ものぐさ屁理屈研究室

誰も私に問わなければ、
私はそれを知っている。
誰か問う者に説明しようとすれば、
私はそれを知ってはいない。

暴落はトレンド、トレンドはフレンド 7

2020-05-09 12:00:00 | トレンド・フォロー
ということで、実際には個別株もいくつか手がけたが、主に日経225ETFを手掛けたので、225のチャートを例にとって、このシナリオをどのように読み、修正していったのかを次に示そうと思うが、その前にテクニカルについて今一度、掘り下げておきたい。

前に、テクニカルという相場における法則は、原理的に物理法則とは性格を異にすると述べたが、その最も根源的な理由は、そこに人間の意志が存在しているという点にあると私は考えている。一元論対二元論と述べた所以であるが、これは基本的に相場をどのように捉えるかという相場観にも通底している。

それを単純化して述べれば、基本的に相場を動かしているのは、意志を持った複数のマーケットメイカーであるという事である。この点で、よく言われるような雑多な弱小投資家の群れ=大衆の動向という因子は全く考慮に入れる必要はないと考えている。これらマーケットメイカーは、また複数の売り手(ベア)と複数の買い手(ブル)に分かれる訳だが、この両者の力関係の均衡点がその時々の価格になるのは言うまでもないだろう。これをしごく単純なアナロジーで表現すれば、相場とはブルとベアとの陣取り合戦であると考えてよい。

そして、これらの売り手と買い手のマーケットメイカーは、ただ闇雲に売ったり買ったりしている筈もないので、何らかの根拠や基準に基づいて行動しているのは言うまでもないだろう。従って、その行動の特徴や痕跡がテクニカル的な傾向や規則性となって相場には現れることになる。例えば、サポートラインというのは買い手のマーケットメイカーが意識して買っている水準を表わしているし、レジスタンスラインというのは売り手のマーケットメイカーが意識して売っている水準を表わしている。さらに、両者の特徴を兼ね備えたサポレジ転換ラインというのは、売り手と買い手両方のマーケットメイカーが意識している攻防ラインであるから、今後も機能する可能性が非常に高いということにもなる訳である。そして、さらに高次の海千山千のマーケットメイカーは、この原理を熟知しているので、テクニカルにはわれわれ弱小投資家などよりはるかに精通していると考えなければならない。そのため、テクニカルを逆手に取ったいわゆる”ダマシ”なども意図的に仕掛けているというのは、相場に長年親しんでいる者には常識であることも付け加えておかなければならない。

結局のところ、この点を理解しないで、単に自然現象と同じように相場の動きを捉えれば、テクニカルが機能しないケースも多く見られるので、テクニカルというのはたまたま機能しているだけのようにも見える。そのため相場は単にランダムウォークしているだけだと考えるのも判らないでもないが、この点に関しては、通常、市場は効率的か否かといった論点から論じられる事が多いが、私に言わせるとどちらも一元論的な見方にとらわれているのであって、その両方に欠けているのは相場と言うのは、あくまでも人間の意識的・意図的な営為であるという、常識的な二元論的な見方である。

従って、”ダマシ”(というのは表面的はテクニカルは機能していないことになる訳だが、あえて意図的に機能させていないという意味では、逆説的に”機能している”と考えることもできる)も含めて、テクニカルが機能するか否かというのは、結局、そのテクニカルをマーケットメイカーが意識して行動しているか否かと言う事実に帰結する。当然のことながら、マーケットメイカーたちに意識されずスルーされたテクニカルは機能しないという事になる訳である、従って、この点を踏まえて考えれば、テクニカルを使いこなすためには、その時点で幾つかあるテクニカルの中から、マーケットメイカーが意識しているテクニカルを、チャート上の痕跡や兆候から推理してピックアップする必要があるという事である。言い換えると、テクニカルを使いこなす要諦とは、マーケットメイカーの背後からいわば肩越しに、彼らが注目・意識しているテクニカルを見なければならないということである。


さて、又もや前置きが長くなったが、下の図は今回のアベノミクス相場の上昇を示す日経225の月足チャートである。これを見るとアベノミクス相場というのは、2011年11月から比較的綺麗なエリオット波動を描いているのが判るだろう。



勿論、この調整波の部分は事後的に引いたラインであるが、図の黄色に塗ってある足が2019年度の月足である。この2019年の時点で考えていたのは、2018年10月につけた前の高値24448円が天井である可能性が高いという事である。その根拠の一つとして挙げられるのは、フィボナッチ比率による戻り高値の概算数値である。

1989年につけたバブルの高値38957.44円から2008年につけた底値6994.90円へのダウントレンドの戻しの目安としては、この下げ幅のフィボナッチ比率ー0.382と0.50、それに0.618が大きな節目として意識されることが考えられる。この2019年の時点では、この内の0.50による22976.17という概算値辺りで天井をつけるという想定が出来る訳である。まあ、フィボナッチなんぞを使わなくても、普通に半値戻しというのは相当に意識されやすい数字であるのは言うまでもないだろう。図中にはオレンジのラインで引いて置いたが、一旦このラインで下げてから再度上昇し(ダマシ?)、多少オーバーシュートした形になっている。このフィボナッチによる概算値とチャートから伺えるエリオット波動カウントを合わせて考えると、この24448円が天井である可能性はかなり高いと考えていた訳である。早ければ、アノマリーから考えて秋口に暴落するのではないかと考えて、私は虎視眈々と待ち構えていた次第である、

勿論、この時点では可能性は高いと言えども、未だ仮説にすぎなかった訳だが、それが明確になるのは、この後上げていった次の高値がこの24448円を越えずに下げた時点である。これによってエリオット波動理論でいう調整派(ダウントレンド)入りが確定したという事になる訳である。下のエリオット波動の基本形図でいえば、赤丸で囲った部分である。



従って、この赤丸の部分、戻り高値が切り下げたポイントは絶好の売りエントリーポイントになる訳である。今回は調整波bが強く、ダブルトップ気味になっているが、これも良くあるパターンである。

なおこれは余談だが、年が明けた翌2020年の一月の確定した上髭ピンバー(トレンドの転換点を示すプライスアクション)を見て、私は殆ど確信に近いものを持った。アベノミクス・バブルもこれで終ったな、と。従って、これまで長期投資として保有していたポートフォリオの殆どを処分することにした。中には長いもので30年に渡って保有していたものもあるが、わずかの優待株と高配当株(これらも同数の売りヘッジを掛けて置いたことは言うまでもない)を除いて、すべて売り払ってしまった。それはリーマンショックと同じ轍は二度と踏むまいと、堅く心に誓っていたからである。

ここで、ダウ理論について述べて置かなければならない。

ダウ理論は、すべてのテクニカルの基本となる重要な理論であるにもかかわらず、これもまた日本の株式投資では殆ど語られることがない理論であって、これもまたそれだけ見えざる検閲制度の強度を物語るものであるが、ここではそのトレンドの定義について述べるに止める。

普通、ダウ理論の6つ目の原則「トレンドは明確な転換シグナルが出るまで継続する」の説明としては、このようなトレンドの定義がなされている。

安値を切り上げ、高値を更新→上昇トレンドが継続。

高値を切り下げ、安値を更新→下降トレンドが継続。

つまり、高値安値の四点セットでトレンドが判断できるという実に明解な定義になっている訳である。



「なんだ、あたりまえじゃないか」と思う人がいるかも知れないが、それはこのように厳密に定義をして置いてから、それを基に分析をしていくというやり方に馴れていないからである。と言うよりも、こうした定義を基に厳格に論理を組み上げていくといった考え方は、そもそも我々日本人にはないもので、それが見えざる検閲制度の根幹にある思想であるが、それがまたダウ理論の奥深さがなかなか判らない理由でもある。まあ、これまで何遍も述べて来たように、我々の普段使っている「高値」「安値」という言葉の融通無碍さ、実にいい加減さを考えてみれば、この事は良く判るだろう。

ともあれ、ここでいう「明確な転換シグナル」とは、例えばアップトレンドでは「押し安値」を下へ、ダウントレンドでは「戻り高値」を上へ抜けることを意味する訳であるが、そう言われてこの意味がすぐに分かるだろうか。

これはどういうことかというと、アップトレンドの場合、高値を切り上げても安値を切り上げなかったら、その時点でトレンドは終了したという事である。逆に、ダウントレンドの場合、安値を切り下げても高値を切り下げなかったら、その時点でトレンドは終了したという事である。

かようにダウ理論と言うのは、応用を含めて考えると、実に明快且つ奥深い重要な基本的原理論であって、ぜひマスターしておく必要があるので、一度詳しく調べてみる事をお勧めする次第である。

ここで、先の日経225の月足チャートをもう一度見てもらいたいが、現在の時点ではかなり戻していて一部では楽観論がみられるが、ダウ理論では高値安値を切り下げていて、「明確な転換シグナル」は出ていないので、未だダウントレンド中である。つまり、直近では丸印の高値を超えて現在のダウントレンドが否定されるのかどうかに注目する必要があるという事である。



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