moiのブログ~日々のカフェ

北欧&フィンランドを愛するカフェ店主が綴る日々のあれやこれや

『シベリウス』がおもしろい

2005-05-12 16:38:47 | コラム、というか
想家で浪費家、見栄っ張りで、おまけに小心者、そんな作曲家シベリウスの素顔をわかりやすいことばでつづった『シベリウス アイノラ荘の音楽大使』(ひのまどか著 リブリオ出版)は、相当おもしろい。

「禿げ上がった石臼のような頭をもち、つねに眉間にシワをよせた気むずかし屋の国民的作曲家」というイメージは、ここではあまり感じられない。酒に溺れては何日も家をあけ、イタリアでは家族を放置していきなり失踪、莫大な借金で自己破産寸前にもかかわらず、出版社との契約を結べばいきなり庭に念願の「サウナ小屋」を建てしまう。そのくせ「私がいったい何をしたというのか!私は借金を払うためにこの世に送られてきたのか!」などと逆ギレする始末。家族からしたら、これはもうAランクの「ダメおやじ」である。「人間くさい」といえばいえなくもないが。それにしても、浪費家でおカネの苦労が絶えなかったシベリウスが紙幣の肖像になってしまうのだから、世の中というのは皮肉なものだ(画像/旧100mk紙幣 現在の通貨はユーロのためすでに廃止)。

ところで、そんなシベリウスのお孫さんがここmoiをおとずれたことがある。ウソみたいな話だがホントである。建築家で、フィンランド建築博物館の館長もされているセヴェリ・ブロムシュテットさんがそのひと。お母さんが、シベリウスの六女ヘイディさん、お父さんは高名な建築家でシベリウスの墓碑の設計も手がけたアウリス・ブロムシュテットさんである。2002年に「アルヴァー・アールトの住宅展」が開催された折り、レクチャーの打ち上げがてら立ち寄ってくださったのだ。お会いしたセヴェリさんはとてもフレンドリーで、なおかつ身のこなしも洗練されていて「なんかフィンランド人っぽくないなぁ」と感じた記憶がある(笑)。いまにして思えば、上流家庭の出身で、同じような境遇の人々との交流がほとんどだった「シベリウス家の血」がなせるわざだったかもしれない。

ちなみにmoiのコーヒーを口にしたセヴェリさんの感想は、「Velvet!」。シベリウスの伝記をよんだおかげで、思いがけず記憶がよみがえった。