星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

大阪松竹座 十月花形歌舞伎「夏祭浪花鑑」(5)

2013-11-06 | 観劇メモ(伝統芸能系)
長町指してーーーっ!(3)からのつづき。

<長町裏の場>
前半は端折って、佳境に入るのは駕篭を戻した直後から。
団七が石をひろって金に見せ、このお金を渡すから琴浦の駕篭を三婦の
家に戻してくれ、と義平次に約束した後だ。
以下、台詞は床本を見ながら、メモと記憶で再現。

駕篭が返って行くのを見送り、完全に約束のことを忘れている団七。
(今までは団七がシラを切っているのかと思っていたが、安堵のあまり
本当に忘れているのだとようやくわかった。)

駕篭は戻した、ワシも喜ばせてくれよと義平次が言うと、え?と団七、
太い声の生返事。喜ばすとはなんでござります? 
物覚えわるいやっちゃな、若いのに。それ、約束の。
え? 約束の。そりゃまあなんでござりましたな?
約束の三十両・・・と言われ、そのか、金はここにはござりませんわい。

逆上する義平次。団七の頭を思いっきり叩く。何度もなぐるうち前かがみ
になった団七の背中に雪駄を見つけ、なんやこれ? ワシはいまだこのかた
ワラジしか履いたことないのに、雪駄?
団七の脳天、そして顔面の額をおもいきり叩く義平次。
いたたた、と団七、おさえた手を見るとナント血が。プハー!

表情一変。「コリヤコレ、男の生面を」
グオーーーッ!! (息を吐く凄い音が舞台から聞こえた。)
脇差しに手をかけ、右足を前に出し、忿怒の顔で見得。
(やっぱり、ここが一番!)

その後、いったん気持ちを落ち着かせるが、なんやソレ、斬れやい、と
義平次が団七の腰から刀を奪う。危ない!
尻からやるか、腕からか? そんなめっそうもない。二人もみ合う。
団七が刀を取り上げ、自分のほうに引き寄せる。
が、あやまって義平次の首を斬ってしまう。それには気づかない団七。
あいた!なにも殴らんでもええやないか。
殴ってないがな。
義平次、自分の首に手を当て血に気づく。
ひとごろしーー!おやごろしーー!
その口を塞いだときに息がおかしいことに気づく。そして血。
義平次は目を閉じてクタ~としている。

しもたーーー!
ここまで俺が一生懸命・・・と言いかけ言葉にならない団七。
こんどこそ意を決して、ついに義平次を斬る。
そのあと花道七三まで走っていき、見得。
「おやっどん、ゆるしてくだんせー!」
花道からもどる団七。獲物をとらえた猫みたい。笑みさえ浮かんでいる
ように見えた。

ここからは殺しの見得の連続。
刺青の赤、青、肌の白。そこに泥。美しい見得。
土手に腰をかけての見得は上方バージョンのみらしい。
(東京風の舞台では土手がないため。)

ちなみに、千秋楽では見得の最中に釣瓶の支柱が倒れた。
こんなこと初めて!
向こうにだんじりの提灯が見えている。
見つからないようにしないと、という気持ちと、本水をかぶるのに
どうするの?という気持ちが混じって二重の意味でハラハラ(笑)。
トドメ。義平次の上でクルッと回って見得。と同時に黒衣さんが現れ
支えていたので、なんとか普通通りに本水をかぶることができ、ホッ。
震える手に持った鞘を膝ではさんで刀身をおさめ、後ろに投げて。
だんじりの衆がなだれ込んできて花道のほうへ。
団七もいっしょに行こうとして、土手の端で足を滑らせ、泥池へ。
わーるいひとでもーしゅうとはおやー。
おやっどん、ゆるしてくだんせー。
(くだんせー!が一段と高い今年の団七。ここから花道の引っ込み
まで3階からオペラグラスで見ていた時、花道をやってくる団七の
目が真っ赤になっていた。狂気が去った後泣いていたのか、団七。)

ムチャクチャ踊りで団七が引っ込んだかと思うと、舞台の土手には
徳兵衛のたたずむ姿が。その視線の先は団七。
ふと何かを拾う。片方の雪駄だった。いわくありげな表情の徳兵衛。

ここで幕。つづく・・・。
(やっぱり書いてしもた!)


泥場の場面。十三代目さんの本によれば、舞台セットは東京型と大阪型
があり、ずいぶん違うらしい。
平舞台に本水をはって池を作り、水飛沫が飛び散る勘三郎さんの舞台は
東京型を踏襲、またはアレンジしたものではと思う。
上方では土手と池の二重になっており、土手の手前(下)に泥場がある。
義兵次がいったん沈んで、体に泥がついたまま上がってくるシーンを3階
から見ると面白い。いったん完全に奈落に消えて、出てきた時は本当に
泥がついているのでホホウという感じ。舞台全体を泥で汚さないですむし、
底の見えない泥場の感じもちゃんと出ていた。

もう一つ。
「しもた。手が回ったー!」という聞き覚えのあるフレーズは勘三郎さん
団七の台詞。浪花花形のときから愛之助さん団七は「しもたー!」と
しか言わない。



●2013年 松竹座 十月花形歌舞伎
「十月花形歌舞伎」夜の部
大阪松竹座 十月花形歌舞伎「夏祭浪花鑑」(1)
大阪松竹座 十月花形歌舞伎「夏祭浪花鑑」(2)
大阪松竹座 十月花形歌舞伎「夏祭浪花鑑」(3)(追記版)
大阪松竹座 十月花形歌舞伎「夏祭浪花鑑」(4)
大阪松竹座 十月花形歌舞伎「夏祭浪花鑑」(5)
大阪松竹座 十月花形歌舞伎「夏祭浪花鑑」(6)

「夏祭浪花鑑」観劇リスト 2007~2013年
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