ももママの心のblog

猫が大好き。有料老人ホームで生活相談員をしています。映画が好きだけど、なかなか見られません。

風のガーデン#9

2008-12-06 | テレビドラマ
今回は本当に中身の濃い回でした。人によっては、泣きっぱなしだったのではないでしょうか?

物語は貞三(緒方拳)が貞美(中井貴一)のキャンピングカーを訪ねるところから始まります。暗い画面に映し出される貞三に台詞はありません。緒方拳の鬼気迫る演技の見せ所です。何しろ、貞美は来客に気がつかず、寝入っているのですが(重い病のための疲れか、それとも薬で寝ているのか?)、貞三は医師ですから周囲にある薬や捨てられた麻薬パッチのシールなどから貞美の病気の状況を知ってしまうのです。
 そして、翌日札幌へ行き、貞美の親友である医師の水木(布施博)に会います。そして、水木から貞美を犯している病の深刻さを知ることになります。さらにその足で、義姉(草笛光子)に会いに行き、心のうちを吐露します。ここがまた、緒方拳と草笛光子の演技のガチンコが見れました。貞美は、自分が感情のままに行動したことにより、息子と孫の間を裂いてきたことを悔いるのです。そして、「何をしたら良いのでしょうか」と問います。貞三が貞美の病状を伝えるのに「お墓に入る順番」という表現がありましたが、さすが倉本聰。「このままお墓に入るつもり?」と義姉に言われた返しとして伝えていくのです。うまい脚本ですね。

 エリカ(石田エリ)に貞美の病状が伝わるくだりも、自然な展開でした。貞三が孫のルイにだけといって伝えるのですが、ルイはエリカから父の友人たちがそれと知らずに「生前葬」をやったことを知るのです。知らないとはいえその残酷さに感情的になるルイ。そして、エリカはルイから聞いてしまい、動揺します。

 貞美が岳からたくさんの花言葉を教えてもらい、それが貞三の作であることを知るシーン。美しく、胸に迫りました。亡き妻のこと、孫たちのことが盛り込まれているのに、自分のことは盛り込まれていない。そして、極めつけは「孫娘の嫁ぐ日」との言葉を聞き、自分がルイの花嫁姿を見ることができないだろうという現実に打ちのめされるのです。

 夜遅く、キャンピングカーの周辺で岳に教わった「エゾエンゴサク」の球根を植えているシーンも地味ながら胸に迫ります。ルイが訪ねてきて一緒に球根を植えるのですが、ここが花でいっぱいになるときに貞美はこの世にいないのです。それを知りながら、そのことには一切触れず、親子は球根を一緒に植えるのでした。泣けます!

 そして、貞三と貞美の再会のシーンとなるのですが、ここが今回の山場でした。カメラの切り替えはありますが、ほとんど緒方拳も中井貴一も動きがありません。その動かない二人が淡々と長年の再会の言葉を交わすのです。「よぉ」「ご無沙汰しています」・・・激しい衝突があったはずのこの親子のさりげない言葉のやり取りに、親子の愛を感じたのは私だけではないでしょう。そして、貞三は貞美を「ガブさん」と呼ぼうとします。恐縮する貞美。「その方が岳にばれないから」と孫をダシにしてしまいます。気まずさを補うつもりなのでしょうか・・・。
 言葉を交わす二人。自然の中の静かなシーンです。トンボが緒方拳の肩に止まりました。そして、その後、二人の間においてあるペットボトルにもトンボが止まったのです。演技の神様が降りてきたみたいでした。胸が震えました。

 このドラマは本当に一言、一言を大事に会話しています。そんな登場人物たちを見ていて、私は丁寧に生きていないなあと、反省させられています。何かをしながら、相手を見ずに会話してることが多すぎる・・・。かけがえのない一日、一日を生きているのは、告知されている人だけではないはず。私もかけがえのない今日を、大事に丁寧に生きて行きたいとと思っています。これが、今回の感想になっちゃいます。


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