公演名 壽 初春大歌舞伎 昼の部
劇場 大阪松竹座
観劇日 2009年1月12日(月・祝)
座席 3階1列
まだ番付を購入していないので適当に書いています。
間違いがありましたら、どうかご指摘を・・・。
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一、義経千本桜(よしつねせんぼんざくら) 鳥居前
佐藤忠信実は源九郎狐:翫雀 源義経:愛之助
武蔵坊弁慶:薪車 静御前:孝太郎 早見藤太:松之助 ほか
兄の源頼朝に謀反の疑いをかけられた義経は、都落ちを余儀なくされ西国
へと向かい、伏見稲荷に辿り着く。ここへ、義経を追って愛妾の静御前と
武蔵坊弁慶がやって来るが、静御前は同行を許されず、義経から初音の鼓
を渡され、ひとり残されてしまう。そこへ鎌倉方の追手の早見藤太が現れ、
静を引っ立てようとするところ、佐藤忠信が駆けつけ静を助ける。実は忠
信は狐の化身で、これを見ていた義経は忠信を褒め称え、源九郎義経の名
前と鎧を与え、静の守護を命じるのだった。
「鳥居前」は『義経千本桜』の中の序盤にあたるお話。
忠信が静御前を守ることになったいきさつがわかるのがこの演目。
主人公は忠信だが、やっぱり義経から書いてしまおう。
今年もめいっぱいファン目線、応援目線でまいります。
私の2009年初観劇。耳に届いた第一声は愛之助さんでございました♪
義経。立ち姿よし。顔よし。清々しくて品があり、憂いの表情も美しい。
きらびやかな衣装をつけ、ゆっくりと明晰な口跡で四天王をしたがえる。
でもこの演目、義経の見せ場が少ない気がする。
ただもうそこにおわす我が君さまなのだ・・・。
ここへ弁慶がやってくる。
義経は正妻を差し出してまで兄からの疑いを晴らしたのに、弁慶が鎌倉方
の侍を殺したばっかりに元の木阿弥に。
それを義経に責められ、打ちすえられる弁慶。義経もつらそうだ。
弁慶としては主君を思えばこそと、今度は泣きながら自らを打ち、許しを
請う。その泣き方がまるで大きな赤ん坊のようで、客席から笑いが起きる。
勧進帳で機智をはたらかせ主君を救ったあの弁慶とはとても思えない。
そんないたずらっ子のような弁慶を薪車さんが演じるのがかなり新鮮。
でも薪車さん。弁慶を演じるには男前すぎでは?(わわ、問題発言?)
次にやってきた静御前、赤姫の衣装が華やかな印象。
いっしょに連れていってほしいと頼むが、同道をゆるされない。
連れては行けないが、形見にせよと義経が代わりに渡すのが後白川法皇か
ら拝領した「初音の鼓」。(問題のブツですな。)
義経がもしこれを打てば、兄の討伐を承知したことになるわけで。
まだ承服できず、クドキやら何やらでねばる静御前を、なんと!木に縛り
つける家来たち。(ちょ、ちょっと、いくらなんでもそれはないやろ~!)
義経は縛られる静御前に背を向け、顔をあげて伏し目でじっと堪えている。
(その表情が3階からよく見える♪)
静をそこに放ったまま、義経主従は神社の境内へ。
孝太郎さん、妹背山婦女庭訓のお三輪とか、可哀相な場面になればなるほ
どすごく健気な感じが引き立つ人だ。
そこへやってきた早見藤太。
若い衆をいっぱい引き連れて、花道から登場。
しかしこの半道敵という役、初めはナンノコッチャという感じ。
だって、ぜんぜん強うそうに見えないし。
そしたら、静御前を見つけて初音の鼓を持ち去ろうとするではないですか。
そこへ佐藤忠信が突然現れて、藤太らをバッタバッタとやっつけて静御前
を救出。翫雀さんの忠信、勇壮な立ち回りに声もかかり、拍手も起きる。
静を救ってくれた忠信に、義経は自らの姓名「源九郎」と着長を与える。
もしもの時には自分の身代わりとなるようにと。
実は親狐(鼓の皮)に会えたのが嬉しくてたまらない、源九郎狐。
義経と静御前の最後の別れ。義経も本心はつらいんだ~。
なかなか別れ難そうな二人の間に割って立つのは、弁慶と忠信。
静のことを忠信に託して、旅立つ義経主従なのだった。
幕が閉まって、その前に居る忠信と静御前。
静が先に引っ込み、観客の視線を一手に集める狐の忠信。
荒事の豪快さ、楽しさが全開。だんだん手つきが狐になっている。
最後に翫雀さんが花道をユーモラスな狐六方で引っ込む。
と、ここまで書いては見たものの、鳥居前だけではイマイチ面白みに欠け
る気がするんだけど・・・。
二、良弁杉由来(ろうべんすぎのゆらい) 二月堂
良弁大僧正:我當 渚の方:秀太郎
僧順円:吉弥 同法善:薪車 ほか
東大寺の良弁大僧正が二月堂へ礼拝に訪れる。良弁は幼少の頃、大鷲に攫
われ、二月堂傍らの杉の大木に落とされたのだった。そこで良弁は「鷲に
攫われた幼子を探しています」と書かれた貼紙を見つけ、その主を探すが、
貼紙の主はみすぼらしい老婆、渚の方だった。
話を聞くと、もとは高貴の奥方であったが、三十年前に我が子を失って以
来、正気を失いながらも諸国を彷徨う日々を送っていたとのこと。互いを
母子と知った二人は共に涙に暮れるのだった。
東大寺二月堂。
関西にちなんだ演目を舞台で見るのは、やはり楽しい。
杉だけじゃなく、これで石山寺の由来までわかってトクした気分だ♪
舞台には二月堂と杉。その前には僧たちがずらり座している。
(吉弥さんと新車さんも僧になっていた! )
良弁大僧正は立派な法衣をまとい、いかにも高僧らしい風情。
杉に付けられた貼紙の話を聞くために、立派な椅子に腰掛けて待っている。
(高僧の椅子は曲彔とかナントカいう呼び名があるそうな。)
そこへ老婆が現れ、良弁大僧正の前で額ずく。
我當さんの良弁は威厳があってちょっと近寄りがたい感じ。
秀太郎さんの渚の方は、紅もひいてなくて、苦労した感じの質素な化粧。
(でもよく見ると、柔らかみがあって上品さがにじみ出ている。)
二人が親子であることがわかる決定的証拠の、手縫いのお守り袋。
(ここで渚の方が、蝉丸ウンヌンという台詞があったが、失念!)
目の前の老婆が母親だとわかった瞬間、良弁がすばやく椅子から下りて、
母親の前で跪くのだけれど、このとき母親の顔が上にあり、良弁が下か
ら見上げていた。
二人の上と下の位置が変わった途端、良弁の顔が母親に抱かれる幼子の
ように見えたのにはビックリ。
それを見て涙がこぼれてしまった私。
母親が何十年もの間、自分を探して諸国を放浪している間、自分はこのよ
うに楽をし、贅沢な椅子にすわっていたことを恥じる良弁。
母がさっきまで身につけていた、汚れた笠と杖をとり、愛おしそうにさす
るところでまた泣かせてくれまする~。
母の恩は石や山のようなもの、と石山寺を建立することを誓う良弁大僧正。
いつも自分が乗っている高貴な駕篭に母親を乗せ、これで帰ってください
と良弁が言うと、初めは断ったけれど、奥ゆかしくも承知する渚の方。
駕篭の上でにこやかな笑みを浮かべる母、駕篭がグルッと方向転換すると、
今度は胸の前で手を合わしている。
二人で手を取り合い、涙ながらも笑顔の母。
良弁のほうは、化粧と混じり合った真っ赤な涙が幾筋も頬を伝っている。
松嶋屋のお二人と、芝居を盛り立てる義太夫が胸にしみた舞台だった。
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どら猫は昼の部は17日に拝見する予定ですぅ。
昨夜アップして、そのまま力尽きて見直してませんでした。
さっそく訂正いたしました。
昼の部の郭文章、松嶋屋さんとの違いがわかりましたら
また教えてくださいね~。
文楽との比較も!