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MIUコンサルティングオフィス・社会保険労務士三浦剛のブログです。

コンプライアンス経営へ No.64(産前産後休業)2

2011年04月24日 | 会社の法律ミニレッスン
会社の法律ミニレッスン企業へのコンプライアンス(法令遵守)の要請は高まっています。
 「知らなかった」では済まなくなってきています。日曜日、「会社の法律」をお勉強!

 第64回は、「産前産後休業」その2です。

 労働基準法第65条
『使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
2 使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。』

 今回は「不利益取り扱いの禁止」についてです。

□産前産後休業期間は無給でよいの?
 前回書きましたように、産前産後休業期間については、賃金の支払いが義務津けられていません。と言うことで、その期間の給与を支払わないことは可能です(ノーワーク・ノーペイの原則です)
 また、この間は、健康保険から出産手当金が支給されます。

では、賞与はどうでしょうか?
▽賞与額を賞与算定期間内の実勤務日数に応じて決めている場合
 産前産後休業による不就労の日数に応じて賞与を減額することは、それだけで直ちに違法とはなりません。
 しかしながら、例えば、
▽賞与算定期間内に一定以上の出勤を賞与の支給条件と定めている場合
 他に不就労がなくても産前産後休業だけで賞与が全額不支給にすることは、公序良俗違反として無効になると考えられます。
 どうして?産前産後休業をとると、経済的利益を得られない(=賞与が出ない)ことによって、法が保障した権利行使を抑制し(=産休を取りづらくなって)、法が各権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものとして公序良俗違反と考えられます。

 参考になるのが、東朋学園事件(最高裁第一小H15.12.4)があります。

 賞与の支給要件として支給対象期間の出勤率が90%以上であることを給与規程に定め、その出勤率の算定に当たり、産前産後休業期間、勤務時間短縮による育児時間を取得した場合にも欠勤と同視して賞与を支給しなかった取り扱いの有効性が問題になった事案です。
 一審判決や控訴審判決では90%条項で産休や育児のための時間短縮を欠勤扱いとしたのは公序良俗違反で無効であるとして全額の賞与請求を認めたました。しかし、最高裁では、賞与全額を不支給にすることは認められないにしても、産休や育児のために短縮した時間分については就労していないのでその不就労の部分について賞与に反映することは違法ではないと言う判断をして、控訴審に差し戻しました。

 最後に、均等法第9条では「婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱」を禁止しています。
 賞与や昇給の査定において、他の私傷病による欠勤については出勤と同様に取り扱っているのに、産前産後休業だけ欠勤として取り扱うと、それは無効になると考えられます。