岡山県の北部に八束村(やつかむら)という地があり、ここが八つ墓村のモデルと言われている。
行ってみると高原の明るい山村で、近くには夢千代日記で有名な湯村温泉やジャージー牛乳で有名な蒜山高原などがあり、おどろおどろしい横溝ワールドとはおよそ縁のない場所なのである。ただし、山を越えればスグ日本海に抜けるという位置関係から、敗れた尼子の落武者たちが隠れ棲むにはなかなかイイ場所だと思えて来る。
八つ墓村はよくできた因縁話とでもいう物語で、推理やサスペンスというよりもどちらかといえば怪談に近い。
野村芳太郎監督はこれをキチンと怪談話として映像化している。物語の始まりに文明の象徴のような飛行機を登場させ、日本が近代化したことを描く。この辺のシーンは横溝正史作品というよりも松本清張作品のような出だしで、面白い。しかし、その明るく近代的な文明世界に突如として異界からの攻撃が加えられる。主人公を迎えにきた丑松の怪死である。この辺のコントラストの巧みさは、流石としか言いようがない。
主人公のショーケンは岡山の山村へと向かうのだが、森林の描写は市川作品とは違いあくまで明るい風景として撮られている。私はこの地方の道路を結構走ったことがあるのだが、見ていて『あるある』と思うような風景が続いていく。非常にリアルなのだ。
そうして谷合いの多治見家に到着するのだが、石垣の上に聳える城郭のような凄いお屋敷である。『掃除や維持費が大変だろうな』と思うし、この辺の山を全て所有しているとか聞かされると、私なぞは『どうやって固定資産税を払おうか』と悩んでしまう。今となってはこんな負の財産としか言いようがナイ資産なんかゼッタイに欲しくない!
実は私の実家も昔は大きな地主だったのですが、農地解放のあおりを受けて田畑は全て小作人に分割されてしまいました。残ったのは田んぼの『のり面』と言われる傾斜地と山林だけ、外材の流入で日本の林業が壊滅すると、あっという間に没落してしまいました。もし、これを承継してしまうと、もう帰ることもない田舎の土地の固定資産税だけが毎年請求されるようになってしまうので『それだけは何としても避けたい』と思っているワタシです。
映画に話を戻すと、物語中盤の津山事件を怪演する山崎努が圧巻、これとラストの小川真由美が演じる洞窟内での鬼ごっこの2つのシーンが双璧を成す物語のヤマ場になっています。この2つのシーンだけでも観る価値はあります。
渥美清が演じる金田一耕助は、もはや探偵とはいえず郷土史家のような趣で物語の因縁を解き明かすだけの役割しかありません。
物語のラストは『騙し討ちに遭った尼子の落武者たちの恨みが、不思議な縁(えにし)によって晴らされた』という一種の爽快感さえある終わり方になっています。
不運な尼子一族の最後(以前に書いた『山中鹿之助』の章をご参照ください)を思えば、祟りはあって当然の結末と言えるでしょう。
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よろしく頼む。
ああ、お元気になられて、良かったのだわ。
私、遠くの惑星からロム専になるわ。
お話できて楽しかったわ、でわ。
農地開放の下りが、ああ、我が家の昔と一緒と。
結局、自殺者が出るのですけど。
映画も観ましたが、
そっちのコメントで申し訳ない。