ⅩⅨ 275-276
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それぞれの有機体は柔軟制御の階層的体系---雲によって制御された雲の体系---とみなせる。制御された下位体系は制御する体系によって部分的に抑止され、部分的に制止される試行錯誤運動をする。
われわれはすでにこの実例を、言語の低次機能と高次機能とのあいだの関係において見た。
低次機能は存在し続け、その役割を演じ続ける。しかしそれらの機能は、より高次の機能によって拘束され、制御される。
別の特徴的な例は、次のようなものである。もし私が少しも動かずじっと静かに立っているとしても、(生理学者によると)私の筋肉はほとんどランダムな仕方で収縮し弛緩しながら絶えず働いており(前節のテーゼ(8)におけるTS1からTSnまでを参照)、しかも私が気づくことなく、私の姿勢からのきわめてわづかな偏奇をほとんどただちに正すために誤り排除(EE)によって制御されている。
それゆえ、自動操舵矯正器が航空機にその進路をしっかり保たせるのと多かれ少なかれ同じ方法で、私は静かに立ち続けているのである。
この実例はまた、前節のテーゼ(1)---それぞれの有機体は試行錯誤によって絶えず問題解決にたずさわっており、新旧の諸問題に多少とも偶然的な、または雲様な、(不成功であれば排除される)試行によって反応している、というテーゼ---を例証する。
55)試行と誤り排除の方法は(しばしばいわれてきたような)完全に偶然的またはランダムな試行でもやっていくものではない。たとえ試行がかなりランダムであるように見えるとしても、である。そこには(私の「科学的発見の論理」の162頁〔訳書202頁〕以下での意味における)〔ある選択が次の選択に影響を及ぼすという〕「余效」(after-effect)が少なくともあるはずである。それというのも、不断にみずからの誤りから学んでいるからである。つまり、それはある可能な試行(それはおそらく有機体の進化的過去における現実的試行であったろう)を抑止しまたは排除し、あるいは少なくとも頻度を減少させる制御を確立するからである。
(もし成功的であれば、そのようにして達成された解決を「模試」する変異の残存する確率は高まり、その解決を新しい有機体の空間的構造または形態に取り込むことによって、それを遺伝的なものにさせていく)。
56)これは現在ではしばしば「ボールドウィン効果」と呼ばれる。たとえばG.G.Simpson、‘The Baldwin Effect、’Evolution、7、1953、pp.110ff.、C.H.Waddington、the same volume、pp.118f.(especially p.124)、and pp.386f.を参照。またJ.Mark Baldwin、Development and Evolution、1902、pp.174ff.and H.S.Jennings、The Behaviour of the Lower Qrganismus、1906、pp.321ff、をも見られたい。
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それぞれの有機体は柔軟制御の階層的体系---雲によって制御された雲の体系---とみなせる。制御された下位体系は制御する体系によって部分的に抑止され、部分的に制止される試行錯誤運動をする。
われわれはすでにこの実例を、言語の低次機能と高次機能とのあいだの関係において見た。
低次機能は存在し続け、その役割を演じ続ける。しかしそれらの機能は、より高次の機能によって拘束され、制御される。
別の特徴的な例は、次のようなものである。もし私が少しも動かずじっと静かに立っているとしても、(生理学者によると)私の筋肉はほとんどランダムな仕方で収縮し弛緩しながら絶えず働いており(前節のテーゼ(8)におけるTS1からTSnまでを参照)、しかも私が気づくことなく、私の姿勢からのきわめてわづかな偏奇をほとんどただちに正すために誤り排除(EE)によって制御されている。
それゆえ、自動操舵矯正器が航空機にその進路をしっかり保たせるのと多かれ少なかれ同じ方法で、私は静かに立ち続けているのである。
この実例はまた、前節のテーゼ(1)---それぞれの有機体は試行錯誤によって絶えず問題解決にたずさわっており、新旧の諸問題に多少とも偶然的な、または雲様な、(不成功であれば排除される)試行によって反応している、というテーゼ---を例証する。
55)試行と誤り排除の方法は(しばしばいわれてきたような)完全に偶然的またはランダムな試行でもやっていくものではない。たとえ試行がかなりランダムであるように見えるとしても、である。そこには(私の「科学的発見の論理」の162頁〔訳書202頁〕以下での意味における)〔ある選択が次の選択に影響を及ぼすという〕「余效」(after-effect)が少なくともあるはずである。それというのも、不断にみずからの誤りから学んでいるからである。つまり、それはある可能な試行(それはおそらく有機体の進化的過去における現実的試行であったろう)を抑止しまたは排除し、あるいは少なくとも頻度を減少させる制御を確立するからである。
(もし成功的であれば、そのようにして達成された解決を「模試」する変異の残存する確率は高まり、その解決を新しい有機体の空間的構造または形態に取り込むことによって、それを遺伝的なものにさせていく)。
56)これは現在ではしばしば「ボールドウィン効果」と呼ばれる。たとえばG.G.Simpson、‘The Baldwin Effect、’Evolution、7、1953、pp.110ff.、C.H.Waddington、the same volume、pp.118f.(especially p.124)、and pp.386f.を参照。またJ.Mark Baldwin、Development and Evolution、1902、pp.174ff.and H.S.Jennings、The Behaviour of the Lower Qrganismus、1906、pp.321ff、をも見られたい。