吉良吉影は静かに暮らしたい

植物の心のような人生を・・・・、そんな平穏な生活こそ、わたしの目標なのです。

P.カレル『砂漠のキツネ』⑤(フジ出版社 / 昭和46年4月15日5版発行)

2018-07-26 06:00:39 | 紙の本を読みなよ 槙島聖護

(承前)

【北アフリカ全図】


5.ガザラ・ライン攻撃

 英軍はガザラ一帯に通称『ボックス』なる強力な地雷陣地を構築してロンメルの攻勢に対抗した。
 ロンメルはこの陣地を正面攻撃する愚は犯さなかった。正面に大々的な陽動攻撃を掛け、敵が気を取られている隙に、ガザラ陣地を南へ迂回して防衛線の心臓を衝き、敵を分断して個別に殲滅する、これがロンメルの作戦だった。


※ガザラ・ライン攻撃に関するフォン・フェルスト将軍のスケッチ。

 まず北方で案山子戦車と砂塵発生器が大々的な攻撃を演出する。砂塵発生器とはトラックの荷台に航空機のエンジンを積んだもので、プロペラを回して、あたかも戦車の大軍団が迫っているかのように砂塵を巻き上げるドイツ軍の秘密兵器()である。

 ところが、地雷原を迂回して敵陣地に迫ったドイツ・アフリカ軍団の本体はここで恐るべき敵に遭遇する。新型のグラント戦車だった。


※アメリカから供給された新型M3グラント戦車。・・・。『うさぎさんチーム』でお馴染み。

 そしてこれも新型の6ポンド対戦車砲がドイツ・アフリカ軍団を襲う。


※新型6ポンド対戦車砲

 ガザラ・ラインの向こうにどれだけの敵の戦力が集結しているのか、ドイツ軍は把握していなかった(上掲のスケッチにも『?』のマークが付いている)。敵の戦力を見誤ったのだ。敵を分断しようとしたのだが、圧倒的な敵兵力の中に飛び込んでしまい、気が付くと『袋のネズミ』状態になっていたのだった。
 ドイツ軍は高射砲列を作ってグラント戦車を撃破したが、部隊は孤立し補給もままならない。
 補給の差が勝敗を決する砂漠戦で、輜重部隊が脱落してしまったのは実に大きな痛手だった。


※DAK(ドイツ・アフリカ軍団本体)、第90軽機甲師団、アリエテ戦車師団(イタリア)は強力な敵に行く手を阻まれた。

 まさに全滅の危機だった。ドイツ軍はじりじりと後退したが、後ろは地雷原に守られた『ボックス陣地』である。
 しかし、もはや総力をあげてゴト・エル・ウアレブで『ボックス陣地』を突破して後退するしか逃げ道はなかった。

 ロンメルもいよいよ最期かと思われたが、このとき奇跡が起こる。
 ボックス陣地を突破しようと躍起になっていたロンメルが突然指示した。
 『敵はひるんでいる。白旗を振ってやれば降伏するぞ。
 あくまでも強気のハッタリだったが、その呼びかけに応じて何と2000人の兵士が300人のドイツ軍に降伏()し、ドイツ・アフリカ軍団は危ういところで危機を脱し、西方へと逃げのびたのだった。

 (つづく)



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