこの店にはあるということです。
「存在感」ということは、一朝一夕ではできない、店と常連客が長年かけて作り上げた独特の雰囲気、居心地があるということでもあり、たかが二回訪ねただけの自分が、この店の真髄を理解しているとは到底いえません。しかし、店構えに違わず年季の入った風格のある店内の居心地は、旭川、名古屋の聖地と同様、他店をもってしては代え難い唯一無二ものです。
品数が決して多くはないにもかかわらず、一つ一つが酒の肴として完成されており、品書きを見るだけでも楽しめるのはさすがといったところでしょう。ホワイトボードに書かれたおすすめは、初夏に訪ねた前回から様変わりしており、その中から秋刀魚の刺身を注文。短冊からは、前回頼んで秀逸だった馬肉の煮込みを、カウンターの大皿からは、なめこと麹の和え物をそれぞれ選びました。これにお通しの茗荷煮付けを加えれば、小一時間の滞在には必要にして十分です。
これに温かいものを一品加えられれば完璧というところ、あいにくそこまでの時間はありません。しかし今回の場合、入店できただけでも幸運と考えるべきところです。乗った列車があと一本遅ければ、この店は当然ながら看板となり、あと少し早く出ればと、死んだ子の歳を数える羽目になっていたかもしれません。そのような事態を回避し、八戸で呑むという貴重な機会を、わずか四ヶ月という短い間隔で実現できたのですから、これでこそ早く動いた甲斐があったというものです。
★ばんや
八戸市朔日町4
0178-24-5052
1800PM-2300PM(日祝日定休)
陸奥八仙・菊駒・豊盃
お通し
秋刀魚刺身
馬肉の味噌煮
なめこの麹和え
時刻は既に10時を回り、閉店までは一時間弱。大抵の居酒屋なら暖簾をしまっている頃です。それでも一縷の望みをかけて店へ向かうと、彼方には見慣れた行灯の明かりが。玄関にはまだ縄暖簾もかかっています。この明かりが消えるのを目の当たりにしてしまっては、あまりに痛すぎるというものでしょう。目の前の赤信号が異様に長く感じられてなりません。やっとのことで暖簾をくぐると、名物店主が何事もなかったように迎えてくれ、ここでようやく安堵感が押し寄せてきました。
星の数ほど呑み屋がある中、この店にそこまでこだわったのは、五月に初めて八戸の呑み屋街を訪ねたとき、八戸で呑むなら一も二もなくここだと確信していたからです。八戸で呑むとはこの店に行くことだといっても過言ではなく、万一振られればわざわざ足を運んだ意義も半減します。そのような意味では、旭川における「独酌三四郎」、名古屋における「大甚本店」のような孤高の存在感がこの店にはあるということです。
「存在感」ということは、一朝一夕ではできない、店と常連客が長年かけて作り上げた独特の雰囲気、居心地があるということでもあり、たかが二回訪ねただけの自分が、この店の真髄を理解しているとは到底いえません。しかし、店構えに違わず年季の入った風格のある店内の居心地は、旭川、名古屋の聖地と同様、他店をもってしては代え難い唯一無二ものです。
品数が決して多くはないにもかかわらず、一つ一つが酒の肴として完成されており、品書きを見るだけでも楽しめるのはさすがといったところでしょう。ホワイトボードに書かれたおすすめは、初夏に訪ねた前回から様変わりしており、その中から秋刀魚の刺身を注文。短冊からは、前回頼んで秀逸だった馬肉の煮込みを、カウンターの大皿からは、なめこと麹の和え物をそれぞれ選びました。これにお通しの茗荷煮付けを加えれば、小一時間の滞在には必要にして十分です。
これに温かいものを一品加えられれば完璧というところ、あいにくそこまでの時間はありません。しかし今回の場合、入店できただけでも幸運と考えるべきところです。乗った列車があと一本遅ければ、この店は当然ながら看板となり、あと少し早く出ればと、死んだ子の歳を数える羽目になっていたかもしれません。そのような事態を回避し、八戸で呑むという貴重な機会を、わずか四ヶ月という短い間隔で実現できたのですから、これでこそ早く動いた甲斐があったというものです。
★ばんや
八戸市朔日町4
0178-24-5052
1800PM-2300PM(日祝日定休)
陸奥八仙・菊駒・豊盃
お通し
秋刀魚刺身
馬肉の味噌煮
なめこの麹和え