ものぐさ屁理屈研究室

誰も私に問わなければ、
私はそれを知っている。
誰か問う者に説明しようとすれば、
私はそれを知ってはいない。

相場雑感2

2022-05-28 13:00:00 | 投資雑感
山は登ったら降りるものよー宇多田ヒカル


日経平均長期チャート(1949~)


残念なことに、株式市場は今のところ私のベア・シナリオ通りの展開になっているようだ。

以下は、2021年以降の日経平均の日足と週足のチャートであるが、テクニカル的には実に判り易い綺麗な展開になっている。3万円を少し超えた辺りでダブル・トップを付け、ご覧のような綺麗なレジスタンス・ライン(青線)に沿って下げている。

日足


週足



これまでも述べてきたが、私のシナリオでは、現在は日本の40年周期ダウン・トレンドの最終段階に入りつつあって、周期性から言って2030年辺りにボトムを付けることになる。つまり、その意味するところは、これからボトムを付けに行くということで、日経平均は2008年10月28日につけた、バブル崩壊後の最安値6,994円90銭を更新することになるのではないか、という見立てである。日柄でいうと後8年で、まだカタストロフの全貌は見えてきていないが、色々な兆候がすでに表れて来ている。

第三次世界大戦の蓋然性については再三述べているが、ここでは現在進行中のインフレについて、考えてみたいと思う。

この点については色々なことが言われているが、例によってそのほとんどは経験主義な思考でしかないように思われる。つまり単に過去のインフレの場合がこうだったからこうなるといった公式主義の域を出ていない言説ばかりだと言って良いだろう。

勿論、こうした経験主義な公式というものが存在するのには、それなりの理由もあろうが、前提自体が変わっていく、或いはもうすでに変わってしまっている未体験の大変革期においては、経験主義的公式というものは、役に立たないどころか、むしろ進んで火に飛び込むことになり兼ねない。例えば、株式投資では「戦争は買い」という有名なテーゼがあるが、今回のロシア・ウクライナ紛争の場合がどうなったのかは、言うまでもないだろう。

この意味で、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という格言が、今ほど必要とされている時もないのではないかと思う。では「経験」と「歴史」とは一体どう違うのか。ここで強調しておかなければならいないのは、「歴史」には人間の一生という短い期間に限定されないもっと長い時間軸の洞察が含まれているという事である。人間の一生という短い期間に限定された「経験」に関する洞察をいくら集めても、それは「歴史」に関する洞察には成り得ないということである。経験至上主義には、この長い時間軸に関する洞察が欠けていると言い換えてもよい。


さて、インフレであるが、世にはリフレ派という公式主義者が結構な数いるようで、このインフレを歓迎している。中には、これからバブルがやってくるという奇特な御仁もいるが、私の見立ては全く逆で、これからやってくるのはインフレ+不況、つまりスタグフレーションで、これから世界は大不況に突入していくことになる。それは、繰り返し述べているように今後の世界は分断され、ブロック経済化されていくからで、すなわちグローバル・サプライチェーンが分断され、いくつかの経済ブロックに再編されていくからである。結局のところ、世界経済は再編のための大混乱期を経て、最終的に縮小均衡を余儀なくされていくことになる訳である。前に”自由主義の終焉”と言った所以であるが、ここで押さえておかなければならない重要な視点は、これまでとは違って、このような世界では、資源を持つ国が圧倒的に優位に立つという事である。


ロシアに対する経済制裁は、ロシアを国際経済から徹底的に排除し、デフォルトに追い込もうとする試みだったと言えよう(実際、一時的にルーブルが暴落したために、今にもロシアがデフォルトするのではといったニュースも流れた)が、デフォルトどころか、むしろロシア経済は強くなり、ルーブルも経済制裁の以前の状態に戻ったどころか、対ユーロで史上最高値を更新してしまった。

それは、対露経済制裁がむしろロシア経済を返って強くしているからある。

というのは、(欧州委員会によれば)EUはガスの40%、石油の27%、石炭の46%をロシアから調達しているからで、資源を持つアメリカやカナダ・ノルウェイはともかく、資源を持たない他のEU諸国にとって、経済的に自滅の道をわざわざ選んでいるとしか私には思えない。何故なら、アメリカやヨーロッパが表向きはロシアの資源を締め出すと宣言したことで、原油価格が高騰し、その一方、裏ではヨーロッパは実際にはロシアの原油や天然ガスを輸入せざるを得ないからだ。そのため元々資源不足で危機的状況にあったヨーロッパはかなり厳しい状況にならざるを得ないだろう。しかもそれは原油や天然ガスだけではない。小麦など農作物にも飛び火してしまっている。つまり、EU諸国はわざわざ敵国ロシアの輸出品の価格をつり上げておいてから、輸入するという何とも馬鹿げたことをやってのけているのである。

従って、今後EUは資源をロシア以外から輸入する手立てを求めざるを得ないし、また実際にも、例えばスペインなどは割高ではあるが、カタールからヨーロッパへLNGを輸入するハブ基地を目指してすでに動き出している。その一方で、ロシアはロシアで、中国やインド、アフリカや中東諸国などへ資源を売る動きを見せてもいる。現時点で、この紛争がどのような決着を見せるのかはわからないが、こういった流れは加速することはあっても、元に戻ることはないであろう。つまり、ロシアへの経済制裁を機に、今後は資源の世界的サプライ・チェーンの再編が行われ、経済圏は多極化してゆくという事である。このような中にあって、資源を持たないEU諸国は相当な苦境に追い込まれていくことは火を見るより明らかである。現時点でさえ、インフレによってEU諸国の生活事情は相当にむごいことになっている。フランスでは、冬の暖房費が賄えない人のために現金給付をせざるを得ない始末で、ドイツでも燃料節約のために政府が毎日風呂に入らないようにという勧告を出したり、ガソリン価格の高騰のため、自動車通勤を止めて馬で通勤する人が現れたというニュースが流れた程である。

そして当然のごとく西欧に追随する、同じく資源を持たない日本は.言うまでもないであろう。日本ではまだそれほどインフレが進んでいないので危機感は希薄だが、EU諸国の惨状は将来の日本の姿である。それは近い将来、このインフレで、単に物価が上がるというだけではなく、生活必需品が手に入らなくなるということを意味している。電気やガスの供給にも支障が出てくるであろう。

現状、実質的に国民負担率が50%を超えているのにもかかわらず増税ラッシュが続いているが、→世界の一人当たりの購買力平価GDP(USドル)ランキングでは例年順当に順位を下げ続けて、現在36位で欧米諸国や韓国にさえ後塵を拝している始末。ここ数年の超過死亡数の異常さも相まって人口減少は歯止めがかかるどころかむしろ加速しており、人口動態的にみても、日本の将来はとても明るいなどとは口が裂けても言える状態ではないだろう。そこへ今回のインフレである。ほとんど日本経済は”詰んでいる”と言っても過言ではないと私は考えるのだが、どう思われるだろうか。

とは言っても、MMTの議論で指摘されているように、まだ→日本は世界最大の海外純資産を持っているという意見もあるかもしれない。ここで詳しくは述べないが、これに対しては、世界経済の多極化・ブロック化にともなって、これが不良債権化する可能性が十二分にあることを指摘しておこう。まあ、このことはロシアへのリース航空機がどうなったかを見てみれば容易に想像がつくと思うが、結局、”自由主義”を前提とした議論はすべてこれからは通用しなくなると言い切っても間違いではないという事である。

このように経済に限ってみても、8年後の2030年の日本の惨憺たる状況は、容易に想像がつくだろう。

これは、今日本は、内政だけでなく、外交政策の大転換を迫られていると言い換えてもよい。今後没落していく西洋と運命を共にしていくのか、それとも西洋追随をやめて、独自に別の生き延びる道を模索していくのか。ところが、岸田政権のロシアの経済制裁にいいねを押している日本国民を見ていると、どうも前者の道を変える気は毛頭ないように私には見える。まあ、民族にはその民族の生き方があるのでどうのこうの言っても始まらないが、この嬉々として西洋を追いかけて没落していく日本の姿は、後世の歴史家の目にはどのように映るのであろうか。


さてマクロの話が長くなったが、一気に視点をミクロに移してみよう。

このようなマクロの視点に立って考えると、インフレに対するアメリカFRBの考えは、私には楽観的に過ぎるとしか思えない。

Fed(連邦準備制度)が5月のFOMC会合で、通常の倍の0.5%利上げを行うとともに、2018年に世界同時株安を引き起こした時の2倍の規模の量的引き締めを発表したのを受けて株価は下がっているが、これまで低金利政策を続けてきた各国の中央銀行は大きなジレンマに立たされている。インフレを抑えるには利上げと金融引き締めを行わなければならないが、利上げと金融引き締めは、このように株式市場の下落を引き起こすからである。問題は、これまで続けてきたゼロ金利金利政策で、インフレ率を抑えるにはまるまるその分を利上げ幅で相殺しなければ、実質金利がプラスにはならないという点である。従って利上げ幅を大きく取らなければインフレが進行してしまい不況に突入してしまうが、かと言って大幅な利上げは株価の暴落を引き起こすことになる。

現在、FRBは中立の実質金利を0.5%と想定していて、金利を2.5%まで上げてそれで中立になると主張している。つまり、現在のアメリカのインフレ率は8%を越えているのにも関わらず、FRBはこれは一時的なもので、長期的にはインフレ率は2%まで低下すると見ていることになる。

5月26日に発表された最新のサーベイによるスタンスでは、今のインフレは一時的で、今後の数ヶ月で頭打ちと予想、5年先にインフレ期待は3%と、長期的な見通しの数字を3%に上げているが、基本的なスタンスには変更はないようだ。

What Do Consumers Think Will Happen to Inflation?

私には、このインフレは一時的なものとは思えないし、ましてやインフレ率が2%や3%で落ち着くとは到底思えない。従って、FRBはソフト・ランディング政策に失敗し、ハード・ランディングがこの先に待ち構えているのはほぼ確実と見ている。それも長きに渡った低金利政策からのトレンド転換であるから、相当なハード・ランディングになるのではないかと思われる。恐らくFRBは後追いで、さらに金利を上げざるを得ない状態に追い込まれることになるであろうが、リセッションは避けられないだろう。まあ、どちらにしても、暴落は避けられないということである。

そして、市場はまだハード・ランディングを織り込んでいないので、暴落はこれからが本番ということになる。それはドルの暴落がまだ本格的に始まっていないことからも伺えるが、興味深いのは、真偽のほどは解らないが、日本人投資家は相場の最終局面に現れるというテーゼが、外国人投資家の間では常識になっているという話を聞いたことがあることである。思えば、ここ何年かのアメリカ株ブームに乗った日本人投資家達は、現在アメリカ株の下落に対しては円安で多少なりとも助かっているが、これから本格化する株の暴落に加えてドルの暴落のダブル・パンチで退場を余儀なくされるのではないかと思われる。

2020年の暴落時には、日米ともに証券会社の口座数が爆発的に増えたというニュースがあったが、現在株式市場は下がっていると言っても、日米ともに2020年の暴落時から見れば相当に高い位置にある。ということはこれらの新規参加者の殆どは、今回の下落で多少は減らしたとは言え、まだまだ十二分な含み益を持っているという事になる。恐らくこれらのノービス組が退場させられる水準にまで暴落しないと、今回のダウン・トレンドが終了してボトムをつけることはないのではないかと私は考えているが、ここまで悲観的な予想をしている市場参加者はあまりいないように見受けられる。けれども、あえて名前は上げないが著名な外国の投資家の中には同様の見方をしている人物が何人もいるようだ。勿論、自分で考えることが肝心だが、市場においては常に少数者の方に軍配が上がるというのも厳然たる事実である。



さて、最後に、これからやってくるスタグフレーション下の投資について少し私見を述べてみよう。

基本的にダウン・トレンドであるから買いだけで利益を上げるのは難しいだろう。分散投資でポートフォリオを多様化するパッシブ投資も、買い持ちになるので、勿論利益を上げられないだろう。かといって現金で持っていてもインフレで価値が棄損していくというダブル・バインドになるので、パッシブ投資としては、これからは金本位制に回帰していくので、金を買って寝かせておくというのが一番有効且つ簡単な資産防衛方法になろうかと思う。

アクティブ投資としては、”危うきに遊ぶ”ことの出来る一握りの投資家のみが生き残れる、相当に難度の高い難しい相場になるのではないかと考えている。恐らく、アベノミクス相場で輩出した”億り人”のほとんどが、また元の木阿弥に戻っていくことになろう。自分もその一人にならないようにしたいものであるが、さてどうなることやら。基本的には、インフレで下落する資産(株式や債券)を売り、上昇する資産(コモディティ)を買えばいいという事になるが、これまでもそうであったように、通常インフレが一回の景気後退で収まることはほとんどないので、複数回のインフレ対策が功を奏して、やっとのことでインフレが収まることになるということを考えれば、暴落が一回で済むはずもないので、この辺りの乱高下の見極めが出来るかどうかが、生死を分ける分水嶺になろう。


と言ったようなことで、以上のような極端に悲観的なシナリオを考えている人は稀だろうが、プランB或いはプランCとして心のうちに留めて置いてもらえれば、と思う次第である。



レイダリオ「Principles For Dealing With The Changing World Order: Why Nations Succeed Or Fail 」その2

2022-05-13 12:00:00 | 着眼大局
世界情勢を眺めているとロシア・ウクライナ紛争は、ゆっくりとであるが、着実にロシアとNATOの全面戦争へとシフトしつつあるようだ。そして、その先に待ち構えているのは、レイダリオや私の予測する如く、第三次世界大戦ということになる訳であるが、果たして今回、それが回避される否かは、残念ながら神のみぞ知ると言う他はないだろう。明らかに言えることは、今回のロシア・ウクライナ紛争は、世界秩序をめぐる新たな「帝国主義の時代」の序章に過ぎないということである。

<大きな見取り図としては、今後の世界は、アメリカと言う世界の政治・経済のへゲモンがいなくなる中で、国家間の激烈な経済競争や軍事戦争が始まることになるだろう。いわゆる「帝国の時代」から「帝国主義の時代」へと移行していくことになろう。アメリカの世界の警察官放棄は軍事覇権の多極化へ、ドル覇権放棄は国際通貨の多極化へ向かう。その論理的に帰結するところは、第三次世界大戦とIMFのSDR(特別引出し権)である通貨バスケット制による金本位制復活というのが当然に考えられるシナリオであろう。>

以前にこのような文章を書いたが、従って私の目には、現在のロシア・ウクライナ紛争は、将来、”自由主義の終焉”を示すエポック・メイキングな出来事として、語り継がれることになるのではないかと思われる。つまり、今後の世界は否応なしに分断され、多極化・ブロック化していくという事である。


今にして思えば、新自由主義者=グローバリスト達が、まことしやかに「国家というものは、これからは消えて無くなっていく」と述べていたのは、実に象徴的な光景であったと思う。これに反し、今後の世界の様相は、反新自由主義=反グローバリズムへと急速に傾斜して行き、国家主義的な色彩を強めて行くとことになろう。私に言わせると、新自由主義者=グローバリスト達は、「資本」をあまりにも過大評価していたということになる訳であるが、彼らの目に見過ごされていたのは、「資本=ネーション=ステート」という三位一体システムの強固さであり、最近あちこちで引用されるようになったマーク・トウェインの言葉(とされている)で言えば「History doesn’t repeat itself, it often rhymes. 歴史は繰り返さないが、韻を踏む」という歴史の循環的な法則性である。


(『帝国の構造: 中心・周辺・亜周辺』)

逆に言うと世界史上の出来事は、この「資本=ネーション=ステート」という三位一体システムという見地から考慮する必要があるので、個々に「資本」や「ネーション」や「ステート」だけを見ていては、その本質が見えてこないという事でもあって、現在のロシア・ウクライナ紛争も同様であることは言うまでもないだろう。まあ、それがレイダリオの本を私が高く評価する理由でもあるのだけれど。


日本のマスコミの報道を見ていると、そもそもなぜこの紛争が起こったのか、私には全くチンプンカンプンなのだが、それに加えて、プーチン大統領に対する政治的野望に取りつかれた狂気の独裁者といったイメージ作りや、ロシアは孤立しているとか、プーチンは焦っているとか、例によって事実を報道するジャーナリズムを放棄して、ほとんどプロパガンダ装置と化している始末で、実際の戦況はどちらが優勢なのかもさっぱりわからない。その気になればネットで海外の情報は、直接アクセスして幾らでも取ることが出来る現在、例えば自国内の反戦デモを報道しているロシアのメディアと日本のメディアとでは、一体全体どちらが客観的で冷静な報道をしているのであろうかという疑問を持つのは私だけであろうか。


なお、ブチャの虐殺の続報であるが、フランス国家憲兵隊の調査内容が、スペインの記事になるというのも興味深いので挙げておこう。翻訳は敢えて示さないが、日進月歩のAI翻訳ツールの中にあって、今現在の時点では→DeepLをお勧めするが、コピペでものの十数秒で日本語化されるので、興味のある方は一読あれ。

Fue el ejército ucraniano quien cometió la matanza de Bucha(ブチャの虐殺を行ったのはウクライナ軍。)


さて、ロシア・ウクライナ紛争がなぜ起こったかのかに話を戻すと、解説に当たって”キューバ危機”という格好の事例が出てこないのが、私にはとても不思議に感じられる。つまり、この紛争は言わば”第二のキューバ危機”であって、言い換えればロシア・ウクライナ紛争というのは、キューバ危機と「韻を踏」んでいるのである。

まず押さえておかなければならないのは、ウクライナとロシアの首都モスクワの地理的な距離の近さ(ウクライナとロシアの国境からモスクワまでは約400キロメートルで、我が国でいえば東京・米原間くらいの距離)である。日本のマスコミで言われている緩衝地帯が無くなる云々の説明では、この最重要論点が抜け落ちているために、判ったようでいてよく判らない説明になっているが、要はウクライナにNATOのミサイルが配備されると、モスクワがその射程距離内に入ってしまうという事である。

従って、私に言わせれば、ロシア侵攻のトリガーとなったのは、そもそもゼレンスキー大統領が、NATOに加入して核ミサイルを配備すると言い出したからに他ならない。このゼレンスキー大統領の行動は、プーチン大統領の目には、ロシアの安全保障上決して譲ることのできない一線を越えたものと映ったであろうことは想像に難くない。ちょうど、アメリカにとって、キューバに核ミサイルが配備されるのと同じように。さらに、この一触即発の情勢下にあって、バイデン大統領が一般教書演説で、わざわざウクライナには派兵しないとあえて明言したことも、副次的な要因として挙げられよう。この声明とその後のアメリカのウクライナへの軍事援助を考えると、バイデン政権のやっていることは、いわゆるマッチポンプに他ならないと私は考えるのだが、どう思われるであろうか。

キューバ危機の際には、アメリカとソ連の間で話し合いが行われ、あわやと言うところで核戦争の危機は去ったが、現在、アメリカとソ連の間での話し合いは全く行われていないように見える。このような時にこそ、平和憲法を掲げる日本は、外交上、アメリカ・欧米諸国とロシア間での話し合いの調停役に回るべきだと私なぞは考えるのだが、それどころかむしろ油に火を注ごうとしている岸田政権の行動は狂気の沙汰としか思えない。

ロシアへの経済制裁には、自民党内でも表立って反対の声は上がっていないようでもあるし、表向きの内閣支持率も現在は50%を超えているといった塩梅で、そもそも、政府も国民も、この経済制裁によって、すでに日本はロシアとの戦争状態にあるという認識を持っているのであろうか?と言う疑義を私は禁じ得ないのであるが、判っていたこととはいえ、「空気」醸成による時の勢いとは恐ろしいものである。やれやれ。



以上は「ステーツ」間の外交の話であるが、一筋縄ではいかない複雑なウクライナの「ネーション」の問題は、一般に覇権国家の「周辺国」の「ネーション」の問題がそうであるようにややこしく拗れていて、ロシア=悪、ウクライナ=善といった単純な話ではないのは明らかである。ここでは日付は少し古いが、私の興味を引いたものを幾つか挙げておこう。この問題に限らないが、注意すべきは、なんでも判っているような言い方をする専門家の意見であることは言うまでもない。


オリバー・ストーンの『ウクライナ・オン・ファイヤー ―Ukraine on fire―』【日本語字幕版】 - full movie -


故勝谷誠彦のウクライナレポート『血気酒会』緊急開催


*軍事ジャーナリスト田岡 俊次のコラム

ウクライナ紛争の奇々怪々 


*キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹小手川 大助のコラム

ウクライナ問題について

ウクライナ問題についてその2

ウクライナ問題についてその3

ウクライナ問題についてその4

ウクライナ問題の波紋-経済制裁で一番損をしている日本-


ということで、次回は、経済制裁を絡めて「資本」の問題について、私見を述べることにする。