wowow 2021/1/17
小津安二郎監督が広津和郎の小説「父と娘」を原作に父娘の絆を描いた名作ホームドラマ。
小津監督が娘の結婚や親の孤独を題材にした初めての作品で、その後の小津作品の作風を決定づけた。
1949年度の「 キネマ旬報 ベスト・テン」の日本映画部門で1位に輝いている。
日本国外でも非常に高い評価を得ており、英国映画協会(BFI)選定の2012年版「批評家が選ぶ
史上最高の映画トップ50」で15位となっている。
【監督】 小津安二郎
【原作】 廣津和郎「父と娘」より
【脚本】 野田高梧、小津安二郎
【撮影】撮影 厚田雄春
1949年製作/108分/松竹
【配役】
曾宮周吉 ・・・ 笠智衆
紀子 ・・・原節子
北川アヤ ・・・月丘夢路
田口まさ ・・・杉村春子(文学座)
勝義 ・・・青木放屁
服部昌 ・・・宇佐美淳
三輪秋子 ・・・ 三宅邦子
小野寺譲 ・・・三島雅夫
【あらすじ】
大学教授の周吉は早くに妻に先立たれ、娘の紀子と2人きりで鎌倉に住んでいる。
いまだに独身の紀子を心配する周吉だったが、周吉の妹まさが縁談を勧めても紀子は頑なに受け入れ
ようとしない。周吉はそんな紀子に、自分も再婚を考えていると告げる。
【感想】
この映画は公開が戦後4年しか経っていない時期のものである。この時代はまさに貧困の時代で、
多くの人が満足に食物すら取ることが出来なかつた。服装、住居も勿論である。
そして、この映画を見て、裕福な理想の家庭を思い浮かべたことだろう。
紀子のなんでもない服装にも優雅さを感じさせる。イチゴの大きなショートケーキも手に入らない貴重品である。
従って、この映画に描かれているのは,本当に裕福な人々の人の話である。
また、個人がカメラを持つことも考えられない時代だった。映画の中でも結婚式の記念写真を珍しそうに見ている場面がある。
お見合いの場は能楽堂というのも裕福な人達しか出来なかったことだろう。電話は一般家庭には普及していない時代である。
銀座でバイオリンの演奏会を聴くというのも同じである。映画では「巌本真理 提琴 独奏会」となっていた。
ピアノ伴奏もないみたいです。
鎌倉の七里ヶ浜をサイクリングする紀子と服部(周吉の部下後に別の女性と結婚)
このシーンも、将来はこうしたことも出来るようになるのかなということ。
周吉は紀子に見合い話を進めようとする。
紀子の花嫁姿。いかに戦後まもなくとはいえ、さすがに三つ指を立てて別れの挨拶を告げる紀子の美しさは
特筆すべきものである。
映画の撮影は当時の撮影機材の可搬性の問題もあり、ローアングルでの固定である。
それがかえって、この映画の安定感を印象づけている。カメラワークも苦労したと思う。
その撮影手法の一部が現在にも引き継がれているのではないだろうか。
封切りしてから70年以上、経過してしまったけれど、ホームドラマとして、あまり違和感を感じない
のは不思議なことでもあり、素晴らしいことだと思う。映画が封切られた当時の方が明るい未来を感じ、
夢見ることがことができたのではないか。