【wsj記事から一部転記】~原発で働く作業員の安全がどのような状況なのか~。東京電力は6月13日、6人の作業員の被ばく線量が限度を超えた可能性が高いことを明らかにした。これまでの合計では8人となる。~地震と津波により、放射線量を測定し、作業員を管理するシステムが機能しなくなった。坂本さんや他の6人ほどへの取材から、東京電力がその代替策をなかなか実施しなかったことも明らかになった。東京電力はこの問題を認識している。「原子炉冷却を第一にしている。一般的に遅いと言われるかもしれないが、できるだけ早く全力で取り組んでいる」と、東京電力の広報担当者は話す。東京電力は5月の報告書で、放射線環境で働くうえでの正式な登録を行っていない作業員がいることを明らかにした。最初の数週間、線量計が不足していた頃には、多くの作業員が線量計を持っていなかった。ある大手建設会社に雇われた数人の作業員は、採用された時には原発で働くとは知らされなかったという。東京電力の広報担当者は、作業員は適切な訓練を受けたと考えていると話した。また、原発内部で働く下請け業者や他社の作業員に関しては、東京電力には責任はないとも言う。~日本には放射線の被ばくや作業員の安全に関してさまざまな法律があるが、違反に対する罰則はほとんどない~。
1カ月ほど前、福島第1原発の免震重要棟で働く人々から不思議なほど高い放射線量が検出された。これにより、棟が汚染され、数千人の作業員が放射性粒子を体内に取り込んでいた可能性が高いことが分かった。また、東京電力は2300人余りの作業員の被ばく量を検査し、数百人で値が高くなっているのを発見した。厚生労働省は6月7日、原発に調査員を送り、作業員の安全管理について調査すると発表した。
3月15日、二つの原子炉で爆発が起こった。その翌日、坂本さんと10人の作業員はJヴィレッジに向かった。原発から南に25キロほど離れたサッカー関連の施設で、原発対応の拠点となっている場所だ。そこで検診を受け、東京電力から30分ほど、放射線と防護服についての講習を受けた。その日聞いたことは、ほとんど忘れてしまったと坂本さんは言う。だが、強く印象に残ったことがある。それは、石をひっくり返す時は注意しろ、なぜなら放射性物質が隠れているかもしれないから、ということだ。「海で石をめくると、小さいカニがいる。それは、ザリガニであったり、大きなタラバガニであったりする。線量をこうむった時、それがザリガニであったらいいが、大きなタラバが出た時もある」。坂本さんの1日は6時半に始まった。作業員が着替えを始める時間だ。下着、フードつきの防護服、3枚重ねにした手袋と靴のカバーを身につける。袖口とズボンのすそにテープを貼ってすき間をふさぐ。マスクを着け、フードとマスクのすき間をふさぐように、お互いにテープを貼り合う。
現場では、作業員たちは携帯電話サイズの線量計を胸のポケットに入れ、累積での被ばく量を記録した。放射線のレベルが跳ね上がると、線量計のアラームが鳴る。問題は、全員に行き渡るだけの線量計がなかったことだ。坂本さんによると、通常4人のチームで1人だけが線量計を持っていた。しかし、原発で長年働いてきた作業員は、各人が一つずつ持たなければならないと知っていた。彼らは苦情を訴え、それが原子力安全・保安院の厳重注意につながり、東京電力は線量計の供給を増やすよう命じられた。恐ろしい場面もあった。3月20日頃、3号機の格納庫から黒い煙が上がっていたのを見たのだ。誰かが「坂本さん、逃げて」と叫んだ。~ (wsj記者:Phred Dvorak)
かなり長い引用(記事の一部です)になりましたが、かなり詳細に取材していることが分かります。「ウオールストリートジャーナル」はアメリカではよく読まれている経済紙ですが、示唆的な内容も多く一定の影響力もあります。東京電力、いやこれが日本の電力各社の労働構造を的確に示していると言っていいのかもしれません。汚い危険な仕事はすべて「下請け」がやるものと決めているとしたら、それは決して正常な「労働環境」ではない。そのような「労働環境」を容認してきた企業や行政にも、社会的責任の一端はあると思います。グローバルな経済活動には、企業のモラルや外交を含めた国家間の認識が問われることになる。誰の目にもおかしいことは、やはり早急に改善していくことも大切です。