公演名 | 贋作・罪と罰 |
劇場 | シアターBRAVA! |
観劇日 | 2006年2月18日(土) 14:00開演 |
座席 | 1階 XA列 |
観劇回数 | 5回目 |
<カーテンコール~大阪千秋楽版>
まず最初にカーテンコールの様子を。
1回目は上手から出演者全員登場し、両側客席に向かって二手に別れて礼、続い
て反対側を向いて礼。2回目も全員登場で同じように礼。ここからはスタオベの
観客が増える。鳴り止まない拍手に3回目はまず野田さんが一人飛び出して来て
両側客席に礼、あとの出演者を呼び出して全員が手をつないだまま横一列になっ
て礼。野田さんは両手を振って、他の役者さんたちもにこやかに拍手に応える。
全員はけた後も、さらに拍手が止まずほぼ全員スタオベ状態(向かい側しか見え
なかったけど)。4回目は野田さんが正座をしておじぎ。反対側にもクルッと向
き正座しておじぎ。立って皆を手招きして、再び全員が手をつないだまま横一列
になって両側客席に礼。野田さんは両手を振ってにこやかに応え、中村さんや村
岡さんは胸の前で手を合わせている。古田さんと松さんは肩を組んでにこやかに
退場・・・。特別なサプライズがあるわけでもなく、その代わり大きな拍手だけ
がいつまでも続く大阪のフィナーレだった。
<日替わりネタ~千秋楽版>
●才谷のサイン →ハルク・ホーガン
●才谷が笑わせる場面 →ラジオ体操から「フォー!!」へとつながり、レギュ
ラーの「あるある探検隊」、安田大サーカス「ドーンドーン、ドンドンッ!」
(以上、全部振り付け入り)の大サービス。で、英の顔を見て「最近のギャグは
嫌いなのか? 英、お前ちょっとは笑えよー」
●聞太 →JR大阪駅ネタ
聞太、そのとき何をしていたかを尋問されて。「鍵穴を覗いたら真っ暗で」に続
けて「JR大阪駅ってヘンですよねえ。阪急は梅田で阪神も梅田、地下鉄は東梅田
と西梅田。だったら、JR大阪はJR梅田よねえ? 新大阪は新梅田?」
前回観劇ではここですかさず都が「ありがとう!」と言って聞太に握手を求める。
千秋楽では「お前そんなことを考えてたのかー!」と尋問の警官が突っ込み入れ
て引っ張るので、都ニヤニヤしてしまい「もう・・・いいですか?」と遠慮がち
に手を差し出す。と、聞太から握手をしてくれて「ありがとう」と答える都。
<反対側からの初観劇と1か月間の印象>
千秋楽にして初めての反対側座席。
冒頭、金貸しのおみつがどんな表情や仕草をしているのかを初めて見る。胸懐
からお金を出しては広げて数え、算盤を入れながら1枚1枚金貨を噛んでいる。
本物かどうかを確かめるように。ごうつく婆の顔に金貨が反射して光っていた。
英が2回目におみつの部屋を訪ねるシーンでは、部屋の内側にいて襲撃される
感覚をいっしょに味わうことができた。
英が母親に別れを告げるシーン。娘を案じ、初めて母親らしい言葉をかける清
を英は泣きながら見つめて、腕で涙をぬぐっていた。こんな年寄りは斬り殺さ
れたほうがいいのかね、と聞く母親に「生きてください!」と力強く返す英。
その時の表情が初めて見えたせいか、今日はここで一番涙があふれてしまった。
(私は英が疎んじるこの母親の立場にかなり感情移入して見てしまう。)
そして、最後。
「・・・終生、誠実な人間になるようにつとめます」ということばと、最後の
「愛しています」が今日ようやく結びついた。(遅っ!!)
千秋楽では座席の関係で英のラストの表情を見ることができなかったので、ひ
たすら耳を傾けて聞いていた。その「愛しています」はいつものように高らか
に響かず、力が抜けていて、耳に優しく、心にすーっと気持ちよく入ってきた。
そして私は、最初に観た時のようにまた素直に泣くことができた。
舞台を表と裏と前と後ろと天空から眺めて楽しんだ1か月。私自身は見るたび
に違う感想を持ち帰った作品だった。
犯罪者の心理劇でもあり、ラブストーリーでもあり、名誉や権力に固執する母
親と娘の確執の物語でもあったり、理論だけで実行に移せない志士たちと単独
で行動を起こせる英との対比があったり、思想ではなく金を使って革命を起こ
す男の話があったり、金があっても破滅にいたってしまう男がいたり、志に破
れた男が金のために運命に翻弄されたり。
どの登場人物に感情移入するかによっても微妙に印象が違う。それはそれで、
その時々で味わえばいいんだと思う。
公演前に読みかけて中断していた原作「罪と罰」の上下巻通読を再開し、公演
中に読み終えたのも私にはオマケの収穫だった。
<英に伝えたいこと>
三条英様、今までごめんなさい。私、ずっと歪んだ見方をしていました。
実は大阪初日に見て以来、ラストのところで、あなたはまだあきらめていないの
ではと思えて仕方なかったのです。つまり、牢を出てから後、社会の片隅でひっ
そりと罪の意識に苛まれながら生きてゆくなんてことはせず、恩赦という制度、
ルールをすんなり受け入れて、今度こそどこかで自分の理想を実現しようとして
いるのだ、と。あなたの顔が晴れやかに見えたのは愛の力のせいもあるし、才谷
氏とともに日本の未来のために尽くすことで自分の罪を償おうと決意しているか
らなのだと思っていました。
罪を犯したあなたが表舞台で活躍するのをゆるしてしまうぐらい三条英様、あな
たは日本にとって重要人物で、未来を託すべき人間なのだと思えてしまったから
です。(遠山の金さんやミッキーマウスと並ぶほどの有名人でしたね・・・。)
幕末のこの時代、罪は雪のシートで覆い隠し、恩赦でリセットすればあなたは時
代のスターになれるかも・・・と。
だからといって、人間は罪を簡単に忘れることなどできないでしょうけれど。
きょうは「愛しています」という言葉が違う響きで私の胸に染みました。
あなたの顔がいつも晴れやかに輝いていたのは恩赦で解放されるからではなく、
自分の罪を償う覚悟ができたからなのですね! 家族の期待からも解き放たれ、
自分の<生活>をちゃんと見つけたからですね。
その目に大川の緑はどんなふうに映るでしょう。あなたを扉の外で迎える人の
中に才谷氏がいないのは、私も心から残念でなりません。
如月十八日 私のはるか前方へ
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