よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

サプリを上手に使うコツ!

2023-09-28 20:15:06 | 健康・病気
 皆様の中にも、体によいと考えて、サプリや健康食品を利用されている方も多いと思います。私もその一人ですが、数あるサプリのなかで何をどれだけの量を摂るかは悩ましいところです。今回はその疑問について考えていきましょう。

 そもそもサプリが本当に必要なのか?という疑問です。
 ヒトは、体に必要な栄養素すべては体内で作ることはできない従属栄養生物です。皆様もビタミン(体内でつくれないが生きていくのに必要な化合物)、必須アミノ酸、必須脂肪酸、必須ミネラルなど聞いたことがあると思います。多くの生物は多様な働きをするビタミンCは自分で作れますが、私たち人類はそれすらも自分では作れません。
したがって、生きていくためにはこれらの栄養素は外から摂取しなければなりません。しかし、様々な要因(生活環境、遺伝的、社会的など)により十分な量が摂れないことが起こります。例えば、大航海時代に船員が壊血病になり亡くなっていたのが、ビタミンCが含まれる野菜・果物を摂取するようにしたら亡くなる人がいなくなったとか、日清・日露戦争で白米ばかり食べていた陸軍兵士が脚気になり亡くなっていたのが、麦飯に含まれるビタミンB1を摂った海軍兵士には脚気がほとんどいなかったなどです。さらに、飽食の時代と言われる現代でも、カロリーは摂れていてもタンパク質やミネラル、ビタミン不足の人が多く、新型栄養失調として注目されています。
 国は、栄養素の一日摂取目標量を定めていますが、これは病気にならない最低量です。その必要量は、その人の状況(体質、育ち盛り、妊娠授乳中、感染症罹患、ストレスなど)により変化し個体差が大きいです。また、ビタミンCは、美肌を目指す、風邪を治す、がんを治すなど効かせたい目的、臓器によっても必要量が違います。したがって、多量を栄養素が必要な場合、すべてを食事から摂取するのは現実的でなく上手にサプリを利用するという選択肢は有効だと思います。

 では自分に必要なサプリはどう選んだらよいのでしょうか?
 これも目的により大きく分かれると思います。現在不調があって病院で検査を受けても大きな異常が見つからない場合と特に不調はなく元気だけど健康維持や長寿を目指す場合とでは、当然アプローチの仕方が違います。
ここで注意が必要なのは、病院では検査値が基準内にあると病気と診断されないことです。そして基準値は必ずしも正常値(健常値)ではないのです。例えば、ヘモグロビン値や血清鉄が基準内にあっても鉄欠乏があり、それが不調の原因になることがあります。あるいは、腸の調子が悪くても大腸検査で肉眼的異常がなければ問題なしと診断されます。最近は、腸内細菌の重要性が認識され便の遺伝子検査も自費検査で可能ですが、消化吸収能力は正確に評価することができないのが現状です。
これら、原因がはっきりしない不調に対して効果を発揮する可能性があるのがサプリです。各種ビタミン、ミネラル、タンパク質(アミノ酸)など、今までの研究で効果が証明されているサプリがこれにあたります。
 分子(整合)栄養療法は、細胞レベルでの代謝過程に注目して、どの栄養素が足りないかを検討し、それを適切に補う治療法です。この時に、なぜこの栄養素が足りなくなっているのかの根本原因を探ることも重要であり、そこを改善することにより、いずれサプリを必要としない体になることを目標とします。「疲れやすい」、「動悸がする」、「お腹がはる」、「やる気がでない」、「アレルギー体質である」などの症状があるにもかかわらず、病院の検査で異常なしと言われた人は、適切な栄養療法を受けることにより劇的に改善することがあります。

 健康維持あるいは美容、アンチエイジングを目標とする健康食品やサプリも存在します。青汁、ゴマを使ったセサミン、シジミに含まれるオルニチンなど食物から作られたものや、最新の細胞内代謝の研究で見つかった、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)や5-ALA(5-アミノレブリン酸)などアンチエイジングを期待したサプリなど多数あります。
ただし、これらは必須という訳ではなく、高価なものも多く、効果のエビデンスも十分ではありませんので、あくまでも自分の責任で懐と相談しながら摂取するというものになります。

 サプリの購入や摂取する際に気を付けるポイントは何でしょうか。
 原料が粗悪なもの、不純物が多いもの、肝心の成分量が少なく添加物が多いもの、消化吸収効率の悪いものなど一見したところわからないものがネット上で多数売られています。最低でもGMP(適正製造規範)認証工場で作られた製品を選ぶべきだと思います。またサプリ先進国の欧米メーカー製であっても、分量が日本人には多すぎる場合もあります。
 腸内環境が悪い、炎症がある、有害物質がたまっているなどでは、折角のサプリも効果が出ません。腸内環境をよくするために避けるべき食材(グルテン、カゼイン、カフェイン、アルコール、砂糖など)にも留意しましょう。

 私事ですが、臨床分子栄養医学研究会の認定医を取得しました。皆様が上手にサプリを利用して健康に過ごしていただけるお手伝いできればと考えています。

参考文献: 田村忠司『サプリメントの正体』三笠書房
      宮澤賢史『あなたのサプリが効かない理由』イースト・プレス