吉良吉影は静かに暮らしたい

植物の心のような人生を・・・・、そんな平穏な生活こそ、わたしの目標なのです。

P.カレル『砂漠のキツネ』⑥(フジ出版社 / 昭和46年4月15日5版発行)

2018-07-30 06:05:24 | 紙の本を読みなよ 槙島聖護

(承前)

【北アフリカ全図】


6.トブルク要塞陥落


 ゴト・エル・ウアレブから脱出したロンメルは休む間もなく直ちに英軍防衛線ガザラ・ラインの南端ビル・ハケイム攻略を指示する。
 本来はガザラ・ライン攻撃の際にトリエステ師団(イタリア)が占拠するはずだったが、全く歯が立っていなかった。ビル・ハケイムに陣取っていたのは勇猛で知られる自由フランス軍第一旅団とユダヤ人義勇軍大隊だったのである。

 ロンメルにとって幸いだったのはこのガザラ・ラインの南の要であるビル・ハケイムを英軍が全兵力で守る行動に出なかったことであった。
 凄まじい戦闘の末にビル・ハケイムは陥落した。


※ドイツ・アフリカ軍団のあたらしい仲間①『Ⅳ号戦車F2型』・・・あんこうチームでお馴染み

 英軍防衛線ガザラ・ラインは消滅し、トブルク要塞は丸裸になった。トブルクを攻略するのは今しかない!
 ロンメルは機動部隊に命じてトブルク市街の前を通過させた。前年と同様トブルクを素通りし、エジプト国境へと向かうよう見せかけたのだ。英軍はこれに見事に引っ掛かった。
 『警報!ロンメルはエジプト国境に進撃中!
 ロンメルはすぐさま引き返しトブルク要塞を急襲、ついにこれをも陥落させてしまう。

 英軍は呆然とした。数日前にゴト・エル・ウアレブの穴から這い出したばかりのドイツ軍がもはや戦いの主導権を握っているのだ。

 戦術の法則によると攻撃側の兵力は防御側よりも強力でなければならないのに、攻撃をするロンメルはいつも劣勢である。彼はそんな法則などにかまわない。そして数のうえでは絶対的に優勢な敵をも打ち破ってしまう。
 ロンメルはこう語っている。
 『イギリス軍戦車の数の上での優位は気にしませんな。相手の司令官が別々に投入する限りではね。全軍をそれに当てればこちらはいつも優勢なのです。』と。

 ロンメルはついに軍人としての最高位である元帥に昇進した。

 ケッセルリング元帥がこのとき苦言を呈している。
 『ロンメルはもはや師団長や軍団長ではないのだ。全軍を率いる者として連絡のとれる場所にいてもらはなくてはならない
 しかし誰がロンメルを後方に留めることができよう。
 ロンメルが最前線で攻撃に加わるのは、戦車戦術と部隊の真理を正しく理解していたからだ。
 『神経を使う動きの速い戦車戦において戦闘部隊にはいつもすぐ休息が必要になる。勇士だけからなる軍隊はない。そのときにはこれこれの理由で進めないと報告すればよろしい。この自然的な疲労現象に対して、部隊指揮官は自らの責任で戦い、将兵の緊張を解いてやらなくてはならない。指揮官は戦闘の原動力たるべきで、最前線にあっても常にコントロールの計算をなすべきである。

 (つづく)



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