ものぐさ屁理屈研究室

誰も私に問わなければ、
私はそれを知っている。
誰か問う者に説明しようとすれば、
私はそれを知ってはいない。

ぬるま湯でないときの「感じ」

2024-04-21 14:00:00 | 相場は相場に聞け!
今のこの時点で、読み返していた林輝太郎氏の著作の中から、「売り名人」の相場師の言葉を、引いて見るのも良いだろう。こういう経験値が凝縮された、筋金入りの言葉というものは、やはりある程度場数を踏まないと、その深さというものが、なかなか理解できないものである。

上げ相場というのはとても怖いのです。いつ崩れるかもしれないからです。・・・それまではだんだんと燃えてくるので、その段階はあんまり気苦労はありません。
その「気苦労のないとき」はもちろん楽に乗れるかわりに、取れる幅はたかが知れていますよ。こんなときは、動きもゆるやか、ぬるま湯みたいで、ためし玉を入れてみたってふにゃふにゃして、感じという感じはありませんや。でも、そんな「感じ」を持った経験があると、ぬるま湯でないときの「感じ」が判ってくるわけですよね。
>(『脱アマ相場師列伝』

今にして考えれば、日経平均3万8865円正確に間違えるよりも、大まかに正しくありたいという文章を書いた時、私の一番の根底にあったのが、年末から歳が明けて以降の相場に体感していた、この<ぬるま湯でないときの「感じ」>であった。ここで胸に手を当てて、思い起こしてみて頂きたいが、年末から年明けの天井を付けるまでの相場の動きは、明らかに異常な相場付であったのが判るだろう。

なお、誤解のないように釘をさしておくと、この<ぬるま湯でないときの「感じ」>というのは、相場にシンクロした「変動感覚」の「感じ」であって、SNSで垂れ流されているような陶酔や動揺、FOMO(fear of missing out、フォーモ、取り残されることへの恐れ)による焦りなどといった投資家心理の「感じ」とは、全く範疇の違う別ものの感覚のことである。

というのは、一部では「恐怖で買って、強欲で売れ」というように、VIX指数や、Fear & Greed indexを根拠に売買を行う、といった投資法を唱導する人もいるが、こういった考え方に対しては、私は否定的だからである。というのは、VIX指数や、Fear & Greed indexを介して市場を理解するのは、間接的な迂回した方法だからである。言い換えれば、<ぬるま湯でないときの「感じ」>というのは、迂回しない直接法による相場の絶対的な認識であるということである。

この意味で、リバモアが、マーケットの需給を動かしているのは<人間の情緒であり情動>と言う一方で、<株価を動かす要因が何か、多大の時間をかけて答えを見つけようとするのは愚かである。><株価が変動する姿にのみ意識を集中させよ。変動の理由に気をとられてはならない。>と言っていることは見逃してはならない。

繰り返しになるが、これは、人間の情緒や情動を最も明確に表しているのがマーケットそのもの、すなわち株価の動きであって、そこに因果関係や相関関係的ロジックを持ち込んではならないと、リバモアは言っている訳である。

例えば、今回の暴落については、原因として事後的に地政学的リスクだとか、FOMCの利下げ後退観測だとかが、一般に後講釈で言われているが、これらなぞはその最たるもので、実践の上では全く使えない理屈であることは、今回、前もってこれらの原因から暴落という結果を予想、或いはそのリスクを指摘した人が殆どいなかった事実が良く表していよう。改めてリバモアの<株価を動かす要因が何か、多大の時間をかけて答えを見つけようとするのは愚かである。変動の理由に気をとられてはならない。>という洞察の深さが判ろうというものである。

いや、くどくどしい文書になってしまったが、従って、百年近くも前の<株価が変動する姿にのみ意識を集中させよ>というリバモアの指針が、今回の暴落でも実践上最も有効な方法論であったことが、またもや証明されることになったと個人的には考えている次第であるが、今一度この点について、よくよく考えてみて頂きたいと思う次第である。


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2024-04-15 22:00:00 | 相場は相場に聞け!
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それにしても、投資文化の違いからか、日本ではこういった Model Book などのケース・スタディを研究・検討するという事例がほとんど見られないのは、色々と考えさせられるところではある。