ものぐさ屁理屈研究室

誰も私に問わなければ、
私はそれを知っている。
誰か問う者に説明しようとすれば、
私はそれを知ってはいない。

暴落はトレンド、トレンドはフレンド 9

2020-05-22 11:00:00 | トレンド・フォロー


⑧3月23日 先ず、ここに至るまでの相場認識を記して置くと、キリ番の19000円、18000円も割り、順調に(?)下げてきて、3月17日に16378円を一旦は付けたが、結局、陽線で引けた。髭を上下に着けているので、底打ちを示唆しているが、日柄としては戻り高値からは18日目で、5日線に絡んでもいないので、様子見。

3月18日、19日は陰線だが5日線にタッチし出しているので、下げの勢いが鈍ってきている。この3日で小さいレンジを作っていると見れば、やはり16300円を意識した動きとも取れる。日柄は20日目なので、底打ちの期間に入ったと考えられる。週明けの動きに注目。

ということで、週が明けて23日には、ごくわずかだが陽線で5日線を下から上に抜けている。これはグランビルの法則の買いのシグナルで、縦軸横軸の目安から見ても底を打ったのではないかと判断した。

従って、だいぶ利益が出ていたこともあって、ショートの裡9を利確し、結局、2-3とした。ショートを2残したのは、下げる可能性もあるからで、もし下げていくようであれば、例によって臨機応変にポジション・ワークで対応していく訳である。また、このポジションは、2-(2+1)と見ることも出来る。ショートの2の利益をロングの2でヘッジして確保し、リスクにさらしているのはロングの1だけであると考える事も出来る。

と同時に、ここでドテンした形になったので、前日の安値16538円の1円下、16537円にヘッジ売り1の予約注文を入れる。若しこれで下げて行って下値を更新すれば、自動的に3-3のポジションになる訳である。

さらに、今回は底打ちを示す今一つの兆候が見られたので、それも記して置こう。

日経225というのは指数なので、先物やCFDのように、ETFとは別に取引所の時間帯以外にも取引されている金融商品もあって、同じ日経225であってもそれぞれのチャートは微妙に異なっている。

私はそれらのチャートも参照するのを常としているが、見たいチャートが一通り揃っているので、以下のサイトを常用している。

世界の株価と個人投資家ニュース

そして、3月23日の夜、いつもの様にこのサイトのチャートをざっとチェックしていったところ、日経225CFDと日経225ドル換算のチャートの形に目が留まった。この2つは殆ど同じなので、ここでは日経225CFDのチャートを示すが、私はこのチャートを見て、やはり明日から上昇するのでは、と思ったのである。判り易いように、直近の陽線を黒く塗っておいたが、引いてあるのは、16300円と16100円のラインである。直近の動きが、この二つの価格帯ゾーンを意識した動きになっているのが判るだろうか。



ついでに比較の意味で、通常の日経225のチャートも示しておこう。



このCFDのチャートが示すのは、前に相場と言うのはブルとベアの陣取り合戦と述べたが、件のゾーンに向ってベア側が攻めてきたが、直近では、ここを防衛ラインと考えているであろうブル側が徐々に押し戻していったことを示している。そして、注目すべきはこの3月23日のピンバーである。この日に、押し戻されていたベア側が、再度一気にゾーン内に攻め込んだが、ブル側が猛反撃に出てそれを押し戻し、結局この日は陽線で引けたという形になっている。つまり、このゾーンをめぐる熾烈な攻防を、ブル側が結果として死守し切って制したということを、このチャートは如実に示していると私は解釈した訳である。

⑨3月24日 窓を開けて長い陽線。やはり、底打ちしたようだ。ショートを切って、0-3とする。従って、ヘッジ売りも3とする。位置はそのまま。

今度は、上値の目安であるが、18000円は超えたので、キリ番の19000円と20000円、25日線にタッチする辺りが挙げられる。それに、今回の下げのフィボナッチ比率による戻し、19174(38.2%)と20054(50.0%)辺りが考えられるが、後者はキリ番の20000円と近接しているので、上げてもこの辺りまでであろうと見当をつける。

⑩3月26日 3月25日も窓を開けて長い陽線、19546で引けたが、この26日には下げて陰線、はらみ線(天井シグナル)になってしまった。よって、1-1のスクウェアのポジションとした。

⑪3月31日 3月27日は陽線だが、25日の高値を超えられず。週明けの2月30日も陽線だが、前日に対して高値安値を切り下げている。5日線に触りだしたのも下げの兆候である。そして、この31日に陰線で上から5日線を下に抜ける。従って、グランビルの法則に従って、売りを入れ2-1とした。

なお、26日の陰線の始値は19234円、同じく陰線のこの21日の始値は19181円と、フィボナッチ比率による戻し、19174(38.2%)がマーケット・メイカーには意識されているようだ。



⑫4月1日 窓を開けて長い陰線。ロングを切って3-0とする。これで上値を切り下げたので、下値を切り下げて2番底を付けに行くかに注目。

⑬4月3日 2日3日と上下に髭が出た短い陰線が並び、下げ渋っている。この並びは戻しで上げた分の戻し安値(ややこしいな)の目安として、フィボナッチ比率61.8%の17592円が意識されているように思えたので、1-1のスクウェアに戻す。



⑭4月6日 長い陽線で5日線を下から上に抜ける。0-2。これで下値を切り上げたので、底打ちが明確になった。このあと上値を切り上げるかどうかに注目である。

⑮4月7日 上下に髭の出た短い陽線だが、初めて25日線の上に出た。経験則として、25日線をロウソク足の実体部分が超えると、そのまま上がっていくことが多いので、ロングを追加、0-3とする。

⑯4月13日 そのあと3日上がっていったが、前の高値を超えられず、この13日に陰線で5日線を上から下に抜けたので、0-0とし、手仕舞いすることにした。私の暴落システムはあくまでも短期勝負用と割り切っているので、手仕舞いのルールとして大体1月半くらいを期限にしているからである。それは、これ以上ダラダラと続けると判断が甘くなり、思わぬポカをする傾向があるためである。

この後、結果としては高値を切り上げてアップトレンドになって行ったので、手仕舞いをするには早すぎたという見方もできようが、これだけでも十分な”餅”が得られたので、まあ良しとしよう。終わってみれば、今回の暴落は、妙な乱高下もなく非常に素直な動きの暴落であったように思う。幾分長居し過ぎた嫌いがないでもないが、それは底打ちが若干早く、2番底を付けに行くのではないかという先入観が少なからずあったからで、それでも動きに素直についていくことが出来たので、まあ上出来の部類である。それは端的に数字に表れているので、今回は勝率と損益比率ともに、これまでの平均値を上回ったトレードであった。


さて、以上で私の説明を終わりたいと思うが、最後に再度、暴落について述べておきたい。

誰が言い出したか知らないが百年に一度の暴落といった表現をよく耳にすることが多いが、そもそも原理的に言えば資本主義経済というのは非常に不安定なシステムであって、資本主義経済市場には暴落は付物であると言わなければならない。これは過去のチャートを確めてみれば、直ぐに分かることで、暴落は百年どころか実に頻繁に起きているのが判る。小さな暴落も含めれば、年に数回は必ず起きているというのが実状である。また同様に、暴落で〇〇兆とかの富が失われたなどといった言い方をされることも多いが、基本的に市場取引というのはゼロサム・ゲームであるので、実際には暴落時には多大な富の移転が行われているのが真実であって、この真実を冷徹に理解すべきである。

言い換えると、暴落はイレギュラーな市場現象ではなく、極めてレギュラーな市場現象であって、この事実を真摯に受け入れるならば、結局、投資(或は投機)における最終的な成否を分けるものは、暴落にうまく対処できるか否かに掛かっていると言っても過言ではないだろう。従って、ごくありふれた当然のリスク・マネージメントと言う意味で、暴落については、前もってよく研究した上で怠りなく準備しておく必要がある、とここで声を大にして再度強調して置きたいと思うのである。

といった次第で、この点を踏まえて考えれば、洋の東西を問わず、これまで暴落について特化して書かれた碌な投資本がないという事実は不思議な気がしないでもないが、結局、暴落に対する対処法というのは「裏に道あり、花の道」の典型例ということになるのだろう。日本ではないがしろにされている、そのバック・ボーンとなる基本的な考え方や原理原則に関する理論、それに私なりの暴落システムについては、これまで縷々述べてきたとおりであるが、いささかなりとも参考にしてもらって、ぜひ自分なりの暴落に対する何らかの対処法を確立して、暴落をフレンドにしてもらえればと思う次第である。成功を祈る。

なお最後に、最近感銘を受けた動画を紹介して終わりたいと思う。内容もさることながら、プレゼンテーションとしても、簡潔にして明解、実によく出来た動画であると思うので。

人間というのは通常の性癖として、どうしても「経験」というミクロな小局にしか目が行かないもので、「歴史」というマクロの大局を俯瞰するのには、よく訓練された叡智を必要とすると言わなければならないが、それが「賢人(賢者)」がオマハにしかいない理由であろう。そのバフェットがこの点で、実にうまく暴落に対処しているのは、今さら私ごときが言うまでもないことだが、この動画はバフェットではなく、もう一人の「賢人(賢者)」、相方のマンガーについてのものである。

史上最高のサクセスストーリー。ウォーレン・バフェットの右腕





暴落はトレンド、トレンドはフレンド 8

2020-05-16 00:00:00 | トレンド・フォロー
さて、前回述べたように今年の1月の月足で、ショートのエントリー・シグナルが出たので、2月からは週足も参考にしながら日足でエントリーポイントを探って行った。しかし、週足には取り上げるべき特別な特徴は見られなかったので、日足のチャートのみに基いて説明することにする。

結果としては、次の図のようなポジション・ワークになった次第であるが、その時々にどのような事を考えて、ポジションを動かしていったのかを、出来るだけ再現してみようと思う。

なお、前にも説明したように、場が引けてから、夜の時点で完成した日足を見て、翌朝寄り成りで注文をいれるというやり方を取っているので、図中のポジションは朝一の時点で取っているポジションということになる。



まず、2月4日の時点で下限ラインが確定したので、図に引いて置いたようなレンジが確認出来る。想定としては、最終的にはこのレンジを下にブレイクするので、出来るだけこのレンジの上限付近でショートを入れるのがセオリーという事になる。

①2月10日 上がって来て、想定通りレンジ上限辺りで下げたのでショートの試し玉(1単位)を入れる。1-0。

②2月14日 一旦上げたが、直ぐに高値を切り下げて下げたので。ショートを追加。2-0

③2月25日 もう一度上げ、高値を綺麗に切り下げて、待望のレンジを下にブレイク。ここは断固として本玉を入れるところである。5-2。

ここで同時にロングの2を入れたのは、もしも時のヘッジの為であるが、それは一般にレンジ・ブレイクというのは、ダマシが多いからである。タートルズ方式もレンジ・ブレイク手法だが、当然の如く勝率が低いので、これを逆手にとったタートル・スープなる手法が発明された程である。こうしておくと、もし万が一、踏み上げられてレンジ内に戻っていくようであれば、ショートを切って2-2にし、その後はトレンドに沿ってポジション・ワークで対応していくことが出来る訳である。

そして図に引いてある移動平均線は、5日、25日、75日線であるが、この25日の時点では、この3つの移動平均線のグランビルの法則によるからみ具合が、まず5日線が25日線をデッドクロスし、さらに5日線が75日線もデッドクロスしていて、次に25日線が75日線にぶつかって、今まさにデッドクロスしようとしているというダウントレンド転換の典型的なパターンである。従って、翌日、余程の大陽線でも出ない限り、パーフェクト・オーダーが完成することになる。

つまり、この25日の時点では、テクニカル的に、ダウ理論による高値安値切り下げの4点セット、グランビルの法則による移動平均線のパーフェクト・オーダー、レンジブレイクと3つが揃っていることになる。恐らく、この25日にショートを入れた人も相当数いるはずである。

なお、この2月25日には原油価格が暴落、50ドルを割れている(WTI終値49.9ドル/バレル)ので、これが今回の株価暴落のトリガーとなったと思われるが、前に述べたように私はファンダメンタルとテクニカルは表裏一体のものと考えているので、これも前に述べて置いたような、この原油暴落による株価暴落への波及シナリオは上に述べたようなテクニカル判断を補強するものという位置づけである。

逆に言うとファンダメンタル・シナリオだけで行動に移すという事は、大きなリスクを伴うので、必ずテクニカルの裏付けを取る必要があるということである。この点は、例えば「マネーショート」という映画を見た人はご存知だと思うが、サブプライムローン崩壊に懸けた主人公たちが、ショートを踏みあげられて一時的に慌てふためくシーンがあるが、これなぞは私に言わせると、主人公たちがテクニカルを全く参照していないというリスクを、実に象徴的に示しているシーンだと思うのである。まあ、原作を読んでいないのでこれは推測でしかないが、映画のシナリオ展開上、一波乱がないと面白くないという点はあるにしても、実話に基づいているということなので、このエピソードは恐らく事実であろう。



④2月27日 26日は様子見し(基本的に日足が5日線の下にあれば問題はない)、この27日の下げで、明確にダウントレンド入りと判断したので、ヘッジを切り、その分ショートを足して、7-0にする。そして、この時点で片張りになったので、同数のヘッジ買いの予約注文を入れて置いた。位置は、25日にレンジ割れした日足の高値+1円の22951円である。このあと下げるに従って、このヘッジの位置も下げていくという、トレーリング・ストップならぬ言わばトレーリング・ヘッジということになるが、最近は株でもようやく、このようなIFDだとかCOCOだとかの予約注文が出来るようになったのは、朗報である。

⑤3月5日 数日上げ下げして小さなレンジを作り、ごく小さな陰線とは言え5日線の上に出たので、グランビルの法則に忠実に従い、ヘッジを入れる。7-2

⑥3月6日 下げて5日線の下に再度潜り込み、レンジを下に抜けたので、ヘッジを切ってショートを足して、9-0にする。そして同時に、トレーリング・ヘッジをレンジの上、21720円に移動する。

⑦3月12日 3月10日につけた陽線(2万円奪回の試みか)の下ヒゲを割ったのでダウン・トレンド継続と見なし、ショートを追加、11-0にする。そしてトレーリング・ヘッジも3月11日の上髭の上、19975円へ移動する。

さて、入ってくるニュースといえば、新コロナウィルスによる全世界的パンデミックによる総悲観論一色といった有様で、1万9000円も割り込んでしまい、3つの移動平均線の傾き具合や開き具合から見ても、予期していたところとは言え、相当な暴落となったが、ここからは底値を探って行く展開である。

そのためには、縦軸と横軸の2つの目安を考慮する必要がある。

先ず縦軸の安値の目安であるが、大きな節目としてこの時考えていたのは、いわゆるキリ番である1万8000円、1万7000円、1万6000円等の外に、アベノミクス相場による上昇幅のフィボナッチ比率による戻しとサポレジ転換線である。注目していたのは、以下の図にあるフィボナッチ比率38.2%戻しの18200円と同50%(半値)戻しの16300円、それに16100円あたりのサポレジ転換線である。特に、後者2つは近接しているので、この辺りまで下げるようだと、この1万6100円から1万6300円当たりの価格帯は、マーケット・メイカー達に相当意識されるゾーンであるのは間違いない。



次に、横軸としては、日柄による目安である。この日柄という時間概念は、長いものでは例えばクズネック・サイクルなどの各種のサイクルが指摘されいるが、ごく短期においては、これまで相当な数の投資本や相場に関する本を読んできたにもかかわらず、殆どと言って良い程言及されず、考慮もされていない(その唯一の例外は林輝太郎氏の60日周期説くらいか)概念であるが、私見では非常に重要な概念である。

例えば、空売りなどは6か月の期限があるので、大きな出来高のあった日の6か月後やその半分の日柄である3か月後などはトレンドの転換点などの重要な節目となりやすいことが挙げられる。

それはともかく、過去30年間の日経225と東証1部全銘柄を調べた私の検証結果から言えば、アノマリーとして大体の暴落は1か月くらいで底を付けると言うことが出来る。稼働日でいうと大体23日前後で底を打っている。リーマン・ショックの時でも25日で底を付けているので、何処を起点に取るのかにもよるが、今回の暴落は戻り高値である2月20日から始まったとすれば、3月20日から25日くらいの間辺りに底打ちをするという目安が想定できる訳である。

勿論、これらはあくまでも目安に過ぎないので、前にも述べたように、これ等の目安にマーケット・メイカーがどのようにテクニカルを意識して、相場を動かしていくのかを探って行く作業が重要であることは言うまでもない。

暴落はトレンド、トレンドはフレンド 7

2020-05-09 12:00:00 | トレンド・フォロー
ということで、実際には個別株もいくつか手がけたが、主に日経225ETFを手掛けたので、225のチャートを例にとって、このシナリオをどのように読み、修正していったのかを次に示そうと思うが、その前にテクニカルについて今一度、掘り下げておきたい。

前に、テクニカルという相場における法則は、原理的に物理法則とは性格を異にすると述べたが、その最も根源的な理由は、そこに人間の意志が存在しているという点にあると私は考えている。一元論対二元論と述べた所以であるが、これは基本的に相場をどのように捉えるかという相場観にも通底している。

それを単純化して述べれば、基本的に相場を動かしているのは、意志を持った複数のマーケットメイカーであるという事である。この点で、よく言われるような雑多な弱小投資家の群れ=大衆の動向という因子は全く考慮に入れる必要はないと考えている。これらマーケットメイカーは、また複数の売り手(ベア)と複数の買い手(ブル)に分かれる訳だが、この両者の力関係の均衡点がその時々の価格になるのは言うまでもないだろう。これをしごく単純なアナロジーで表現すれば、相場とはブルとベアとの陣取り合戦であると考えてよい。

そして、これらの売り手と買い手のマーケットメイカーは、ただ闇雲に売ったり買ったりしている筈もないので、何らかの根拠や基準に基づいて行動しているのは言うまでもないだろう。従って、その行動の特徴や痕跡がテクニカル的な傾向や規則性となって相場には現れることになる。例えば、サポートラインというのは買い手のマーケットメイカーが意識して買っている水準を表わしているし、レジスタンスラインというのは売り手のマーケットメイカーが意識して売っている水準を表わしている。さらに、両者の特徴を兼ね備えたサポレジ転換ラインというのは、売り手と買い手両方のマーケットメイカーが意識している攻防ラインであるから、今後も機能する可能性が非常に高いということにもなる訳である。そして、さらに高次の海千山千のマーケットメイカーは、この原理を熟知しているので、テクニカルにはわれわれ弱小投資家などよりはるかに精通していると考えなければならない。そのため、テクニカルを逆手に取ったいわゆる”ダマシ”なども意図的に仕掛けているというのは、相場に長年親しんでいる者には常識であることも付け加えておかなければならない。

結局のところ、この点を理解しないで、単に自然現象と同じように相場の動きを捉えれば、テクニカルが機能しないケースも多く見られるので、テクニカルというのはたまたま機能しているだけのようにも見える。そのため相場は単にランダムウォークしているだけだと考えるのも判らないでもないが、この点に関しては、通常、市場は効率的か否かといった論点から論じられる事が多いが、私に言わせるとどちらも一元論的な見方にとらわれているのであって、その両方に欠けているのは相場と言うのは、あくまでも人間の意識的・意図的な営為であるという、常識的な二元論的な見方である。

従って、”ダマシ”(というのは表面的はテクニカルは機能していないことになる訳だが、あえて意図的に機能させていないという意味では、逆説的に”機能している”と考えることもできる)も含めて、テクニカルが機能するか否かというのは、結局、そのテクニカルをマーケットメイカーが意識して行動しているか否かと言う事実に帰結する。当然のことながら、マーケットメイカーたちに意識されずスルーされたテクニカルは機能しないという事になる訳である、従って、この点を踏まえて考えれば、テクニカルを使いこなすためには、その時点で幾つかあるテクニカルの中から、マーケットメイカーが意識しているテクニカルを、チャート上の痕跡や兆候から推理してピックアップする必要があるという事である。言い換えると、テクニカルを使いこなす要諦とは、マーケットメイカーの背後からいわば肩越しに、彼らが注目・意識しているテクニカルを見なければならないということである。


さて、又もや前置きが長くなったが、下の図は今回のアベノミクス相場の上昇を示す日経225の月足チャートである。これを見るとアベノミクス相場というのは、2011年11月から比較的綺麗なエリオット波動を描いているのが判るだろう。



勿論、この調整波の部分は事後的に引いたラインであるが、図の黄色に塗ってある足が2019年度の月足である。この2019年の時点で考えていたのは、2018年10月につけた前の高値24448円が天井である可能性が高いという事である。その根拠の一つとして挙げられるのは、フィボナッチ比率による戻り高値の概算数値である。

1989年につけたバブルの高値38957.44円から2008年につけた底値6994.90円へのダウントレンドの戻しの目安としては、この下げ幅のフィボナッチ比率ー0.382と0.50、それに0.618が大きな節目として意識されることが考えられる。この2019年の時点では、この内の0.50による22976.17という概算値辺りで天井をつけるという想定が出来る訳である。まあ、フィボナッチなんぞを使わなくても、普通に半値戻しというのは相当に意識されやすい数字であるのは言うまでもないだろう。図中にはオレンジのラインで引いて置いたが、一旦このラインで下げてから再度上昇し(ダマシ?)、多少オーバーシュートした形になっている。このフィボナッチによる概算値とチャートから伺えるエリオット波動カウントを合わせて考えると、この24448円が天井である可能性はかなり高いと考えていた訳である。早ければ、アノマリーから考えて秋口に暴落するのではないかと考えて、私は虎視眈々と待ち構えていた次第である、

勿論、この時点では可能性は高いと言えども、未だ仮説にすぎなかった訳だが、それが明確になるのは、この後上げていった次の高値がこの24448円を越えずに下げた時点である。これによってエリオット波動理論でいう調整派(ダウントレンド)入りが確定したという事になる訳である。下のエリオット波動の基本形図でいえば、赤丸で囲った部分である。



従って、この赤丸の部分、戻り高値が切り下げたポイントは絶好の売りエントリーポイントになる訳である。今回は調整波bが強く、ダブルトップ気味になっているが、これも良くあるパターンである。

なおこれは余談だが、年が明けた翌2020年の一月の確定した上髭ピンバー(トレンドの転換点を示すプライスアクション)を見て、私は殆ど確信に近いものを持った。アベノミクス・バブルもこれで終ったな、と。従って、これまで長期投資として保有していたポートフォリオの殆どを処分することにした。中には長いもので30年に渡って保有していたものもあるが、わずかの優待株と高配当株(これらも同数の売りヘッジを掛けて置いたことは言うまでもない)を除いて、すべて売り払ってしまった。それはリーマンショックと同じ轍は二度と踏むまいと、堅く心に誓っていたからである。

ここで、ダウ理論について述べて置かなければならない。

ダウ理論は、すべてのテクニカルの基本となる重要な理論であるにもかかわらず、これもまた日本の株式投資では殆ど語られることがない理論であって、これもまたそれだけ見えざる検閲制度の強度を物語るものであるが、ここではそのトレンドの定義について述べるに止める。

普通、ダウ理論の6つ目の原則「トレンドは明確な転換シグナルが出るまで継続する」の説明としては、このようなトレンドの定義がなされている。

安値を切り上げ、高値を更新→上昇トレンドが継続。

高値を切り下げ、安値を更新→下降トレンドが継続。

つまり、高値安値の四点セットでトレンドが判断できるという実に明解な定義になっている訳である。



「なんだ、あたりまえじゃないか」と思う人がいるかも知れないが、それはこのように厳密に定義をして置いてから、それを基に分析をしていくというやり方に馴れていないからである。と言うよりも、こうした定義を基に厳格に論理を組み上げていくといった考え方は、そもそも我々日本人にはないもので、それが見えざる検閲制度の根幹にある思想であるが、それがまたダウ理論の奥深さがなかなか判らない理由でもある。まあ、これまで何遍も述べて来たように、我々の普段使っている「高値」「安値」という言葉の融通無碍さ、実にいい加減さを考えてみれば、この事は良く判るだろう。

ともあれ、ここでいう「明確な転換シグナル」とは、例えばアップトレンドでは「押し安値」を下へ、ダウントレンドでは「戻り高値」を上へ抜けることを意味する訳であるが、そう言われてこの意味がすぐに分かるだろうか。

これはどういうことかというと、アップトレンドの場合、高値を切り上げても安値を切り上げなかったら、その時点でトレンドは終了したという事である。逆に、ダウントレンドの場合、安値を切り下げても高値を切り下げなかったら、その時点でトレンドは終了したという事である。

かようにダウ理論と言うのは、応用を含めて考えると、実に明快且つ奥深い重要な基本的原理論であって、ぜひマスターしておく必要があるので、一度詳しく調べてみる事をお勧めする次第である。

ここで、先の日経225の月足チャートをもう一度見てもらいたいが、現在の時点ではかなり戻していて一部では楽観論がみられるが、ダウ理論では高値安値を切り下げていて、「明確な転換シグナル」は出ていないので、未だダウントレンド中である。つまり、直近では丸印の高値を超えて現在のダウントレンドが否定されるのかどうかに注目する必要があるという事である。



暴落はトレンド、トレンドはフレンド 6

2020-05-02 12:20:00 | トレンド・フォロー
先ず簡単に、私の暴落システムについて説明しておくと、手法としてはツナギ売買による日足トレードになる。

日足トレードというのは、場が引けてから、日足が確定したチャートを見て判断を行い、買うにせよ売るにせよ、翌朝の寄り付き成り行きで予約注文を入れるというやり方を取っている。この方法だと場中には一切株価を見なくて済むし、場が引けてから翌朝の場が始まるまでの間の好きな時間に判断を行えば良いので、非常に楽ちんである。掛かる時間も早ければ数秒、長くても数分で終るので、ものぐさにはピッタリという訳である。というよりも、逆に長考すると、考えに考えを重ねて悪手を打つ場合が多いので、なるべく時間を掛けないで、最初に頭に浮かんだ判断に素直に従うよう心がけていると言った方が正確かも知れない。



そして、ツナギ売買とは、両建ての技法で、玉をつないでいくことからつけられた名前のようだが、次のようなポジション・ワーク技法である。

まず、表記だが普通は両建てのポジションを

(ショート)3-2(ロング)

というように表記するのが慣例になっている。
そして、例えば、これから上がると思い

0-1

というポジションを持ったとする。そして、これは得てしてよくある事だが、案に相違して下がってしまったとする。その場合、損切りはしないで、反対玉の売りを入れて、

1-1

とする。そして、その後、再び上がっていくようであれば、ショートを切って、ロングを追加して

0-2

でその上げを取っていく訳である。逆に、さらに下げていくようであれば、ロングを切ってショートを追加して

2-0

で下げを取っていく、といった技法である。実際は、入れる玉も多く、もっと複雑なポジション・ワークになることが多いが、基本的にはこの基本形のバリエーションになる訳である。従って、その前提としては、上げるか下げるかの見極めー相場認識の技術精度が要求されるのは言うまでもない。


そして、次に私の暴落システムの基本型を示す。当選の事だが、まず売りから入る(2-0)訳だが、下げ止まった底の辺りで、ショートを利確してロングを入れ、ポジションをスクウェアにし(1-1)、リバウンドし出したら、ショートを切ってロングを追加し(0-2)、リバウンドの上げを取っていくというものである。普通、暴落時には幾ばくかのリバウンドは必ずあるもので、その下げ上げの両方を取ってやろうという、なかなかと欲張りな、と言うか、えげつないシステムである。


以下、このシステムでもって、今回の暴落に置いて、どのような相場認識の下に、どのように考えて、売り買いを行ったのかを説明する。

先ずは、大局観から説明したいと思うが、これは2015年にまで遡る。次に引くのは、一旦はひっこめてしまったが、2015年の夏ごろに書いた文章の一部である。


<さてさて、というようなことで簡単ではあるが短期ベア中期ブルとの私的相場観を述べてきたので、ついでにここで長期ベア観も述べておくのも良いだろう。まず、前にも引いたが半藤一利氏の興味深い説を再度引く。

「じつは、私はインチキ史観を持っている。インチキ史観というか、遊びと思っていただいてもよい。それをここで語っておく。

日本が開国を迫られ、朝廷が開国と決めたのが慶応元年。その前は幕府が朝廷の勅許を得ず、勝手に開国したということで尊王攘夷運動が起きていたが、結局、攘夷は不可能ということで、朝廷も開国に踏み切らざるをえなかった。つまり、国策として開国が決まったのが慶応元年で、西暦にすると1865年である。

 それから明治の一代目が近代日本をつくるために辛酸をなめながら努力し、日清戦争、日露戦争と勝ち進んだ。とにかく世界の植民地にならず、世界列強の仲間入りをしたと喜んだのが日露戦争に勝ったときである。それが1905年のことで、国策としての開国が決まった慶応元年からちょうど四十年後にあたる。 それから軍部が力を持つようになり、国民もうぬぼれのぼせ、われこそアジア唯一の強国であると世界を敵に回すようになり、太平洋戦争に突入して散々な敗戦を喫した。それが1945年で、日露戦争から数えると四十年が経過している。つまり国をつくるにも、国を滅ぼすにも、四十年なんである。

 その後、占領期間の六年間を除くと、戦後日本は1951年からはじまる。そこから戦後の復興があり、建設があり、経済大国になってバブルのはじけたのが1991年。またしても四十年後の物語になっている。その間、戦後日本は最初から経済大国を目指したわけではなかった。アメリカの政策もあり、日本人は文化国家の創造を目ざしていた。働く人間たちに経済大国を目ざす意識はなかったが、朝鮮戦争などもあって、いつしか経済大国を目ざす流れになっていた。

 私の勝手な史観でいくと、”第一の滅び”は日露戦争にはじまり、太平洋戦争の敗戦で終わった。そこから日本は”第二の国づくり”をはじめ、バブルを経て、”第二の滅び”へと入った。つまり、”終わりのはじまり”がはじまっている。

 私の計算で行けば、2030年が”第二の滅び”の最終年になる。2030年と言えば高齢者人口が全人口の三分の一以上になり、労働人口も四分の一になると予想されている。日本の活力が危機にさらされ、まさに日本の危機である。 ”終わりのはじまり”はまだはじまったばかりである。いまのうちに2030年に最終年を迎えるこの”第二の滅び”を何とかしておかないと、日本は本当に滅びるかもしれない。」(『撤退戦の研究』光文社)

この「インチキ史観」に基けば2030年ごろに日本の転換点がやってくることになる。つまり、時期的にいって今回のブル相場が終わった後のベア相場の最悪期あたりになりそうである。山高ければ、谷深し。恐らく日経平均は最安値を更新するのではないか。その時にはそれを象徴するような未曽有の大事件が勃発するのではないかと考えているが、今のところそれが何であるのかは判らない。

アベノミクスのツケが回って財政破たんするのか、社会主義中国北朝鮮の崩壊時の戦争に日本も巻き込まれて多大の被害を受ける(核ミサイルの存在は脅威である)のか、東南海大地震が起きて日本沈没となるのか、はたまたGODZILLAあるいはシトが日本を襲うのか(笑)、あるいはそれらのうちいくつかが同時に起るということもあるのかもしれない。

そして、そこから日本は”第三の国づくり”を始める事になる訳である。なに、苦境に強いのは日本人の強みであって、日本はまたしても復興するのは間違いないだろうが、好調時にうぬぼれるのもまた日本人の弱みでもあって、2070年ごろにはまたもや「アジアの盟主」だとか「ジャパン・アズ・ナンバー・ワン」とかうぬぼれて必ずやへまをしでかすのであろう。

この「四十年」という周期は何に由来するのか、勿論分析の限りではないが、恐らく時代を担う現役世代が交代する周期がこれくらいなのであろうと思われる。つまり、「経験に学び」それが通用するのは高々「四十年」でしかないとも言えるのであって、やはり「歴史に学ぶ」必要があるということである。とまあ、このように書いてきたものの、何分「インチキ史観」であるのでこれを信用するには当たらない。(「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」2015/08/30)>


ということで、GODZILLAが日本を襲うという私の予言は、見事シン・ゴジラとなって的中した!訳であるが、実際に顕れたのはシン・ゴジラならぬシン・コロナであったというのは、シャレにもならない話である。新コロナウィルスについては様々な仮説や憶測、悲観論や楽観論が錯綜しているが、専門家にも本当のところはまだ良く判らないというのが真実であろう。それにしても、この間の日本政府の対応を見ていると、日本人というのはつくづくリスク・マネージメントが不得意だなあと思わざるを得ない。恐らく非常事態宣言による経済への波及効果なぞは、試算もしないで実行に移したのではないか。例えば、これまで「緩やかに回復」と白々しくも言いつづけて消費税を増税して置いて、四月の月例経済報告で、10年11ヶ月ぶりに新型コロナという絶好の口実を得て、今更「悪化」としたことが象徴的で、私の目には、「インチキ史観」のシナリオに沿って日本は、着々とその歩みを進めているようにしか見えない。

なお、これは余談だが、誰も指摘しないので、「自粛要請」という言葉のおぞましさについて一言述べておきたい。これは山本七平のいい方で言えば「空体語」、ジョージ・オーウェルの言い方で言えば「ニュー・スピーク」という事になろうが、そもそも「自粛」は促すものであって、「要請」するものではない。「要請」するなら「休業」のはずであるが、なぜこのような胡乱な論理のすり替えを行うのかと言うと、そこには「休業補償」をしたくないという政府=財務省の下心が透けて見える、そう考えるのは私だけではないだろう。実際、「休業補償」も「協力金」なる「空体語」へとすり替えられて、一律50万円という算定基準や給付基準も良く判らない支給でもってお茶を濁させられているのは、ご存じの通りである。また、現在の日本の法体系においては、強制的な禁止は出来ないので、マスコミを使って実質休業に追い込むよう「空気」の醸成があからさまに行われているが、そのためにパチンコ店が槍玉に挙げられているのは、戦時中の「隣組」による相互監視体制やそれによる「非国民」の糾弾・摘発を連想させられるが、そう思うのは私だけであろうか。これもまた「非常時」や「非常事態」に特有の、実に日本的なおぞましい「空気」によるものであろう。

まあ、「空気」は読むものだと考えている人には耳に念仏であろうが、「空気」は本来水を差すものである。



それはともかく、従って、このシナリオによれば、日本はバブル崩壊によって四十年周期のダウントレンドへと突入したのであって、アベノミクスによる上昇相場も単なる綾戻しでしかないので、バブル期の高値を越えることは無いという見立てになる訳である。

そして去年の時点で考えていたのは、これは同じように考えていた人も多いのではと思うが、特需が剥がれるオリンピック開始前後が、アベノミクス相場の終わりになるのではないか、ということである。ただ、これだけなら単なるシナリオでしかないのであって、このシナリオを実際の相場展開の中において、修正を加えながら読み込んでいく相場認識の技術が伴わなければ絵に描いた餅であるのは言うまでもないだろう。つまり、これは実に当たり前の話であるが、実際に餅を得ることが出来るのかどうか、ここが相場認識技術の腕の見せ所であるということである。