なぜ「品切れ」発表したレモンジーナが店頭に大量陳列されているのか?
All About 2015年4月6日 11時45分
(2015年4月6日 14時40分 更新)
[拡大写真]これからの時代、誠実に消費者に向き合い続ける企業こそが、
ますます支持され、愛され、成長していく
年間目標販売数量を2日間で超えたと発表された
サントリー食品インターナショナルの「レモンジーナ」。
この発表は、ネットを中心に大きな話題となった。
ところが発表と裏腹に、ネット上では
コンビニなどで販売されているのを見たという声が多く見られた。
実際、私も渋谷駅南口そばにあるコンビニをはじめ、
都内の数店を見て回ったが、どの店にもレモンジーナはあった。
それも通常の飲料ケースに陳列されているのではなく、
レジ前棚を3段も贅沢に使っている店もあったほどだ。
なぜ「品切れ」と発表されたにも関わらず、
レモンジーナは店頭で大量に残っていたのだろうか。
■大々的な広告キャンペーン
今回のレモンジーナのように、コンビニが
これだけ大々的にスペースを使って
飲料の販売に力を入れる場合にはいくつかの理由が存在する。
まずひとつ目に考えられる理由は、
メーカーが広告キャンペーンに力を入れていることだ。
販売店の立場からすれば、どれだけ広告や
PRに力を入れてくれるかということは、
販売量を確保するうえで重要な指標だ。
したがってメーカーや販売店によっては、
出稿予定のテレビCMのGRP(Gros Rating Point:いわゆる「延べ視聴率」のこと)目標まで
共有することもある。レモンジーナは
電車内の中吊り広告だけでなくリチャード・ギアを起用したテレビCMも
オンエアしている。この新発売時の広告キャンペーンは、
コンビニをはじめとする販売店にとって十分魅力的な内容だったのだ。
そのため店頭でも力を入れることになったと考えられる。
■オランジーナの成功体験
2012年に発売されてから今も店頭に陳列されている「オランジーナ」。
新発売から1ヶ月で年間目標販売数量を達成したため、
計画を上方修正して最終的には
当初予定の約4倍の販売数量を記録した実績も持つ。
オランジーナのレモン版であるレモンジーナ。
コンビニを始めとする販売店は、
オランジーナ新発売時の盛り上がり、
今も続く根強い人気、
今までの広告キャンペーンの力の入れ方等、
サクセスケースを知っているからこそ、
レモンジーナにも同等かそれ以上の期待を抱いてしまったのだろう。
つまり、オランジーナの存在がなければ、
レモンジーナはここまで店頭陳列スペースを
確保することは難しかったと言えるのだ。
■なぜ「品切れ」発表でも店頭には存在するのか?
「広告キャンペーン計画」「オランジーナのサクセスケース」を
うまく活用した商談により、レモンジーナの大々的な
店頭展開は決定したと推測される。…
しかし、大々的な店頭展開が出来ることと、
モノが売れることは決してイコールではない。
時には大きな差が出ることもある。
情報やモノが溢れ、各社の商品力にも
大きな差を感じられないことが多くなった現在、
消費者が商品を購入する時に重視するポイントになっているのが
「口コミ」と「話題性」だ。溢れかえる情報の中、
消費者は興味の無い情報は
シャットアウトすることが多くなった。
テレビCMを始めとする広告、テレビや新聞など
長きにわたって消費者の情報源だったものが
凋落している理由のひとつもそこにある。
その一方、信頼出来る友人、知人、
専門家の話は聞く傾向にある。
もうひとつは「話題性」だ。飲食物のケースで言えば、
美味しさは食べてみないとわからないが、
“見た目の違い”や“今まで無かったもの”という話題性は
わかりやすい。ソーシャルメディアの出現によって、
購買行動の中で「話題性」の重要性はますます高まっている。
「品切れ」で生産中止となり、
幻の商品となった2015年2月発売のハーゲンダッツ「きなこ黒みつ」
「みたらし胡桃」や、2012年発売の赤城乳業「ガリガリ君リッチ コーンポタージュ」などは、
見た目のインパクトやアイスクリームの概念を覆す
意外性で大きな話題性を獲得した。
マーケティング視点から率直に言えば、
レモンジーナには「品切れ」を起こすまでの要素はない。
味は美味しいとしても、今までのレモン系炭酸飲料とは
次元が違う美味しさかと言えば、そういうレベルではない。
話題性があるかと言えば、ハーゲンダッツやガリガリ君のような意外性もない。
普通に発売を開始していたら、他のソフトドリンクと
大きな差別化は出来なかった可能性は大きい。
その意味で、販売店に導入してもらうマーケティングプランをうまく作り、
商談を成功に導いた。しかし、今の消費者は賢く、
モノを見る目は厳しい。結果として、
店頭から商品が無くならないという事態が生まれてしまったのだ。
メーカーとしては初回生産予定量に関して、
すべて流通卸や販売店に入れてしまったので在庫はなくなってしまった。
しかしメーカーが卸や販売店に販売するのと、
消費者が販売店で買うことはイコールではないのだ。
■最後に
前回の記事(レモンジーナ「品切れ」による販売中止は
サントリーの戦略だったのか?)にFacebookで3000以上もの「いいね!」があるなど、
多数の反応を頂いているように、レモンジーナの件に関する消費者の関心は高い(2015年4月5日現在)。…
今回は大きな問題にならなかったが、仮にこれが
サントリー食品インターナショナルによる行き過ぎた「品切れ」演出だとすれば、
レモンジーナが売れなくなるどころか、
サントリーの企業イメージにも大きなダメージを与えかねない
大きなリスクをはらんでいたのだ。
(http://allabout.co.jp/newsdig/c/81396)
これからの時代、誠実に消費者に向き合い続ける企業こそが、
ますます支持され、愛され、成長していく。
逆に言えば、消費者を軽んじるような姿勢を取る企業は淘汰されていく。
今回のケースは、企業と消費者の関わりという点において、
重要な示唆を与えてくれているのではないだろうか。
(新井 庸志)
http://www.excite.co.jp/News/column_g/20150406/Allabout_20150406_9.html
All About 2015年4月6日 11時45分
(2015年4月6日 14時40分 更新)
[拡大写真]これからの時代、誠実に消費者に向き合い続ける企業こそが、
ますます支持され、愛され、成長していく
年間目標販売数量を2日間で超えたと発表された
サントリー食品インターナショナルの「レモンジーナ」。
この発表は、ネットを中心に大きな話題となった。
ところが発表と裏腹に、ネット上では
コンビニなどで販売されているのを見たという声が多く見られた。
実際、私も渋谷駅南口そばにあるコンビニをはじめ、
都内の数店を見て回ったが、どの店にもレモンジーナはあった。
それも通常の飲料ケースに陳列されているのではなく、
レジ前棚を3段も贅沢に使っている店もあったほどだ。
なぜ「品切れ」と発表されたにも関わらず、
レモンジーナは店頭で大量に残っていたのだろうか。
■大々的な広告キャンペーン
今回のレモンジーナのように、コンビニが
これだけ大々的にスペースを使って
飲料の販売に力を入れる場合にはいくつかの理由が存在する。
まずひとつ目に考えられる理由は、
メーカーが広告キャンペーンに力を入れていることだ。
販売店の立場からすれば、どれだけ広告や
PRに力を入れてくれるかということは、
販売量を確保するうえで重要な指標だ。
したがってメーカーや販売店によっては、
出稿予定のテレビCMのGRP(Gros Rating Point:いわゆる「延べ視聴率」のこと)目標まで
共有することもある。レモンジーナは
電車内の中吊り広告だけでなくリチャード・ギアを起用したテレビCMも
オンエアしている。この新発売時の広告キャンペーンは、
コンビニをはじめとする販売店にとって十分魅力的な内容だったのだ。
そのため店頭でも力を入れることになったと考えられる。
■オランジーナの成功体験
2012年に発売されてから今も店頭に陳列されている「オランジーナ」。
新発売から1ヶ月で年間目標販売数量を達成したため、
計画を上方修正して最終的には
当初予定の約4倍の販売数量を記録した実績も持つ。
オランジーナのレモン版であるレモンジーナ。
コンビニを始めとする販売店は、
オランジーナ新発売時の盛り上がり、
今も続く根強い人気、
今までの広告キャンペーンの力の入れ方等、
サクセスケースを知っているからこそ、
レモンジーナにも同等かそれ以上の期待を抱いてしまったのだろう。
つまり、オランジーナの存在がなければ、
レモンジーナはここまで店頭陳列スペースを
確保することは難しかったと言えるのだ。
■なぜ「品切れ」発表でも店頭には存在するのか?
「広告キャンペーン計画」「オランジーナのサクセスケース」を
うまく活用した商談により、レモンジーナの大々的な
店頭展開は決定したと推測される。…
しかし、大々的な店頭展開が出来ることと、
モノが売れることは決してイコールではない。
時には大きな差が出ることもある。
情報やモノが溢れ、各社の商品力にも
大きな差を感じられないことが多くなった現在、
消費者が商品を購入する時に重視するポイントになっているのが
「口コミ」と「話題性」だ。溢れかえる情報の中、
消費者は興味の無い情報は
シャットアウトすることが多くなった。
テレビCMを始めとする広告、テレビや新聞など
長きにわたって消費者の情報源だったものが
凋落している理由のひとつもそこにある。
その一方、信頼出来る友人、知人、
専門家の話は聞く傾向にある。
もうひとつは「話題性」だ。飲食物のケースで言えば、
美味しさは食べてみないとわからないが、
“見た目の違い”や“今まで無かったもの”という話題性は
わかりやすい。ソーシャルメディアの出現によって、
購買行動の中で「話題性」の重要性はますます高まっている。
「品切れ」で生産中止となり、
幻の商品となった2015年2月発売のハーゲンダッツ「きなこ黒みつ」
「みたらし胡桃」や、2012年発売の赤城乳業「ガリガリ君リッチ コーンポタージュ」などは、
見た目のインパクトやアイスクリームの概念を覆す
意外性で大きな話題性を獲得した。
マーケティング視点から率直に言えば、
レモンジーナには「品切れ」を起こすまでの要素はない。
味は美味しいとしても、今までのレモン系炭酸飲料とは
次元が違う美味しさかと言えば、そういうレベルではない。
話題性があるかと言えば、ハーゲンダッツやガリガリ君のような意外性もない。
普通に発売を開始していたら、他のソフトドリンクと
大きな差別化は出来なかった可能性は大きい。
その意味で、販売店に導入してもらうマーケティングプランをうまく作り、
商談を成功に導いた。しかし、今の消費者は賢く、
モノを見る目は厳しい。結果として、
店頭から商品が無くならないという事態が生まれてしまったのだ。
メーカーとしては初回生産予定量に関して、
すべて流通卸や販売店に入れてしまったので在庫はなくなってしまった。
しかしメーカーが卸や販売店に販売するのと、
消費者が販売店で買うことはイコールではないのだ。
■最後に
前回の記事(レモンジーナ「品切れ」による販売中止は
サントリーの戦略だったのか?)にFacebookで3000以上もの「いいね!」があるなど、
多数の反応を頂いているように、レモンジーナの件に関する消費者の関心は高い(2015年4月5日現在)。…
今回は大きな問題にならなかったが、仮にこれが
サントリー食品インターナショナルによる行き過ぎた「品切れ」演出だとすれば、
レモンジーナが売れなくなるどころか、
サントリーの企業イメージにも大きなダメージを与えかねない
大きなリスクをはらんでいたのだ。
(http://allabout.co.jp/newsdig/c/81396)
これからの時代、誠実に消費者に向き合い続ける企業こそが、
ますます支持され、愛され、成長していく。
逆に言えば、消費者を軽んじるような姿勢を取る企業は淘汰されていく。
今回のケースは、企業と消費者の関わりという点において、
重要な示唆を与えてくれているのではないだろうか。
(新井 庸志)
http://www.excite.co.jp/News/column_g/20150406/Allabout_20150406_9.html