すみれの花の咲く頃
そもそも道端に咲いているごく自然なすみれの花ですが、わたくしには思い入れのある花である。
鉢に寄せ植えして何とか形が出来で、やや満足して眺めていたある日の事、見知らぬ人から突然！“此のすみれを分けてほしい”と声を掛けられた事があった。
よくよく話を聞いて見ると、介護の仕事をしている訪問先のおばあさんがすみれの花が大好きでどうしても「すみれの花」が見たいと、、、その人はもう先がないかも知れないので自分が世話をしている内に何とかすみれの花を見せてあげたいのだと。
突然そんな話をを持ちかけられたわたくしはびっくりした。その人の図々しさにでした。道端に咲いてるただのすみれであってもわたくしにとっては鉢に寄せ植して育ててやっと花が咲いたすみれでしたから。それなら株分けして上げましょうか？と云ったら “その鉢ごと下さい！” だって、、、最後には “代金は支払ます” そう言われたわたくしは “花屋さんでは有りませんからお代など要りません” と、とうとう根負けしてその見知らぬ女性に鉢ごと差し上げてしまいました。すみれは又育てれば好いことだし、これで良かったのだと思っていました。
それから何ヶ月かたったある日、其の時の女性が我が家に現れたのです。お世話をしていたおばあさんはすみれの花を見て大変喜んでいたそうでそれから間もなく息を引き取ったそうです。そしてその時のお礼だと訪ねて来て下さったのでした。その人はおばあさんを送ってから介護の仕事を辞めたと話していました。 すみれの花を見る度に当時の事を思いだします。
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