前回は、「老い」についてお話しました。 要約すると、
「老い」は細胞の衰えと捉えることができ、エネルギー不足が原因の一つである。エネルギー(ATP)を産生しているのがミトコンドリアであり、ミトコンドリアを元気にすることが若さを保つ秘訣(いわゆるアンチエイジング 抗加齢医学)である。
そして、現在知られているミトコンドリアの能力を高める方法が、カロリー制限と運動です。
カロリー制限の研究によると、酵母、線虫といった微小生物から、マウス、ラット、サルまですべての生命体で食事量を30%程度少なくしたほうが長生きすることが観察されています。これは、カロリー制限をすると、インスリンの分泌が少なくてすみ、長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)がフル活動した結果と考えられています。そして長寿遺伝子が活性化するとミトコンドリアの量が増えることが報告されています。逆に、カロリー過剰で肥満であればインスリン分泌が多くなり、長寿遺伝子が働かず、その結果ミトコンドリアの能力も低下し、老化が進むのです。
次に、運動について考えて見ましょう。ミトコンドリアは、酸素を使って効率よくATPを作り出すことができます。しかし逆に、酸素がうまく使えなければ細胞を傷つけ老化を促進してしまう活性酸素を産生してしまいます。したがって性能のいいミトコンドリアを増やさなければなりません。ミトコンドリアの7割は筋肉の中に存在するため、運動して筋肉を使うことが有効であり、しかも運動の程度は、“ちょいきつめ”が最も効率がよいと考えられています。なぜならより酸素が必要となれば血管拡張性ホルモンの分泌が増え血の巡りもよくなり、ミトコンドリアの数も増えるからです。具体的には、じんわり汗ばむ運動(速歩など)を20~40分、週2~3回以上が目標です。
さらに、ただ食べ物を減らすより、積極的に体を動かす方が、ミトコンドリアをより活性化できるそうです。逆に、不規則な食事、偏った栄養は、長寿遺伝子をおかしくし老化を進めることにもなるそうです。
「老い」は誰も避けることはできませんが、その進行スピードを変えることができます。若々しく元気に生きるために、適切な食事としっかり体を動かすことを心がけたいものですね。
参考文献: 「臓器は若返る」 伊藤 裕 (朝日新書)