おねえちゃんの卒業式

卒業式の朝、おねえちゃん、はかまを着付けしてもらったんだって。
大学の中でしてもらったんだって。
たいていは髪結いもしてもらったんだけど、
おねえちゃん、ホテルで自分でしたんだって。
なかなか決まらなくて苦心したんだってさ。

おねえちゃん着付けしてる間、おかあちゃん、
たまたま知り合ったおよそのおかあさんとおしゃべりしたり、
ゆでたまご食べたり、
爪に色つけたりしてたんだって。
でもきちんと乾かさなかったから、あとでぐちゃぐちゃになっちゃったんだってさ。
慣れないことはするもんでないね。

おかあちゃん、入学式の日のこと思い出してたんだって。
会場をおねえちゃん覚えてなくて、
おかあちゃんとおねえちゃん間違って大学に来てさ。
あわててスクールバスで国際会館の方に行ったんだったね。
同じように間違った女の子がおとうさんと乗ってたって。

あれから４年経ったんだなあ～って、
おかあちゃんしみじみしたんだって。


着付けも終わって式場の体育館に行った頃に、おとうちゃん到着したんだって。

おとうちゃん、おねえちゃんが京都にいる内に必ず一度は顔見に来るからねって約束してたんだけどずぅっと行けなくて、初めて行ったんだってさ。
良かったね。約束守れて。


式場には、いろんな人がいたんだって。
スーツの人、着物の人、はかまの人、なんかコスプレの人、民族衣装の留学生、いろいろ。

学長さん、初めに、おねえちゃんのお友だちで事件に巻き込まれて亡くなったおにいさんのことをお話してから、挨拶をしたんだって。
その人は、おねえちゃんのとこにみんなで集まったりしたお友だちの一人で、いっしょに勉強したり見学しに行ったりした仲間だったんだよ。
卒業制作展には、その人のコーナーもあったんだって。
犯人はまだつかまっていないんだよ。



卒業式が終わって卒業証書もらうお部屋に行く途中で、
やっとこさ写真を撮ったんだってさ。
おねえちゃんとは、ここでいったんさよなら。




おねえちゃんと別れてからおとうちゃんとおかあちゃん、
四条に出て、ブラブラきょろきょろクンクンして、
すてきなお店に寄ったんだって。
一見さんお断りかと思ったら違って、
お座敷に上がらしてもらったんだって。
近又って書いて、きんまたって言うんだってさ。
商人宿だったお宿で、今のご亭主が京会席のお店にしたんだってさ。
創業１８０１年って、いつのこと

お玄関の灯りにこおろぎがいたんだって。
彫り物だって。




とっても美味しかったよ～って、おかあちゃんお話ばっかり。

初めに来た酢味噌和えとあんきも豆腐、
美味しいね～って食べちゃってから、
あら写真忘れてたって、空っぽの合わせ貝の器だけパチリ。
空の器撮ってどうすんの、おかあちゃん。



二つ目。お刺身。ほたてと鯛。



三つ目。おこわ。しらうおとでんぶが乗ってる。



四つ目。煮物。



五つ目。ますの焼き物とご飯と赤だし。
ほかに、おなべで炊いたご飯。



マッチをパチリ。



お店の前でパチリ。
もと写真屋さんにいらした女の子が撮ってくれたんだって。
さすが、構図が決まってる。




ホテルに預けてたお荷物引き取ってお土産買って、
おねえちゃんからお着物受け取って、バイバイして、
新幹線で東京に戻ったんだって。
新幹線の中から、富士山がきれいに見えたからパチリ。
風が強かったから、雲も飛んでっちゃったのかな