星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

大阪松竹座 十月花形歌舞伎「夏祭浪花鑑」(6)

2013-11-08 | 観劇メモ(伝統芸能系)
すごい勢いで記憶が薄れていってるので、十三代目さんの本を読み返して
いると蚤取りの場面があった。ああこれこれ、と思い出しながら、自分の
メモと合わせてなんとかつなげてみる。


<大詰  田島町団七内の場>
数日後、団七の家に徳兵衛が訪ねて来た。
ひと足先に玉島にもどったお辰と磯之丞のところへ自分も戻るからと、暇
乞いに来たのだった。あれ以来、部屋に引きこもってしまった団七。
(上手にある部屋まで市松が父親を呼びに行くが、障子の向こうで寝てい
る団七が起きてくるのが見えた。)

すべてを察した徳兵衛が、一緒に玉島へ行こうと誘うが、素っ気ない態度。
お梶に座をはずしてもらい、話がある、と徳兵衛。
懐から雪駄を出し、「これをあじなところで拾った、長町裏だ」と言うと、
ハッとしながらも「犬がくわえて持っていったに違いない」とあくまでも
シラを切り通す団七。
なぜ隠す? 兄弟の契りをかわした俺にも。もしやの時のために自分も同じ
雪駄を持っているのだと自分の覚悟を伝えて説得するが、それでも本心を
明かさない団七。部屋に戻ろうとする。

その時!
「団七、とった」と畳の上で虫のようにジャンプする徳兵衛。
「何を捕った?」「ノミをとった」
蚤を人間になぞらえて高飛びを勧める徳兵衛に、畳の縫い目に隠れていれ
ば蚤は捕まえられることはない、と返す団七。
一寸の虫にも五分の魂~と。

団七が再び部屋にこもってしまったので、しかたなく玉島に下る、とお梶
に告げる。と、着物のほつれを見つけるお梶。
(すぐに繕うから脱いで、と言うお梶との間で、脱ぐのを恥ずかしがって
か、褌の種類を地名だけでやりとりする会話があり、ちょっと笑える。)

お梶が針仕事をしていると、突然徳兵衛がお梶に近づいて不義を仕掛ける。
からだをぴったりくっつけて、実は前からお内儀のことを好いていたと言
い寄る。やめてと制するお梶、繕い終わった着物を置いて奥に逃げる。
隣りの部屋からその様子をじっとうかがっている団七の様子が見えている。
(徳兵衛の亀鶴さん、目つきが色っぽくてちょっとゾクゾク。団七への思
い、男気を見せたかと思うとこんな場面があり、いろんな亀鶴さんが楽し
めてうれしい! それにしても秘め事とは思えない、いかにも聞こえよが
しの不義だったけど・・・。)

徳兵衛。お梶が繕ってくれた着物を拾い上げたかと思うと、広げたまま空
に投げ、落ちてくるところに自分の体を持っていきフワリと纏う。
(ひゃー、カッコイイ! こんなん初めて見た~。)

いよいよ帰ろうとすると団七が部屋から飛び出してくる。
団七がさっきの不義を責め立てて、二人で言い合いになる。義兄弟の契り
で交換したお互いの袖も投げつけて返し、とうとう喧嘩になる。
これを止めに入ったのは三婦。真ん中に割って入り、屏風で制する。
三人で見得を決める!三婦はさっきから外で様子を伺っていたのだった。
(一風変わった三婦の拵え。十三代目さんの本によれば、あれはかぶって
いた笠がとれて、笠の台と結んでいた紐だけが残ったものだそうだ。)

団七がさらさらっと去り状を書いて、お梶に渡してくれと放り投げる。
市松を連れてすぐにこの家を出て行くように、三婦もお梶に促す。
泣く泣く支度して家を出るお梶と市松。この急展開に何か事情があるので
は? と尋ねるお梶に三婦が説明する。
お前の父を殺したのは団七であること、離縁すれば、せめて舅殺しでは
なくなり、罪が軽くなる。さっきの徳兵衛の不義は団七から離縁を言い出
すように仕向けた芝居であると。驚き、涙するお梶。

ここで太鼓が鳴り、大勢の捕り手がやってきた。
三婦がお梶、市松を連れていっしょに下手へと逃げる。
すると徳兵衛が名乗り出て、自分も捕り手を任ぜられた者であると言い、
召し捕り役を買って出る。
(さっき仕込んでおいた十手をすばやく取り出す徳兵衛。裏切ったのか?)


<大詰  大屋根の場>
浅葱幕が振り落とされて、大屋根の上。けっこう傾斜がある。
背景には町の屋根屋根が小さく描かれている。
団七とたくさんの捕り手たち。
ここはドンタッポで、歌舞伎らしい華やかな大立ち回り。
(観客的にはこれがむしろお祭みたい。なかなか楽しかった。坂になっ
た屋根の上でトンボ返りもする!しかも体操の白井選手を意識してか、
ひねりも入ってるから危ない。そういう意味でもハラハラ、ドキドキ。
ていうか、捕り手チーム素晴しいっ!これで負けるワケがない、てな
ツッコミは置いといて、歌舞伎役者の身体能力の凄さにあらためて目を
見張る思い。)
団七、徳兵衛、捕り手一人を乗せたまま、屋根ごとさらにせり上がる。
すごいすご~い! 捕り手一人を払い落として、二人になる。

「話は聞いた。徳兵衛、捕れ」と団七が覚悟すると、「団七とった!」
と、自分の首にかけていた路銀を団七の首にかけてやる。くぅ~!
玉島へ下れ、行って磯之丞様の世話をしろ、と。屋根の上に残る徳兵衛。
頷いて屋根から降り、屋根の上の徳兵衛に向かって手を合わす団七。
さらに捕り手が一人、花道まで追いかけてきた。若い捕り手が長い棒を
バトンのように大きく回しながら長~い奇声を発している。

それも振り切って団七、いよいよ最後の引っ込み。
韋駄天走りで駆け抜けてゆくーーーーーーーーー。

(完)

客席から長い長い拍手。
カーテンコールのことはツイッターに書いたのと、他の人がツイートし
てくださったのでいいかな、と。
亀鶴さんの目が赤くてウルウルしていて、とても素敵な挨拶だったな。
愛之助さんは対照的に、達成感のある笑顔が素敵で・・・。
大好きな演目が、上方のやり方で通しで初めて見ることができ、私とし
ては本当にうれしくて。大興奮で見届けたことをここに記す。
今週は遅い帰宅続きだったけど、なんとか最後まで書けたことが嬉しい。

明日は永楽館へ!


【参考資料】文楽「夏祭浪花鑑」作品解説(全段)



●2013年 松竹座 十月花形歌舞伎
「十月花形歌舞伎」夜の部
大阪松竹座 十月花形歌舞伎「夏祭浪花鑑」(1)
大阪松竹座 十月花形歌舞伎「夏祭浪花鑑」(2)
大阪松竹座 十月花形歌舞伎「夏祭浪花鑑」(3)(追記版)
大阪松竹座 十月花形歌舞伎「夏祭浪花鑑」(4)
大阪松竹座 十月花形歌舞伎「夏祭浪花鑑」(5)
大阪松竹座 十月花形歌舞伎「夏祭浪花鑑」(6)

「夏祭浪花鑑」観劇リスト 2007~2013年
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2 コメント

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おつかれさまです! (くまたか)
2013-11-11 22:21:17
夏祭を見る自体、先月が初だった見始め者としましては過去との比較も興味深く拝読しました。怒涛の上方悪態。徳兵衛ふわあ着用、どよめき起きましたね。そしてそして「夏祭と伊勢音頭」お読みの方にずっとお訊きしたかったんですが、蓮池でしたよね?
返信する
くまたかさま♪ (ムンパリ)
2013-11-12 01:57:41
お読み頂き、ありがとうございます。
そうですか、これが夏祭デビューだったのですね~。
忘れていた場面を思い出したり、使われている道具や衣装の意味を
知るのに「夏祭と伊勢音頭」があってよかったと思いましたけど、
反面、この芸談にすべてのことが書かれているわけじゃない、ということもわかりました。
今回、屋号の違う役者さんたちが自分の役をそれぞれの流儀で演じられているのも、
なんか『仮名手本忠臣蔵』っぽいぞ、と思ったり。面白かったです。

> 蓮池でしたよね?
うーん、これは私にもわかりません。当初見た時は蓮根の泥かと思って
ましたけど、場所が大阪のど真ん中の「長町裏」だということが
わかってから、ただの池かな~と思うようになりました。
ハスの花は夏に咲くものだし、大きな葉っぱがウジャウジャあると
思うので、蓮池説はどうでしょうね?

大屋根の後の後日談も、いつか通しでやってほしいですね(笑)。
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