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MIUコンサルティングオフィス・社会保険労務士三浦剛のブログです。

パワハラとうつ病

2010年01月23日 | メンタルヘルス
先日『松本労基署が「パワハラでうつ病」労災認定』の報道がありました。

長野県松本市の自動車販売会社に勤める同市在住の男性(46)が、「不当な懲戒処分と配置転換などで、うつ病に追い込まれた」として松本労働基準監督署に労働災害を申請し、認定されていたことが分かりました。
労災申請を支援したNPO法人「ユニオンサポートセンター」(同市)によりますと、男性は2006年4月、事務上のミスで顧客とトラブルになり、減給6カ月の懲戒処分を受けたといい、男性は「不当に重い見せしめ的な懲戒処分だった」と主張、「処分後、突然経験したことのない部署に転勤させられ、辞めるよう仕向けられた」といいます。
男性はその後、うつ病と診断され、会社を休職し昨年4月に労災を申請していました。

職権を背景とした嫌がらせであるパワーハラスメント(パワハラ)によるうつ病は立証が難しいため、裁判になるのが一般的ではありますが、今回のような労基署の認定は珍しいといいます。


厚生労働省は、昨年4月に「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」の一部改正されました。心理的負荷の強度「3」に「ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」を新規追加しました。パワハラとともにこの追加が注目されました。なぜか…

1.おおむね労災認定されるには、心理的負荷強度が3である出来事に遭遇した場合は可能性が高く、心理的負荷強度が1や2では難しいと言われています。

2.改正前も上司からのパワハラは精神疾患の労災認定に係る判断指針に含まれていましたが、「上司とのトラブルがあった」(心理的負荷強度は2)として評価されていました。その内容・程度が上司としての指導の範囲を逸脱し、人格や人間性を否定するような言動が認められる場合には「ひどい嫌がらせ、いじめ等」に該当することとして、心理的負荷の強度は2ではなく3となるのです。

改正の契機になった事件は、静岡労基署長(日研化学)事件(東京地判平19.10.15)
MR職社員が上司からの言動が起因して精神疾患を発症し、自殺したことの業務起因性が争われた事件です。長時間労働はなく、上司の言動のみが業務起因性判断において問題となりました。今までは長時間労働等があって、かつパワハラ言動のケースがほとんどでしたが、この事案には長時間労働はありません。
・存在が目ざわりだ、居るだけでみんなが迷惑している。お願いだから消えてくれ。
・車のガソリン代がもったいない
・何処へ飛ばされようと俺はAは仕事をしない奴だと言いふらしてやる
・お前は会社を食い物にしている、給料泥棒 等々
このひどい言動が問題となりました。(胸が痛い管理職の方はいませんか?)

このひどい言動の多くは、上司となくなったAさんの2人きりと時になされてと言われています(全員そろってのミーティングは週に1回だけ、その他はファミレスなどで上司と部下2人で打ち合わせが行われていたそうです)
つまり,いろんな意味でAさんには逃げ場がなかったのです。



心の病の労災認定基準が見直されて、強いストレスを受ける要因としてパワハラが新たに盛り込まれました。心配されている管理職の方も多いのではないでしょうか?

でも上司として部下を指導するのは当然です。放っておくわけにはいきません。企業秩序や職場環境維持のためにも必要な場合は多々あります。OJTとしても必要でしょう。
過度の反応はいりませんよ!いけないことは「アカン」と自信を持って注意しましょう!

指導は大丈夫です。嫌がらせはダメ!いじめはダメ!
結局、自分の人間性を問われているような気がします。
繕う言葉は相手に響きません、相手のことを尊重し、相手のことを思い考えて出た言葉が必要ですね。信頼する人からの言葉は「ありがたい」です。