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インドで作家業

ベンガル湾と犀川をこよなく愛するプリー⇔金沢往還作家、李耶シャンカール(モハンティ三智江)の公式ブログ

2014インド総選挙こぼれ話

2014-04-09 22:25:10 | 政治・社会・経済
インドの2014年4月は、総選挙たけなわ。
夏本番で暑くるしい中、候補者はキャンペーンに駆けずり回っている。
以下、ワンポイントこぼれ話。

*反汚職の市民活動家上がりのケジリワル(Arbind Kejriwal)氏が結成した新党、庶民党(Aam Aadmi Party)だが、党首が殴られるなどの暴行を受ける事件が相次いでいる。いずれも、小競り合い程度だが、五度目の最近は、オートリキシャの車夫が花輪を捧げる機を利用して力任せに党首の左頬に平手打ちを食らわせた。
ケジリワル氏は警備薄で(本人の希望による)一般民が暴行しやすい隙だらけ、加害者のドライバーは、庶民党が車夫一人ずつから10ルピーの寄付を集めたにもかかわらず、援護策がないとの怒りに駆られて殴ったとのこと。
先のデリー政権49日間辞任劇で、期待していたのに落胆させられたこともあったようだ。
翌日、ケジリワル氏は、加害者宅に花束をもって訪問、ガンジギリといわれる非暴力、腕力より花をの平和手段に訴え、加害者も非を悔いた。

*昨日の敵は今日の友。ご都合主義者(オポチュニスト)のインドの政治家は、理念などなきに等しく、情勢を見て有利な側にころころ転向する。最大野党のインド人民党(BJP=Bharatiya Janata Party)の圧勝がささやかされる昨今、コミュナル(ヒンドゥ右翼)との攻撃の矢にさらされていた野党は政教分離(世俗主義)が理念の地方党からも引っ張りだこ、勝算の低い与党・国民会議派(Congress I)を捨てて、鞍替えする昨日の友が続出、今日の敵と化している。

*マニフェストとは、空約束の別表現、選挙が終わったら、忘却の彼方に飛んでいく。過半数勝利予想に意気軒昂な野党・インド人民党はぎりぎり直前になって公表、首相候補のナレンドラ・モディ(Narendra Modi、現グジャラート州首相)がヒンドゥ右寄り色を弱める文面にしたせいとか。発展・繁栄をスローガンに掲げるも、小売業の外資参入には消極的、全土に林立するパパママストア擁護のため。
先に発表された与党国民会議派のマニフェストを絵空事の『ジョーク』と嘲り笑ったインド人民党だったが、その与党からはうちのコピーとの非難を浴びせかけられた。

*ホロスコープ専門家は商売大繁盛。インドでは星占いは、誕生時にチャート図を作成して人生指針とするほど人気。浮き渋みの烈しいスター稼業や、選挙の勝ち負けが気になる政治家は常に星占い師に頼る。よって、選挙中は占い師にとって大の稼ぎ時、ヘリコプターを差し向けられ、政治家のもとに走る有名占い師もいるとか。
内陸部のウッタルプラデシュ州の前首相ラルー・プラサド・ヤダブ(Lalu Prasad Yadav)は近年落ち目だが、今選挙においては、占い師のアドバイスを真に受けてネガティヴパワーを発しているという私邸の池を埋めた。

*選挙中は治安悪化で、厳重な警備が敷かれる。当オディッシャ州ではナクサライト(インド共産党毛沢東主義派、経済成長から取り残され、貧困や格差に不満を持つ農村住民や低カースト層の間で勢力拡大)といわれる極左ゲリラの襲撃(投票ボイコットの薦め含む)に州政府は神経を尖らせている。すでにチャティスガル州やビハール州でも、銃殺事件が起こっている。テロの脅威もあって、全土的に警戒体制。
なお、選挙当日は禁酒となりリカーショップも臨時休業、どうしても飲みたい人は割高の闇酒を買うしかない(左党は自衛策として前もって買っておくのが一番)。

▽以下は、インドの政治体制について。

インドの政治システムは英国式の議員内閣制度、共和制、連邦制が基盤になっている。29州と7連邦直轄地域である諸州の連邦であるインド共和国は、連邦議会(国会)と州議会から成る。

国家元首である大統領は、国会の上下両院と州議会議員で構成される選挙会によって選出され、任期5年、実権はないが、内閣の助言によって国務を行う。大統領の下、立法(国会)、行政(政府)、司法が独立した三権分立が明確に図られ、議院内閣制は、普通選挙によって政権交代可能で、首相と州知事は大統領によって任免され、州首相は州知事によって任免される。

国会は、上院のラジャ・サバ(州議院、250名、任期6年、2年ごとに3分の1改選)と、下院のロク・サバ(人民議院、545名、任期5年)の二院制から成り、下院が国民全体を代表し、上院が州を代表する仕組みになっている。12億の人口の3分の2の約8億人が18歳以上の有権者だけに、世界最大の民主主義国家を誇る由縁でもある。
首相は、人民による直接選挙で選ばれた下院議員の過半数を占めた第一党の長が任命されるのが一般的だが、現マンモハン・シン首相(2014年3月時点)は、与党(Congress I, 国民会議派)総裁のソニア・ガンジーが2004年、首相職を退けた代わりに指名、大統領によって任命されたものである。
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2014インド総選挙、スタート

2014-04-08 17:09:20 | 政治・社会・経済
四月七日、いよいよインド総選挙が火蓋を切って落とされた。
まず、北東地域といわれるアッサム・トリプラ州から始まったが、投票率は75%と高く、有権者の権利意識も上がっているようだ。
陸の孤島的イメージがあるノース・イーストだけに、内陸部から継子扱いされているとの住民の不満は根強く、その不満をうまく掬い上げてくれる政党が勝つのだろう。

遠隔地だけに、熱気は伝わってこないが、当オディッシャ州は十日開始で目前、立候補者の選挙カーがスピーカーをがなりたてながら前の道を行き来する昨今だ。

ネット時代だけに、フェイスブックやツイッターを利用してのネットキャンペーンも盛ん、ドア・トゥ・ドア・キャンペーンと、足での戸別訪問も行なわれ、毎日14-15時間のハードワーク、日中は暑い盛りだけに立候補者も大変だ。が、その裏で札束が飛び交っていることは間違いなく、反汚職とぶち上げても、所詮インドのこと、買収がなくなるわけでない。

また、追って選挙情報、お知らせしたい。
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猟奇殺人事件の桁外れの残虐さ

2014-03-20 21:45:40 | 政治・社会・経済
「あしたのジョー」や「巨人の星」、「空手バカ一代」など一世を風靡した人気漫画の原作者、梶原一騎について調べていたら、彼が一時期、台湾の女優・歌手の白冰冰(パイ・ピンピン)と結婚し、もうけた一女・白暁燕(パイ・シャオイェン)が、父梶原の死後十年後の97年、17歳の若さで惨殺されていることが明らかになった。

ウイキで調べてみると、凄惨な事件で読むに耐え難い部分があるが、下記に一部引用する。

「この事件は台湾史上最大の誘拐事件といわている。

1997年4月14日、私立醒吾高級中学(zh)2年に在学中の暁燕は、通学途中に誘拐された。犯人グループは、直後から輪姦・暴行を加えるとともに、左手小指を切断した。さらに、母冰冰の元に暁燕の半裸の写真と、彼女の切断された小指を送りつけ、500万アメリカ合衆国ドルの身代金を要求した。冰冰はなんとか身代金全額は揃えた。

現金が渡れば家に帰れると信じていた暁燕は、戻ってきたグループの一味から身代金受け渡しの失敗を聞いて泣き叫んだ。しかし、激昂した犯人グループは、腹いせにさらに凄惨な輪姦・集団暴行を加えて暁燕を時間をかけて惨殺し、遺体の手足を角材に縛りつけた上、重しをつけて台北近郊のドブ川に遺棄した。

4月25日に警察が犯人グループのアジトをつきとめて急襲し、4人が逮捕されたが、3人の主犯格(林春生・高天民・陳進興)を捕り逃がした。

4月28日、暁燕の遺体が発見された。胸、腹、肩や頭に殴打された跡や裂傷を確認。肝臓破裂による大量出血で腹腔が膨張していた。左小指の一部を切断されていて、止血のためと思われる針金が巻かれていた。首にロープが巻かれていて、死因は絞殺。

遺体発見時の写真を一部のメディアが掲載し、日本の写真週刊誌にも転載された。身代金受け渡しの際のマスコミの不手際が殺害の原因になったため、メディアへの批判が高まり、白母娘の住んでいた家の付近に、周辺の住民が「記者有罪」と書いた抗議の垂れ幕を下げた。暁燕の葬儀では、顔にかつらと生前の顔を模した面を着けて納棺された。

時の総統李登輝は、犯人らを発見次第問答無用で射殺せよとの命令を発した。8月19日、台北市内で3人の主犯格と警官800人との銃撃戦が起こり、警官2人が死傷したが、林も6か所に銃弾を受けて自殺した」


以下は、この事件に関するブログ「けろのつぶやき」(犯人と警官隊の銃撃戦画像あり)

そのあまりにも凄絶としかいいようのない犯行手口に思い出したのは、2012年12月16日のデリー・バス内集団暴行事件。ボーイフレンド同伴だった23歳の准医学女子大生が、無認可のバスに乗り込んだことで、輪姦され、局部に鉄パイプを挿入され、腸の全摘に近い重症を負い、13日後に搬送されたシンガポールの病院で絶命した事件だ。

あまりにも残虐な手口に怒り狂った市民女性が全土的にデモ展開、世界的にも報道され、レイプ国家の汚名が広まった恥辱的な事件だった。

アメリカの報道機関は、「人口の半分の女性が安心して自由に暮らせない限り、インドに真の繁栄はありえないと」とぶちあげたが、この事件以後もレイプは途絶えることなく、むしろ倍増している昨今だ。
しかし、上記の台湾誘拐殺害事件は、これをはるかに上回る残忍な手口で声もない。

ふと、日本の女子高生コンクリート詰め事件(88-89年)を思い起こしたが、この事件の犯人が十代の少年だったように、インドの六名の犯人のうち一人は十七歳で、一番残忍な暴行を働いたことで悪名高く、鉤型の鉄棒を力任せに被害者の胎内に挿入し掻き出したことで、腸が飛び出てきたといわれる。
しかし、未成年者のため、少年院に搬送され、免罪、死刑は免れた。
主犯の一人は首吊り自殺を遂げ、残り四人にも死刑判決が下された。

しかし、上記の台湾事件はこれをしのぐ超凶悪犯罪、人間とは思えないけだものの異常さだ。
これだけ徹底して肉体を傷めつけられたら、いくら魂には傷がつかないといっても、その殿堂である神聖な体が最悪に穢されたのだから、霊は断じて浮かばれないだろう。
死刑になった犯人が、罪の意識から来る幻覚か、「白暁燕がやってくる」と執行直前に喚いたそうだ。

ユダヤ人虐殺、カンボジア大虐殺、ルワンダ大虐殺は国ぐるみの政治的犯罪だが、こうした私的犯罪においても、人間が人間に下す仕打ちのあまりの残虐さ、その罪深さに声も出ない。

悪魔は人間の外にいるのではない、中にいるのだ。
ゆえに仏陀は八正道を説き、汝殺すなかれ、姦すなかれと説いたのだ。

戦争において犠牲になるのはいつも女・子ども、弱者にしわ寄せが来るのはどこも同じだ。

女性として、男尊女卑社会インドの女性差別・暴力の実態は見看ごせない。
ヒンドゥ女神を崇敬する一方で、多くの女性が家庭内暴力、性犯罪の犠牲になっているダブルスタンダード、女性が安心して暮らせる社会はいつやってくるのだろうか。

*梶原一騎も生きてなくて、幸いだったというべきか。いくらこわもておっさんでも、娘の惨殺には耐えられなかっただろう。ウイキを読んでて、父親が中央公論社や改造社の編集者で、彼自身は小説家志望であったことも改めて知った。一時期傷害事件で社会から干されたようだが、近年功績が認められているとのこと、60-70年代少年漫画のスポ根もの・格闘もので(手塚治が描けない領域)一時代を画した伝説の漫画作者だったともいえる。


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ルワンダ虐殺の映像

2014-03-09 20:41:51 | 政治・社会・経済
もうひとつ貴重な画像を見つけたので、紹介しよう。

ルワンダ虐殺を振り返る

以下、ウイキ(ルワンダ虐殺)から引用。
『1994年にルワンダで発生したジェノサイドである。1994年4月6日に発生したルワンダ大統領のジュベナール・ハビャリマナとブルンジ大統領のンタリャミラの暗殺からルワンダ愛国戦線 (RPF) が同国を制圧するまでの約100日間に、フツ系の政府とそれに同調するフツ過激派によって、多数のツチとフツ穏健派が殺害された。正確な犠牲者数は明らかとなっていないが、およそ50万人から100万人の間、すなわちルワンダ全国民の10%から20%の間と推測されている』

ちょうど先々月送られてきた文芸思潮誌冬季号が『アフリカ文学特集』で、ルワンダ虐殺がテーマの現地作家の掌編小説(「彼の声」ヴェロニク・タジョ/訳村田はるせ)が載っていたので、気になって調べていたら、思いがけず貴重な映像を見つけたというわけだ。

それにしても、三日で180万人が殺戮(この画像によると、そうなっている)とはむごたらしい。
人間が人間に働く罪業の深さに声もない。
文芸思潮誌編集長の五十嵐勉氏は、カンボジア虐殺をテーマにした小説を書く社会派作家だけに、アジアの社会事象には注意深く目を向けている。
第二次大戦下の日本についても詳しい。

私は社会的なテーマは、ノンフィクションか、インドをテーマにした短・掌編ぐらいにしか用いないが(つい最近は2012年12月16日の残虐集団暴行事件に関しては、三十枚ほどの短編に仕上げた。旧作では、寡婦殉死制度サティもテーマになった)、こうした重いテーマの作品も決して嫌いじゃない。

メッセージという意味では、伝えなければならない意義をもっている。
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インド総選挙の日程

2014-03-05 18:11:05 | 政治・社会・経済
インドの総選挙の日程が、4月7日ー5月12日と決まった。
九回に分けて催される予定。

立役者は三人、現野党・インド人民党(Bharatiya Janata Party, BJP、ヒンドゥ至上主義の右翼党だが、近年は右翼色は影を潜め、発展やよき政府がスローガン)の中央首相候補、現グジャラート州首相、ナレンドラ・モディ(Narendra Modi)を筆頭に、現与党の国民会議派(Congress I、政教分離の世俗主義で貧民救済がスローガン)の副総裁、ラフール・ガンジー(Rahul Gandhi, 名門政治家一家ガンジー家の長男、暗殺された故インディラ・ガンジーは祖母)、そして、最後のダークホースが庶民党(Aam Admi Party、汚職撲滅がスローガン)党首、アルヴィンド・ケリジワル(Arvind Kerijwal)。

本命はモディだが、反汚職の市民活動家上がりのケリジワルが票をどこまで伸ばすか、注目される。先の49日間のデリー都首相、政変劇ドラマで一躍、ポピュラー度をあげたケリジワルだが、ストリート政治と揶揄されたアジテート手腕は法治国家の域を外れるため、手腕を疑問視する向きもある。

ただ、庶民党が全面戦争展開でキャンペーンを張っていることで、今回の選挙は面白くなりそうで、どこまでかき回してくれるかという、私のような野次馬の素人には成り行きが注目される。
政権掌握できずとも、ハングパーラメントになれば、組閣の一翼を担う可能性も出てくる。
サード・フロントといわれる、共産党(CPI, CPM)はじめの地方の少数党11党の連携グループも、動き出しているが、庶民党に比べると、マニフェストも不明瞭で、今ひとつパワーに欠ける。

この十年の汚職三昧政治に国民はほとほと愛想尽かしているため、まず、インド人民党の圧勝は間違いないと見ているが、庶民党がどこまで食い込むか。

ガンジー家の長男はカリスマ性に今ひとつ欠け、イタリア出生の母の総裁、ソニア・ガンジー(Sonia Gandhi, 暗殺されたラジブ・ガンジー元首相の未亡人)のママボーイと揶揄される。

モディにも2002年のグジャラート暴動で2000余名のイスラム教徒を見殺しにした罪があるのだが、彼が首相になれば、インドはさらに経済繁栄の道をまい進することは間違いない。
自州グジャラートを発展州へと導いた手腕は高く評価されているのだ。

有権者買収の金や物が飛ぶ、インドの総選挙乱痴気戦、治安が悪化して、投票日が禁酒となるのも、この国ならでは。

有権者は八億余、その半数近くが35歳以下の若い人たちで、次期政権の行方は若者が握っているといっていい。

*首都デリーとアンドラプラデシュ州のラクノウ、グジャラート州などで、インド人民党と庶民党の運動員同士のぶつかり合いが発生、野党インド人民党の首相候補であるモディ管轄のグジャラート州ではケジリワル庶民党首の選挙カーが襲撃され、警官出動、同党の運動員たちが警官に棍棒で叩かれたりしたようだ。本番前からのエスカレートで、例年通り、暴動による殺傷者も出そうだ。
一時拘留されたケリジワルは、与野党とも、インド有数の優良石油産業である、リライアンス・インダストリー(Reliance Industry)社のポケットに入っていると非難、インド一の億万長者から、両党に相当な資金が流れていることも糾弾している。会長のムケシュ・アンバニ(Mukesh Ambani)はどちらが政権掌握しても、中央政府は私のポケットに入っているも同然と、オフレコで述べていたようだ。

なお、当オディシャ州は以下の日程
4月10日(木),4月17日(木)
(州都ブバネシュワル市、プリ町の投票日は4月17日)。

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インド、29州目の誕生

2014-02-28 19:49:46 | 政治・社会・経済
★速報
インドの29州目誕生!

アンドラプラデシュ州を二分割する法案が2月16日下院通過、引き続き20日に上院も通り、同州は内陸部のテランガナ州と海岸部のシーマンドラ州に分離されることになった。
法案通過まで、与党国民会議派総裁、ソニア・ガンジーに公然と歯向かい、分割反対をぶちあげる与党党員の一人がペッパースプレーを議会に持ち込んで吹きかけたり、議長のマイクを奪ったり、大騒動をかもし、上院でも似たような顛末が繰り返されたが、最終的に法案は可決された。

テランガナはアンドラプラデシュ州の面積の約4割を占め、人口約3500万人。英領時代、最大規模の藩王国に属して独自の文化を保ってきたが、インド独立後の1956年に同州に統合され、長く分離運動が続いてきた。
経済的に未発達のテランガナ地域の住民は60年近く自治独立を要求してきただけに感無量、吉兆のシンボルの赤い粉を噴き上げて祝った。
なお、ペッパースプレーを持ち込んだ与党議員(シーマンドラ地区の下院議員、L.ラジャゴパール)はこれを受けて辞表提出、アンドラプラデシュ州の旧州都ハイデラバードはIT都市で名高いが、当面両州の共同首都となる予定。

インド安宿通信最新号から引用)

*テランガナ(Telangana)独立運動の中心だったテランガナ・ラシュトゥリヤ(Rashtriya=国民)・サミティ(Samiti=協会)党の総裁、チャンドラシェカール・ラオ(Chandrashekar Rao)は、与党国民会議派(Congress I)総裁、ソニア・ガンジー(Sonia Gandhi)の尽力にお礼参り、両党の合併も間近のようだ。AP州二分割は、四月の総選挙をにらんだ、多分に政治的な動きだったということである。

インドの州はほぼ使用言語で分けられているが、テルグー語(古典語に含まれるほど歴史が古いAP州語)の話者人口が二つの州に分けられることになってしまったわけで、海岸部の住民は内心複雑な心境だろう。今後、共有することになる経済発展首都、ハイデラバードの奪り合いが烈しくなりそうな雲行きだ。それと、これに端を発する各地の分離独立要求はいっそう激化するものと思われる(既にウッタルプラデシュ州<当オディッシャ州まで>、いくつかが分離運動を進めている)
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四十九日間のゲリラ政治

2014-02-15 22:42:40 | 政治・社会・経済
デリー都首相、アルビンド・ケジリワル(Arvind Kejriwal,45歳)氏が退陣した。
たった49日間の超短命政権だった。
反汚職法案(ジャン・ロクパル=Jan Lokpal)が議会で通過しなかったことが主因。
法案を通す前に中央政府(下の都知事)の承認を得ることが法律で定められているが、無視して俎上に乗せた結果の敗退だった。

そもそも、汚職撲滅運動の先駆主導者だったアンナ・ハザレ(Anna Hazare, ガンジー主義の老市民活動家)のアドバイザーだったケジリワルだが、政治と関わらないとするメントーとは別の道を歩むことになり、一年前に政党結成(アーム(Aam)・アードミ(Aadmi)・パーティー=庶民党)、先のデリー選挙で70議席中28議席取得、元与党の国民会議派(コングレスI=Congress I)の閣外協力のもとに組閣、党首のケリジワルが首相に就任したいきさつがあった。

当初から、話題に事欠かず、地下鉄で出省したり、公邸やVIP用警備を拒絶したり、果ては、連邦直轄地(首都デリーは州ではない)で中央政府下にある警察と対決、デモに入って二日間デリーが無政府状態に陥ったり、次期中央政権の首相候補の呼び声高い、現野党インド人民党(BJP=Bharatiya Jyanata Party)のナレンドラ・モディ(Narendra Modi)もかすむほどの、マスコミのにぎわせぶりだった。

電気代の格下げ、水の一部無償供与、ポピュリスト政策も抜け目なく実施、派手にぶち上げるたびにマスコミが躍らせられたひと月半であった。

閣僚の一人であったバルティ(Somnath Bharti)法相が、ドラッグ売春の宝庫であるアジトを急襲するよう警官に指示、逮捕状なしの家宅審査を拒否した署長に怒り狂い、自ら乗り込み、ウガンダからの移民女性を糾弾し、人権乱用と批判された事件もあった(この事件を契機に、デリー政府は警官隊と衝突、抗議のデモに入り、報道陣からはストリート政治と揶揄される。州首相が路上で重要書類のファイルをチェックする様はアナーキーと呼ばれても仕方がないものだった)。

既存の政権と180度の転回、汚職一掃のほうきを選挙シンボルに、反汚職をぶち上げる庶民党に期待した、デリー民は裏切られた思いを禁じえずにいるだろう。

ケジリワル氏の意図が今ひとつ飲み込めないが、中央政権をかき回すだけかき回して、話題づくり、派手なパフォーマンス続きで、4月の総選挙への地固めを作ったとの説もある。
つまり、短期で終えることは最初からの戦略だったとの見方だ。
無責任との非難を尻目に、人気取り政策を49日間で目一杯提示、総選挙(543議席の下院議員選挙、州首相を退陣したケジリワル氏も立候補の資格が出てくる、地方の政界より中央政界、下院=ローク・サバー=Lok Sabhaに庶民党のメンバーを目一杯送り込むことが当面の目標だ)につなげたとの見方だ。
「悪夢が終わった、最悪の州政権だった」と言ったのは、野党BJPのリーダー、アルン・ジャイトゥレイ(Arun Jaitley)。

有権者はなにがなんだかわからぬままに、かき乱されたという感じで、既存の政党にないゲリラ戦法が果たして戦略だったのか、疑問が残る。路上のデモンストレイター(デモ者)からガヴァナンス(統制者)へ、政権を掌握した以上、法遵守は必至だったにもかかわらず、路上でアジるアナーキーさを維持、既存の政権とは明らかに異なる型破りぶりで、それだけに目が離せなかった。
デリー首相の座を早期に退いて中央選挙戦に打って出るとの目論見が最初からあってのことで、退陣のきっかけと時期をはかっていたということか。

警官隊との衝突デモに入ったとき、あわや大統領管制下に置かれるかと危ぶんだが、閣外協力の国民会議派は支持を撤回しなかった。住民への選挙公約を果たせ、そう早期に支持は取り下げないとの理由で政府組織の呈を成していない扇動政権を存続させたのだ。

ノンポリの私には、ケジリワル氏の意図が今ひとつつかめない。
政治の初心者ゆえの暴走とも思われぬ。
戦略としたら、権某術数の既存政治家の裏をかく、相当に巧緻なやり口だ。
すべて承知で、かく乱戦術に出たように思える。
つまり、デリー政権は短期の実験台、焦点は総選挙にあったということだ。
殉教者気取りの庶民党党首は効果的に、中央政界へとコマを進めた(既存の政治家顔負けのドラマを演出したといって過言でない)。

報道陣のインタビューに答える、トレードマークの白いガンジー帽と襟巻きのケジリワル氏はつとに殊勝だった。
「汚職法案が通らぬなら、デリー首相の座にとどまる意味がない。反汚職が目玉、法案を通せないなら、1000回チーフミニスターを辞めてもいい」。

しかし、この退陣劇で有権者を印象付けたことは間違いなく、四月の総選挙において、庶民党の票が伸びる可能性大だ。
つまり既存の政治家は一人残らず汚職三昧、有権者は正直が売り物の庶民党に賭けざるをえない。
庶民党はインドの政治を塗り替えるダークホースとなるかもしれない。
汚職づけの既存政治のニッチ、割れ目に咲いた草花だ。
インドの政治現象ならではの、新潮流、革命の芽といえるかもしれない。

現政権(国民会議派中核の少数党からなる連立政権)の相次ぐ汚職にほとほと愛想を尽かしている国民、中流民の権利意識の高まりが既存政党の隙間に生み出した市民活動あがりのゲリラ党、庶民党は既存政治に小さな花を咲かせたといえるかもしれない。
かくなる上は、徒花に終わらないことを期待したい。

*明けて翌日、ケジリワル主導下の庶民党は待ってましたとばかり、下院議員立候補者リスト20名を公表、先に「不正直」政治家のリストを発表していた同党、20名はいわゆるそのベテランといわれる汚職政治家たちに対決することになる。

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次期首相最有力候補のティーパーティー

2014-02-12 19:19:24 | 政治・社会・経済
四月に総選挙を控えているインド、本命の現野党、インド人民党(BJP)の首相候補、グジャラート州の現首相、ナレンドラ・モディは各地で盛大に選挙運動を繰り広げている。

現与党国民会議派(コングレスI)の副総裁、ラフール・ガンジー(母の総裁はイタリア生まれのソニア・ガンジー、暗殺されたラジブ元首相の未亡人、インディラ・ガンジー元鉄腕女性首相は祖母)もかすむほどのカリスマ性で、選挙綱領は『経済発展』を掲げている。
北西インドのグジャラート州は発展著しい州として注目され、モディの手腕がつとに注目されているのだ。

インド人民党は、アメリカの共和党にならったティーパーティー戦略に出(アメリカのはティーを仲立ちの政治談議というより、草の根の抗議運動)、インド各地にチャイ(甘ったるいミルクティーで北インドの庶民が愛飲)の店を繰り広げ、一杯二ルピーの安値で、客=有権者に政治談議をしてもらおうとの趣向、チャイ屋には巨大スクリーンももうけられ、モディが住民とざっくばらんにチャイ屋で語り合う場面も映し出されている。

今までにない斬新なチャイ屋展開のアイディアは、注目を浴びている。
モディ自身がチャイ屋の息子だった出身も利いて、有権者の注目を集めているのだ。

当オディッシャ州でのモディの集会にはすでに何万名という有権者が詰めかけ、次期首相の最有力候補の演説に熱心に耳を傾ける若者の姿が目立った。チャイ屋は12市47箇所にもわたって大々的に展開された。

汚職三昧、減速経済と失政だらけの現政権に有権者はほとほと愛想を尽かしているだけに、まず現与党の国民会議派が惨敗を喫すのは必至、ガンジー家の長男ラフールはいまだ政治家として未熟でカリスマ性もいまひとつのこともあって、モディ旋風に押され気味だ。

ただし、発展の陰でのイスラム教徒殺戮(2002年グジャラート暴動、列車焼き討ち事件でヒンドゥ心酔者が38名殺された報復で、2000余名のイスラム教徒の無辜の命が奪われた)を看過した罪が今も翳を落としている。

いずれにしろ、チャイ屋全国展開のアイディアは抜群だ。
モディ旋風が本格的に吹き荒れそうで、米政府ですら、これまでのビザ発給拒否(グジャラート暴動看過の罪が人権乱用に引っかかった)の態度から、モディに尻尾を降り始めた(ナンシー・パウエル駐インド大使がモディ州首相を現地グジャラート州ガンディナガールに訪問)。

モディの「わが世の春」が、総理当選に結びつくか、選局を見守りたい。
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村長が命じた集団暴行

2014-02-09 22:21:58 | 政治・社会・経済
インドのレイプ国家の汚名は晴れる気配がなく、相変わらず暴行事件頻発の毎日だ。
知る人ぞ知る、インドは26分に一度の割りでレイプ事件が発生する悪名高い女性蔑視国で、首都デリーにはレイプの都との異名もあるほどだ。

最近、デリーに次いで悪名高いのが、西ベンガル州。
当居住州、オディッシャの北隣で、州都はカルカッタ。

その西ベンガル州の原住民のビルブム村(カルカッタから180キロ)で、非合法の村議の長が、部族外の男性と関係を持った20歳の女性を懲らしめの罰として、住民十三名に集団暴行させる刑を言い渡した(1月20日)。16歳の少女の集団暴行殺人事件が起こってまもないときだった。

まさしく中世の魔女裁判である。

カープパンチャヤートといわれる私廷(カンガルーコートといわれる一種のつるし上げ裁判)では、オーナーキリング、名誉の殺人、家族の意向に背いて、タブーのカースト結婚をした男女を私刑に処したり、言語道断な判決が下されている。
レイプを減らすために、女性はミニスカートをはくなとか、ケータイを持つなとの時代錯誤の令を下したところもある。

またかとうんざりするくらいの頻度でレイプの起こるインド、最近書いた短編小説も2012年12月16日発生した残虐集団暴行事件がベースになっている(世界中に報道され、国連総長潘基文=バン・ギムンをして、人口の半分の女性が安心して自由に暮らせない国に真の繁栄はありえないと、慨嘆させた)。いつか、フィクションにしろ、ノンフィクションにしろ、インドの女性暴力の実態はメッセージとして伝えなければならないことである。
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インドの中の異国、北東民のデモ騒動

2014-02-09 18:26:02 | 政治・社会・経済
首都デリーで、北東地域からの学生や移住者が気炎をあげている。

アルナチャルプラデシュ州出身の19歳の学生(ニド・タニアさん)が、南デリー・ラジパット・ナガル地区の商店主たちの殴る蹴るの暴行を受けて、死亡したからだ。
金髪に染めて逆毛立たせたヘアスタイルをチンキ(中国人)と、たまたま道を聞いた店主に揶揄され、けんかになり、いったんは警察の仲介で被害者であるニドさんのほうが店を壊した賠償金を払って納まったが、後刻またその界隈に出かけて袋叩きにあい、怪我が元で亡くなったもの。
被害者はアルナチャル州議(与党国民会議派)の息子だった。

ノースイーストといわれるインドの北東部は、
アルナチャルプラデシュ、マニプール、ナガランド、アッサム、メガラヤ、ミゾラム、トリプラ州など七つの姉妹州とシッキム州から成る地域で人口約3886万人、北は中国、東はミャンマー、南西はバングラデシュ、北西はブータンと国境を接する要衝地域でもある。
顔立ちも内部のバタ臭さとは異なり、モンゴロイド系、中国、韓国、日本人といっても通用するアジアの東洋系。
日ごろインドの内陸部からは阻害されており、インド国内にあってインド人でないような、継子扱いを受けている。

何せ、インドは広い、ノースイーストといわれても、大方のインド人にはそれはどこの国のことと、州名すらおぼつかない、インドの中の異国なのだ。
がゆえに、常日頃差別待遇、デリーや、うちの息子の勤める南のバンガロールなど同地域出身の学生や移住者が多いが、デリーでは特に見下されているらしい。

ちなみに、日本人の血が半分混じるわが子も、よく北東地域出身者と間違えられる。

アルナチャルプラデシュ州は中国が占有権を主張し、自国のマップに組み入れていることでも有名だが、こうした差別事件が相次ぐと、州民も、中国に属することを望む者すら出てくるかもしれない。

学生中心のデモ隊がのろしをあげる中、今度はマニプール出身の14歳の女子中学生が、家主の息子に誘拐され暴行される事件が発生したもんで、怒りの抗議デモはさらに勢いを増し、中央政府も対策に追われているところだ。

インドは差別意識の強い国で、宗教、カースト、言語、民族が多様なモザイク国家だけに、これらの相違に端を発する紛争(コミュナリズム)が絶えない。
まず足元の家族内差別、女児に対する差別、嫁に対する差別、使用人に対する差別と、男尊女卑の保守的な社会で階級意識が強いため、そこから始まって、最下層カーストの差別、少数派のイスラム・キリスト教徒への差別、原住民への差別、辺境地区住民への差別と、どこを見回しても差別だらけだ。金持ちの貧民への差別もある。乞食も多いが、ほとんど人間扱いされていない。

自らのうちにくすぶる差別意識は結構、やっかいだ。
いまだに、使用人への待遇を学べていない私だ。

先月、在米(ニューヨーク)インド大使館の副総領事(39歳女性)が、メイドの給与の虚偽報告でストリップ検査後拘留され、外交官の免責特権で帰国したが、メイドの人権よりも、外交官待遇が問題で、インド政府のプライドを逆なでする屈辱的な事件だっただけに、デリーの米大使館の館員一人(フェースブックで反インド的発言をしていた)を国外退去させ、警備用のバリケードも撤去という報復措置に出た。

当外交官は米の法定基準より格段に安い給与でメイドを雇っていたことが明るみに出ているが、それはインド政府の方針でもあったわけで、インド側としては免責特権のある女性外交官を裸の抜き打ち検査されて、ドラッグ売買者と同じ施設に拘留されたという、国のプライドに関わる屈辱的な事件だったわけで、一部の報道機関を除いて、マスコミの大方は外交官擁護に終始した。

しかし、日本だったら泣き寝入りしていたところで、インドはさすが負けてないというか、天下のアメリカとも堂々渡り合い、目には目をの措置に出たのだから、たいしたものだ。
ちなみに過去、元大統領(科学者出身のミサイルの父、カラム、イスラム教徒だった)も空港から引きずられるなどの屈辱的な処置を受けており、あと何人かのVIPも似たような待遇で、そのたびに抗議が出ていた。
9.11テロ後厳格になったということだけでなく、白人優位のアメリカの有色人種に対する差別待遇といえないこともない。
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