インドで作家業

ベンガル湾と犀川をこよなく愛するプリー⇔金沢往還作家、李耶シャンカール(モハンティ三智江)の公式ブログ

きょうだいのお祭り

2007-08-28 23:28:44 | 宗教・儀式
 現地生活ダイヤリー 

<8月28日>
 今日は、「ラキ」といわれるインドのブラザー&シスター・フェスティバル。
姉妹が兄弟に紙製の花飾りが真ん中に付いた、紐で結ぶ方式の腕輪をくくりつけ
て、兄弟の健康と繁栄を祈るという麗しいきょうだい愛を深めるお祭りなのだ。

           

 当地プリーの、数々の国際的賞に輝く有名なサンドアーティスト、パトナイクさ
んが浜に砂を固めて、きょうだいの契りのシンボルでもある巨大な腕輪を形作っ
た。
 つい三日前、ハイデラバードで連続爆弾テロが発生し、40余名の尊い命が一瞬に
して失われたせいもあって、砂の上には、「テロ反対」という社会的メッセージも
刻まれていた。

 日が落ちてから、再度浜に出ると、東寄りの海上に見事な大ぶりの満月が。その
あまりの美しさに感嘆の息をつく。夜は野犬が凶暴になるため、いつもは日の入り
時を狙って浜に散歩に出るのだが、このところばたばたしており、薄暗くなってか
らという日が続いていた。宵闇のベンガル湾もなかなか乙なもので、月と星の浮か
ぶ夜空がきれい。

                      

 今日はとくにフルムーンなので、夜景は格別。濃紺の大海に月光がペイルブルー
の一条の帯を刷いて、煌々ときらめく。ゴールデンイエローの見事な満月は時折流
れるむら雲の下に隠れ、いっとき光がさえぎられ、海が暗くなる。月にむら雲とい
うと、つい日本の繊細な光景を想像しがちだが、ここは亜熱帯陸、海は雄雄しく荒
波を打ち寄せ、潮騒が地響きを立ててごおーっと鳴り響く。豪壮な夜のベンガル海
である。波打ち際はひたひたのうしおが押し寄せ、満月下の海を楽しむカップルの
姿が二、三。立ち去りがたい壮麗さだったが、野犬が吠えないうちにと早めに浜を
後にした。


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インドの甘菓子

2007-08-28 21:38:06 | 食・健康
 
 「ミタイ」と呼ばれるインドのスウイートは、甘ったるいミルクベース状の菓子
類がポピュラー。材料にはミルク、シロップ、ライス、ドライフルーツ、ナッツ、
チーズ、ココナッツ、ナツメグ等が使われる。
なかでも当ベンガル地方の特産は「ロショゴラ」。 蜜に浸した生揚げチーズボー
ルで、口の端に甘い露を滴らせながら、頬張ると、豆腐のように柔らかく口中で崩
れて美味。インド庶民は、カレー食のあとで、デザートとして戴くわけだが、チリ
(唐辛子)の辛味を消すには格好の甘ったるさ。

 「ラドゥー」といわれるカルカッタ名産の、甘い天カスを束ねてピンポン球くら
いの大きさに握り固めたごつごつのお菓子と、「ジャムン・グラブ」(巻頭写真)
といわれる薔薇の香水に浸したかぐわしい揚げボールも有名で、こってりギー(純
バター)と甘ったるさの混じった独特の風味を楽しめる。「ラドゥー」は自家製に
なると、両掌に納まりきれないほどでかいボールになり、割って少しずつ頂くの
だ。甘い揚げボールは口中でしゃりしゃりと崩れ、ナッツやレーズン入り。10月の
ドゥルガー女神大祭時には、カルカッタではこのスウイートが飛ぶように売れる。
私自身、甥の結婚式後、新妻のご実家手製の大きな天カスボールを頂いたが、心の
こもった家庭の味で舌がとろけるほどおいしかった。
 お茶請けにいいのが、固めたミルク菓子。上に銀箔が載せられ、口に含むとミル
クの風味がいっぱいに広る。レモンやオレンジ、チョコレート風味もあるが、なん
といっても素のままのミルク菓子がおいしい。形状も平たい丸型、角型、一口大の
ボール、カラフルなかまぼこ渦巻き型、動物をかたどったものと多彩、インド風和
菓子といった感じで、日本茶とよく合うのがうれしい。

 ミタイ屋さんの店頭のガラスケースにはよりどりみどり、甘いお菓子が満艦飾に
並べられ、眺めているだけでもよだれが垂れてきて、どれにしようか迷ってしま
う。
 先般訪れたマドゥライでは、「ザムザム」という有名なミタイ屋さんで、ひし形
状に固めた分厚いミルク菓子にトライしてみたが、かぶりつくと、中がパイ生地の
ように糸を引く作りになっており、おいしさのあまり思わず目が細まった。

           

 デザートとして日常食されているミタイだが、結婚式やお祭り、男児誕生時も、
お祝いに隣近所・親族へと配られるのがインドの慣習と化している。

                      

 普段コーヒーにすら砂糖を入れない私としては、砂糖の塊という感じで甘ったる
すぎるのが玉に傷だが、疲れがたまったとき、日本茶と一緒に一口かじりたくな
る。

                              
            
           
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息子の独り立ち

2007-08-09 16:17:49 | 
 昨年からバンガロールのカレッジでITを学び始めた日印混血息子、サミール(日
本名は理秀)が、二年生に進級する8月から、寮で同室だった3名の学友と折半し
て、フラットを借りることになった。先月アパートの下見に現地を訪れた私たち夫
婦は、郊外のキャンパスから徒歩で10分と離れていない貸間に息子の先導で案内さ
れた。電気・水代別途の家賃6000ルピー(1ルピー=約2.5円)という一階の部屋
は、ホールをはさんで二室、キッチン、トイレ&シャワールームのほか、電話ボッ
クスのようなプジャルーム(祈祷室)も完備。家具は付いてないが、想像した以上
にこぎれいで、ほっと一安心。

              

 停電になった際に備えて、自家発電機も完備しているとのこと。学内寮は、バン
ガロール一のキャンパスを誇るわりには設備がお粗末で、ジェネレーターがなく、
真夏時は汗だらだら、屋上の水タンクにくみ上げるためのモーターが稼動できない
ための断水とも格闘していた息子だったのである。北インドの避暑地・ダージリ
ンで4年間寄宿舎生活を送り、夏でも涼しい恵まれた環境にあった息子は、一年目
のバンガロールのミッドサマーにいささかうんざりしたようで、電話口で時たまこ
ぼしていた。
 デカン台地の南に位置する同地も高地には変わりないのだが、ITビルが軒並み
建ち並ぶ大都会ということもあって、夏は北と変わらぬほど蒸し暑くなってしまっ
たようだ。

それはさておき、このたびのアパート住まいに関しては、父親とちょっとしたい
さかいがあった。夫は寮生活が安全性のうえからも望ましいと、大反対していたの
である。息子が母である私にSOSを出してきたので、間に入ってなだめ、どうにか
説得にこぎつけた次第だった。一時期は激怒した夫が息子を頭ごなしに叱りつけ、
息子が大きな子供のように泣き出すひと幕もあり、母親の私としても胸を痛めずに
はおれなかったものだが、部屋を見て厳格な夫もようやく安心したようだ。同室者
はみな、一年寮で共同生活を共にした仲間たちで気心が知れているのもありがた
い。食事は、掃除兼用のコックが通いで来てくれるとのこと。

             
 

 翌日は、バンガロールきってのモダンな通り、ブリゲイド・ロードでショッピン
グ。バーゲンセールしていたので、親子三人分のTシャツやジーンズを買い込んだ
あと、ネパール人学友が教えてくれたという息子特選の裏路地にあるチベット料理
レストラン、「テイスト・オヴ・チベット」で、昼食をとる。チベット移民の多い
ダージリンにいた息子は、チベット風ギョーザ、モモが大好物。
おしゃれな目抜き通りとは思えないほどの、どれも一皿30ルピー前後の安さで、シ
ンプルな簡易食堂紛いの店内は若い人いきれにあふれ超満員だった。シュウマイの
ような形状のモモやフライドライス(チャーハン)、チョーメン(焼きそば)に舌
鼓を打った後、息子のたっての希望で、ハリーポッターシリーズの映画を観ること
になった。
 表通りのレックスシネマは、バルコニー席が一人150ルピーとさすがに高値だっ
たが、息子と劇場で映画を見る機会はこういうときでもないとないので、夫も奮
発。映画のあとは、バンガロールならではのしゃれたスーパーマーケットで菓子・
スナック類を買い込む。ついでにワインショップにも立ち寄り、オリッサに比べる
と200ルピーも安い(州政府の酒税率の格差によるもの)、インド王室ご用達だっ
た歴史を持つインデージュ社の銘柄「リビエラ」の白を300ルピーでゲット!                   

                       

 三日目の夜、授業が始まる息子を残して、私たち夫婦のみ列車でマドライへ。一
泊してミナクーシ寺院を再もうでした後、バスでラーメシュワラムへと向かった。10年
前名高いシバテンプル、ラマナンタスワミ寺院参拝を逸したことをしきりに悔いて
いた夫は、同地を再訪することを強く熱望し、このたびの旅の実現となったのであ
る。
 南のラーメシュワラムは、わが居住地、東のプリーと、西のドゥワルカ、北のバ
ドリナートと並んで、インドの四大聖地のひとつとして名を馳せている。人口
75000名というこじんまりとした町なのだが、聖地にありがちの特徴で風光明媚。
ベンガル海では、多数の巡礼旅行者が聖なる沐浴をしていた。昔スリランカ大陸へ
とつながる船が出ていた岬の突端までオートリキシャ(往復200ルピー)を走らせ
たが、前回同様汚染されていない海の美しさに感激、タイの島を思わせるクリスタ
ル度で、貝殻やさんごのかけらを拾って漫歩、しみじみ息子を連れてこなかったこ
とが悔やまれた。

 土曜にバンガロールに戻って、すでにアパート生活を始めていた息子と再会、翌
朝、バスで3時間かけて、遠郊のナンディ・ヒルへ。ちゃちな丘のようなものかと
思っていたら、バスは本格的な山道をのぼっていき、一端の山容。山襞にごろごろ
岩が張り付いているロックマウンテンで、一人3ルピーの入場料を払って、公園と
して整備されている広大な山頂に上がった。なだらかな岩山のてっぺんから一望の
下に見渡せる市街の眺望を楽しんだ後、最終地点を回りこんだ先にある州政府経営
・フォックスホテル内のレストランでランチをとる。
 眼下には、赤茶けたデカン台地に広がる段々状のフィールドが開け、独特の形状
が美しく、緑と赤の綾なす眺望は眺めていて飽きることがない。ワインは5スター
レストランでもない限りないため、ビールを一本オーダー、チキンが好物の息子は
カバブを所望。カリフラワーカレー、フライドライス、チョーメン、どれもおいし
く、満足。三室しかない同ホテルのルームチャージは500ルピーとのことだった
が、バルコニーからの眺めはさぞかしすばらしいものにちがいなく、時間があった
ら、家族で一泊したいところだった。

                            


 息子をフラットに送り出した後、前もって買っておいたインデージュ社の「ヴィ
ン・バレット」の赤(210ルピーとオリッサより140ルピーも安値だったが、品質は
リビエラの方がやや上)で息子の独り立ちを祝って夫と乾杯、ワイン党の私たちは
この旅の間中、なんと4本も堪能してしまったことになる。真夜中12時近い、郊外
のイエストバントプール発の夜行列車の出発時刻が刻々と迫ってきていた。


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