めいすいの写真日記

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巨匠小津安二郎監督「浮草」

2020-07-05 | 映画

                                                              2020.7.4  BS4K
 
  巨匠・小津安二郎監督が、旅回りの一座と、座長をめぐる複雑な人間関係を、ユーモアとペーソスを交え、きめ細かく描いた傑作。溝口健二、黒澤明、はじめ数々の傑作を手がけた名カメラマン・宮川一夫と組んだ唯一の作品である。宮川一夫撮影による色彩をおさえ、落ち着いた色のアグファのカラー映像が、しがない旅役者の世界の情緒を際立たせる作品である。

【2018年デジタル修復版での色の再現】
 浮草は、公開当時のフィルムは劣化していて退色が進んでいた。また使用していたのはドイツのアグファカラー・フィルム、淡い色調を狙う時に効果を発揮するとされていたが、すでに製造は中止されていた。

そこで色度図を用い、残された資料より、色を数値化することにより再現したという。

その結果生々しい色は抑えられ。落ち着いた色になり、小津作品の色彩が当時のままに再現された。デジタル修復されたフィルムと古いフィルムを比較したビデオを見ると一目瞭然である。※1

冒頭で映る郵便ポスとは、ストーリー展開での重要な伏線となるが、この赤い色は、いろいろな場面で用いられる。

こちらも、庭先の鶏頭の赤が強調されている。

監督:小津安二郎
製作:永田雅一
撮影:宮川一夫
現像:東京現像所(アグファカラー)

出演
嵐駒十郎:中村鴈治郎
すみ子:京マチ子
加代:若尾文子
本間清:川口浩
清の母お芳:杉村春子

 中村鴈治郎、京マチ子、若尾文子、杉村春子はじめ名優たちの演技が素晴らしい。特に京マチ子、若尾文子の和服姿はとても魅力的だ。熱演はしているが際だった派手さはなく、二人とも小津安二郎の世界の中に収まっている

 舞台初日、「名月赤城山」 国定忠治(すみ子:京マチ子)

 劇中劇「田舎旅回り一座」の舞台がとても良く出来ていた。これも名優が演技し、小津安二郎監督の演技指導があるので当然とはいえるのだが、田舎芝居風には見えても、演技はピタリと決まっており、客席からのかけ声も調子が良く素晴らしい。客席からモノが投げ込まれるのもタイミングが合っている。幕が上がった後も「カラスなぜ泣くの?」と烏の鳴き声が聞こえてきてユーモラスだ。

「南国土佐を後にして」 芸妓(加代:若尾文子)と小坊主 
 芸妓の踊りと小坊主の踊りも息がピッタリ、小坊主はモノが客席から投げ込まれると取りに行き懐に入れ次第、踊る。舞台下のモノの投げ入れも舞台から降りて拾い、すぐに舞台に上がって踊りの体制に入る。その動作は、とても機敏で曲にも合っており素晴らしいパーフォーマンスだった。
 優秀な俳優と名監督が携わる舞台は。大映(株)が主催する舞台といっても良いくらいの出来映えだった。

  嵐駒十郎(中村鴈治郎)とすみ子(京マチ子)は狭い道路を挟んで、降りしきる大雨の中、激しく罵り合う。ここが見どころだ。赤い番傘がアクセント。

【小津安二郎監督の映画への世界の評価】
 2014年現在、小津安二郎の「東京物語」は「世界の有名映画監督達が選ぶオールタイム・ベストテン」で1位に輝いてる。
 第2位は「2001年宇宙の旅」(1968年スタンリー・キューブリック)、第3位は「市民ケーン」(1941年オーソンウェルズ)である。
 山田洋次監督は、小津作品が、少ない予算(2001年宇宙の旅の100分の1?程度)、小さな映画で世界一に輝いたことについて驚くという。そして「見れば見るほど精密な作業を積み重ねたすごみのある映画だということが次第に分かってくる」という。そして小津安二郎が亡くなってから世界に認められたことについて「さぞ、驚いているだろう」と述べている。

 ※1 「 4大巨匠 奇跡の名画~4Kでよみがえる黒沢・溝口・小津」2020.5.25 NHK BS4K より



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