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MIUコンサルティングオフィス・社会保険労務士三浦剛のブログです。

最高裁判決:業務委託契約者も労働組合法上の労働者

2011年04月13日 | 労働法
【業務委託契約者も労働者=INAX子会社の敗訴確定-最高裁】
     《時事ドットコム 2011/04/12-18:51》より

 INAX(現LIXIL)子会社の修理会社「INAXメンテナンス」と業務委託契約を結んだ個人事業主は、労働組合法上の労働者かどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(那須弘平裁判長)は12日、労働者に当たるとの判断を示した。
 労働者と認められれば、会社との団体交渉が可能になる。同様の訴訟は日本ビクターの子会社でも係争中。実質的に会社の仕事しかできないのに、業務委託などの形を取るケースは少なくなく、影響を与えそうだ。
 問題となったのは、INAX製品の修理点検をするカスタマーエンジニア(CE)と呼ばれる個人事業主。CEの加入する労組との団交拒否を不当労働行為とした中央労働委員会の救済命令に対し、会社側が取り消しを求め提訴していた。
 第3小法廷は、会社がCEとの契約内容を一方的に決め、CEは会社側の依頼に応じなければならない関係にある上、報酬も業務との対価性があると指摘。労働者と認められるとして、救済命令を取り消した二審判決を破棄し、会社側の請求を棄却した。会社側の敗訴が確定した。

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 同じ日に第3小法廷で、劇場側と個人として出演契約を結ぶ音楽家の場合の労働者性についての訴訟でも労組法上の「労働者」に当たるとする判決が出されました。ただし、契約を更新しなかったことが不当労働行為かどうかをめぐっては、審理を東京高裁に差し戻しました。

 よく「使用者」と「労働者」が労働法の世界では出てきます。
 ・労働基準法では第9条で「労働者」を第10条で「使用者」を定義しています。
 ・労働契約法では第2条1項で「労働者」を第2条2項で「使用者」を定義しています。
 ・労働組合法では第3条で「労働者」を第7条で「使用者」を定義しています。
 
 労働基準法第9条の「労働者」と労働組合法第3条の「労働者」は違います。
 例えば、プロ野球選手を労働者とは考える方は少ないと思いますが、プロ野球選手は組合を作っています。ストをしたことがありました。と、労働組合法上は労働者と認められたと言うことです。

 労働組合法第3条
『この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう。』
 職種を問わず、賃金や給料などの収入によって生活する人が労働組合法上の「労働者」です。

 労働者であると
(1)憲法で保障される「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」の三つの権利が認められます。
(2)労働組合が賃金や解雇等で使用者と交渉する権利が団体交渉権です。
▼労働組合が団体交渉を申し込むが
▼会社(=使用者)が正当な理由もないのに労働組合の代表者との団体交渉を拒めば、
(3)労働組合法では、不当労働行為になると定めています。

 業務委託や請負の方は個人事業主であって労働者ではないとなると、労働法の保護の傘から外れることになります。
 例えば、仕事中にケガをしても労災保険が使えない(これには特別加入という制度があります)。契約になるので、いわゆる最低賃金の保障もなくなります。社員同じように働いているのに社会保険に加入されない。

 個人事業主として自分の判断で自由にバリバリ仕事をやっている人もいるでしょう。一方で、社員と同じような労働になっている人もいるでしょう。「諾否の自由」があるかが一つの大きな判断基準だと考えます。
 今回の最高裁の判断は、契約より実態を重視したと言うことでしょうか?
 業務委託や請負の形式であっても、実態が「雇用」と同一視できるなら労働法の保護対象とすべきとの判断でしょう。企業にとっては、再度、実態を見直すことが必要になりそうです。

 「労働者性」の解釈に違いが起こり、問題が発生、最後は訴訟になる。これはそもそも、法律上の「労働者」の定義があいまいだからでしょうね。厚生労働省の研究会は7月に中間報告を出すことになっています。