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○観劇を決めた理由
野田秀樹さんの作品だから。
○販売グッズ
公演パンフレット、『解散後全劇作』(野田さんの戯曲集)
以下、かなりネタバレです。ご注意!
舞台装置、音など
演出がすごいと思ったので、まずは装置、小道具などについて。
中央に四角い特設ステージがあって、それをはさむように客席。開演前の舞台上
には椅子数個が置かれ、クッション材(エアキャップ)を巻いたポールが数本。
舞台全体を帯状に覆うように敷かれたクッション材も目を引く。
具体的に何かを表現した装置は一切なく、芝居が始まるとポールをドアの扉に見
立てたり、椅子が時には墓石になったりする。その時々で見立てがどんどん変わ
り、場面転換にもなっていく。そのスピーディーな展開が殺人、暗殺、蜂起・・・
といった不穏な空気を加速させるように感じられた。
音も面白い。舞台の効果音を脇に控えた役者さんたちが自分たちで入れる。音が
見えるなんて、歌舞伎みたい。出演者たちの声が時おり効果音やBGMのように使
われるのも独特。
あとは人間の肉体。舞台の周りの小ステップやスロープを巧みに使って、人間が
昇ったり降りたり、グルグル走り回ったり、陰を潜めて待機したり。シンプルな
装置なのにダイナミックに感じるのはこの人間の動きのせいだと思う。
色の印象
観終わった後に色の印象が強く残った。
主人公の三条英が何度か繰り返した<大川の緑>と、大地に流した<血の赤>。
そして、頭上から降ってくる夥しい量の<金>の色。
(ここはかなりスペクタクルで、ずうっと見とれてしまった。)
言葉の力
野田さんの書く台詞にはやっぱり力がある。美しさがある。冒頭(とラスト)に読
まれる詩や、<音を立てて世界が崩れていくと言うけれど・・・>のあのフレーズ、
<・・・・・・お前を待ち続けるんだ>のとびきりロマンチックな(と私が思う)
台詞、<彼の方角と書いて彼方と呼ぶのよ>を受けた<師走八日、私のはるか彼方
へ>。<理想に生きて、思想に殺される・・・>などとさらっと言う重い言葉など。
台詞の力でグイッとのめり込んでしまうと、登場人物の口からそれらが飛び出し語
られるたび、涙が出そうになる。
芝居の終盤はほとんど最後まで言葉が琴線に触れっぱなしだった。
英の気持ち
ラスト近くで才谷の前で号泣してしまう英。あれは、小さい頃から特別なものを背
負ってきた人間が決壊して、中身があふれ出した瞬間だったんだろうか?
ぜったいに!という言葉をつけて人が主張する時、かなりの悲壮感があるものだ。
ぜったいに!自分が正しい。世の中には天才と凡人がいて天才はある一線を越える
権利がある。優秀な人間を生かすために障壁となるものは抹殺してもよい。それが
他人のためにもなる。という英自身の論理。
もしかして、泣き叫びながら空っぽになるまで今までの自分を出し切ってしまった
のかな? だから、あのあと、あんなに素直な言葉が言えたんだろうか?
「間違っていたら、ゆるしてね」と。
最前列で観た、十字路でおじぎをする英の表情はすでに清々しかった。涙は伝ってい
たけれど。刀を前に置き、迷いのない顔で気持ちよさそうに大地に接吻していた。
それにしても英の言葉に才谷が返した「お前を待ち続ける」という言葉は、なんて温
かいんだろう。なんて重みがあるんだろう。
だからこそ、あのラスト。英の晴れ晴れとした表情が哀しすぎる。
2月の大阪公演では客席の角度を替えて何度か現場検証(笑)を行ってみたい。
そうそう。個人的に応援していた中村まことさん。聞太を観るには特等の席だった。
今回の役、中村さんの持ち味がすごく生きていてイイなと思った。目の前に突如現れ
るラストシーンはちょっとしたサプライズだったかも。
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