高田由紀子 作
おとないちあき 絵
ポプラ社
脳こうそくで倒れたおばあちゃんが、一人暮らししてた大阪から、うちへやってきた。彼女は元気な頃のおしゃれなおばあちゃんとは別人になっていた。口も悪いし、わがままだ。杖をついて歩くのもままならず、家族はおばあちゃんに振り回されていた。あかりは、そんな家の問題を友達に相談できないでいた。唯一心を許せたのは、クラスメイトの男子藤井だけだった。おばあちゃんが食べたがっているクリームパンを探しに入った店〈えちごや〉で藤井が店番をしていたのがきっかけだった。藤井は地味な子で、最初は藤井と話しているのを女友達に見られたくないと思っていたあかりだが、藤井と話しているうちに、どんどん藤井の良いところが見えてきた。おばあちゃんのことで家がガタガタしている時も、藤井と心癒される時間を持つことができるほどになっていく。
おばあちゃんの体の不自由さと、精神的な変化は実にリアルで、なかなか他の本では表現されない部分まで書かれている。おばあちゃんがトイレにいけず失敗してしまう姿を汚いと思うあかりの気持ちは、当たり前なことだと言って包み込んでくれる藤井の言葉が新鮮だった。無様な姿を見せたくないというおばあちゃんの声など、子供たちにも知ってもらいたいことが詰まっている物語でした。